関わり⑦
昼休みー
2人は1年生の棟に行き梢葉のクラスを覗き見た。
「いたいた。あれ?席で音楽聞いてるー」
梢葉は1人ポツンと窓側の席でイヤホンで音楽を聞きながら外を見ている。
「ふがふがふがふがぷー」
「み、美生さん。パン飲み込まないと何言ってるかわからないよ」
「ごくん!し、失礼!昼ごはん食べないですかねー?見て時間割!次の時間体育ですよー。そういやシネさんも食べないですかー?」
「私は昼ごはん食べると眠くなるから、カロリーブロックだけでいいの」
「意外とマジメさんですねー!授業寝ないようにしてるですかー」
「意外って…!私の事はいいから、月森さんに声かけないとね」
梢葉以外の生徒達はそれぞれグループでわきあいあいと弁当を食べている
「な、なんか空気的に話しかけづらい!イヤホンしてるし」
「何でー??行ったったらいいですよ!」
そう言うと美生はづかづかと教室に入っていった。
「あ、美生チャン先輩!こんにちはー」
「またホームパーティー呼んで下さいねー!」
クラス中の1年生が美生に声をかける。美生は気前良く返事をしている。
「すごい人気者。たしかにわかるわー裏表なさそーだし。私も見習わないとー」
志那が感心してるうちに美生は梢葉の前に立った。
「ん…」
梢葉は気付いた。が、イヤホンは取ろうとしない。
「月森さんですねー!この度戦友になりかけてる高須賀•ハート•美生ですよー」
梢葉は冷ややかな目で美生を見ている。やがてまた視線を窓の外へ向けた。
「おや?目が悪いのですかー?もしもーし!」
美生は梢葉の机をコンコン叩きだした。さすがに梢葉はイヤホンを取った。
「何?」
すごいつっけんどんな感じの対応だ。
「ワオ!月森さんはご飯食べないですかー??」
「その前にあんた誰?」
「あなたの戦友の高須賀…」
「あ、いいよ言わなくて。興味ないし。で、何?」
「ありゃーけっこう強敵ですぞあれ」
志那はまだ教室のドアの外で待機している。気付くと他の生徒達もざわめいているようだ。
「前の社会科教室の事で来ましたー!なぜあれ以来話も聞こうとしないですか?」
梢葉はふう、と溜息をつく。
「あーそういえばあんたあの時居たね。先輩だっけ。言っとくけど私先輩だからって1年年が違うくらいで何でも敬語使わないから」
梢葉は挑戦的な態度をとった。しかし美生はあっけらかんとしている。
「その方が仲良くなれます!オッケですよ!」
「なんで先輩の方が敬語??おかしいっつの」
志那は小さくつぶやいた。まだ教室のドアの外にいるままだ。
「まあ、私も電話で先生と話しましたがー、意味よくわかってないのです!あっ!月森さんは昼ごはん食べないですか?」
「ちょっといきなり現れて何?昼ごはん!?
何でそんなのあんたに話さないといけないの?」
「私もご飯途中なのです!ほら!」
美生はそう言うとどこにしまってたのか菓子パンが次々と制服から出てくる。
「よかったらあげます!」
机の上で内半分を梢葉の方へ寄せた。
「…いい。てかアンタうざい」
「あら!ダイエット中ですかー?しなくてもいいと思いましたが」
「違う!あぁもう疲れるなー。あっち行ってよ!もう!」
梢葉は少しイライラしている。しかし美生はおかまいなしだ。
「ふがふが…」
「ふがふがふが…」
またパンたべながら話してるーと志那は思った。そこへ昼休み終了のチャイムが鳴った。
「ごくん!じゃまた明日来ますね!バイっ!」
「はぁ?明日ってなによ!ちょっとっ!」
驚いている梢葉を尻目に美生は志那の所へ戻ってきた。
「じゃあ、授業もあるんで私達も、戻りましょー!あっ、後でシネさんのメアドとか番号とか教えて下さいね!」
「う、うん。てか私何もしなかったなー。さっきあの子にパン食べながら何言ったの?」
「ああ失礼っ!ウフフっあれはね、私はあなたの友達になりたいのです!と言いました」
「ふ、ふーん。でもあの子も絶対分かってないと思うけど…ま、なんかじーんとくるわ!」
後日ー
志那は同じ一年のりまからうわさを聞いた。梢葉という子はずっと一匹狼で誰とも仲良くしようとしないらしい。誰かと一緒にいるのを見た事がないと言われている。しかし最近美生が昼休みの度に教室に来ては一緒にご飯を食べてるのでそれが話題になってるとの事だった。鉄の女もついに…という状況らしい。さらにしばらく経って美生からメールが届いた。
「月森さん、話し聞いてくれました!ハッピー!次の集まりは来てくれるそうです!でも実はパンよりご飯派らしいです!ショック!」
志那はそのメールを見てほくそ笑んだ。
「ま、私の采配が正しかったって事ね!」
志那は足取りも軽く、メールを返信しだした。