旅、出発。
テスト中なので更新が………。
もしよかったら評価、感想などお願いします。
我が家は背の高い草が生い茂る草原に建っている。
といっても、それは俺が人のころだったらの話。
現在、五歳となった俺は晴れて親付きでの外出が出来るようになった。
そしてそこで見たモノは、自らの体と比べて余りに縮尺の狂った世界。
草のくせにもはや木。
前世ではお目にかかれない光景に思わずポーッとなってしまった。
「あ、あの……母さん」
「なあに、ニコライ?」
「あの大きいのは、なあに?」
そう言って指さしたのは前世ではふつう程度の大きさの木。
つまり、馬鹿でかい木だ。
「あぁ、あれはねニコライ。大樹よ。人族とか他の亜人族は木って読んでるんだけど、私たちの大きさではねぇ」
それはそうだろう。スケールが本当に違いすぎる。
そしてしばらくすると母さんが、
「あ、もう家に戻りましょう。ここは必ずしも安全な訳では無いからね」
「はーい………」
久しぶりの外だったし、もう少しここでボーッとしていたかったが“安全じゃない”と言うとは…………もしかして指人族って弱小種族なのか?
いや、間違いなくそうなのだろう。
この小ささははっきり言って異常だ。
さすがファンタジーだぜ。
家に入るためのドアを開けたところで、母さんが言う。
「あ、明日からニコライ。旅行に行くわよ」
「えっ?」
こうして、俺と母さんは旅行に行くこととなった。
父さんは今だに仕事で帰ってこないらしい。
◆◆◆◆◆
「ニコライ、準備できたー?」
「うん、大丈夫だよ母さん。水も持ったし、食べ物もあるよ!」
翌朝、まだ日が昇る前から準備を始める。
旅行の目的地はかなり遠いらしく、二日程かけて行くそうだ。
「じゃ、シム車にのって行くわよ」
「?シム車?」
「あ、ニコライはまだ見たこと無かったかしら。……………丁度いいわ、ついてきて」
あ、と口に手を当てる母さん。
専門用語を使われても俺にはまだ分からないよ。
案内されたのは、昨日は見なかった家の反対側。
そこには、馬小屋っぽい大きな小屋のような物と、その中でムシャムシャと葉っぱをかじるダンゴムシ。
ん……………?
「母さん……………コレ、なあに?」
「シムゴンダよ。私たち指人族にとっては家族みたいなものよ。遠出をするときは大体この子に乗っていくわ。」
巨大ダンゴムシの名前はシムゴンダと言うらしい。
逆から読んだだけじゃねーか。
「まぁしかし、意外と乗り心地がいいなぁ」
そう、このダンゴムシ車は意外と乗り心地がいい。
なんというか、ダンゴムシの殻が柔らかいのだ。
ちなみに、ダンゴムシ車はダンゴムシの上に雨避けと背もたれがくっつけられている。
「ねぇ母さん、今日どこに行くの?」
気になっていたことを聞いてみる。
わざわざ危険なことをする理由も知りたいし。
「ニコライも五歳になったからね。オババの所に占いに行くのよ。あなたの魔法適正とスキルを調べるためにね」
「スキルってなに?魔法適正って!?」
思わず聞き返してしまった。
スキルに、魔法だと!!?
なんて素晴らしい響き!
「ん、スキルって言うのはねぇ。本人の持つ技術をわかりやすい形で示したものよ。固有スキルって呼ばれる特殊なスキルも存在するのよ。まあ、持っているのは一部の限られた者だけなんだけどね。
で、魔法は簡単に言うと、世界の理をねじ曲げる技術のことよ。コレは難しい話だから大体こんなモノ、と言う理解でいいわ」
「へ、へえ~~~」
難しい話だった。五歳児には。
だかしかし、俺は五歳児にして五歳児にあらず!
今めっちゃ興奮してます。気を抜いたら踊り出してしまいそうです。ひゃっはーーーーーーー!!!!
「じゃ、ゴーグルをしっかりつけてね。」
「へ、う、うん。」
ゴーグルを目まで下げる。
ダンゴムシもどきに乗るのに何故こんな物をつけるのかさっぱり分からないが、そういう仕様なのだろうと諦めている。
「つけたよー」
「よーし、じゃあ振り落とされないようにしっかり掴まってるんだよ?」
( え“? )
次の瞬間、ダンゴムシもどきはもの凄い加速でギュンギュン進んでいく。
「え“え“え“えぇぇ!!!!」
ぎりぎりで母さんの腰にしがみつくことが出来た。
羞恥心なんて知るか!
なんでダンゴムシがこんなに速いんだよ、と世の理不尽に少し腹が立った。
こんな旅の始まりで大丈夫か?
いやマジで。