paint4 薔薇色な脳内
2ヵ月くらい空きました、すんません!
スランプのなか、毎日ちょくちょく書いてたので文に変なところがあるかもしれません。
改めてお詫び申し上げます……orz
「いやー、久しぶりだな美咲!いきなり空手はしばらく休むなんて言い出すからビックリしちゃったよ~アッハッハ!」
美咲の肩に腕をまわし、どこぞの海賊よろしく高らかに笑う吉谷先輩。あまりの豪快な笑いっぷりに、自分も思わず口元が緩んでしまう。そんな先輩の中。とうの美咲には、どこか苛立ちの顔が見えた。
「ん?どうしたんだ美咲?」
「………………」
美咲は悔しそうな表情を浮かべ、そのまま吉谷先輩の方を見つめていた。先輩の方が頭1つ分くらい高いので、美咲の目線の先にあるのは先輩の豊かなグラビアカップ………なるほど。
「お前、もしかして胸が……」
「黙れゴミムシ!」
その刹那、俺の顔の横2センチの宙を鋭い何かが切り裂いた。一瞬遅れてゴスッと、何かが壁に刺さる音。あまりの速さに、その刺さっている物が彫刻刀であることに気付いたのはそれから4秒ほど遅れてからのことだった。
そして開口一番。
俺の口から出た言葉は………
「すいませんでした!許してください!!」
謝罪の一言に限る。
だが、そんなもの、すぐに口から消えては見えなくなる言葉。
美咲が許すわけもなく………
「やーだ♪死ネ!!」
「デスヨネー!」
俺はしばらく、暴力という名の忘却の世界へと旅だった。
* * *
「はいはいそこまで!!」
張った声の吉谷先輩が両手を何回か叩く。拍手の合図が俺にはなんなのかわからなかったが、その音を聞いた美咲は途端に体を硬直させ、俺を拘束から解いた。『助かった………』
「康也君。私が見るからに君は……美咲の玩具なのかい?」
「できればそうあってほしくないですけどね。あ~気持ち悪い……」
「美咲、ちょっと」
「は、はい!」
吉谷先輩に呼ばれた美咲は、とても強ばった表情で返事をしていた。まるで先輩を怖がっているようだ。
確かにいろんな意味で怖い人ではあるのだが……
「美咲、お前先輩が怖いのか?」
「そうか、貴様は知らないんだったな。谷ゴーさんは私より2段も上の黒帯だぞ」
「はぁぁ!?」
「あっはっは!!そんなに難しい物じゃないさ。ようは試験官を5~6人ほど吹っ飛ばすか、瓦とかベニヤ板を150ぐらい一発で割ればいいんだよ」
とんでもないことをサラッと言ってのける先輩。今、先輩の恐ろしい一面が見えた気がする。先程の柏手ひとつで美咲が硬直したわけも納得がいった。
「ところで谷ゴーさん、用事があるのでは?」
「おっとそうだった。実は康也君のことなんだが」
「あんな腐れドMがどうかしたんですか?」
「ひどい言われようだな………」
さすがにへこむぞ俺。
「お前の康也君、私にも貸してくれないか?」
「「お断りします」」
美咲と一緒に反射的に拒否ってしまった。美咲に続いて先輩もドSだったのか!?そうなったら俺はそこの窓から『飛び降りて死んでやる』
「ここは2階だから死ねないと思うぞ?」
「そうだった………」
「ところで何故にこのドMが欲しいんですか?」
そこは俺も気になるところだ。先程会ったばかりなのに俺に用とは、一体何があると言うのか………
「いやいや、痛めつけるとかじゃないよ。ちょっとテレビゲームの相手が欲しくてね」
「「なんだ、それならいいですよ」」
またまた美咲とハモってしまった。どうやら俺を傷つけていいのはあいつだけらしい。
「よし、それなら決まりだ。縦スクロールのシューティングゲームなんだがいけるか?」
「いいんですけど、テレビなんてどこにもないですよ?」
「大丈夫だ、問題ない」
そう言った先輩の右手にはリモコンが握られていた。
リモコンの中心の赤いボタンを押すと、何もなかった白い壁に四角い亀裂が入り、ホワイトボードをひっくり返すような要領で半回転した。
そこには「ZONY」製の最新薄型テレビが入っていた。すごく欲しい。
すでに電源は入っているようで、真っ黒な画面には達筆な白い字で『不炉滅天烏蘇』のタイトルと、『START』のコマンドだけが書かれている。
「じゃあやろうか。ゲームスタート!」
先輩のその声を合図に、俺は一人のパイロット(ゲーム内)となり、無限の宇宙空間へと飛び出していった。
* * *
5分後…………
「な、なんだこの詰みゲーは………」
なんかもうとにかくムズかった。
永遠に追い続けてくるホーミング弾とか、画面を反射して飛んでくる物理的におかしいビームとかがそこら中に張り巡らされていて、あげくの果てには画面の3分の2を覆う程の太すぎるレーザーなどが乱発されるので避けようがない。俺の戦闘機は3機ともあえなく撃沈した。
当の吉谷先輩の戦闘機は、神みたいな動きで見事にステージ1はクリアした。なんだあの捻れて歪むような動きは。
だがそんな先輩も、ステージ2であと一歩のところで墜落してしまった。
「あちゃ~、あそこいつも駄目なんだよなぁ……」
「ていうかあんな動きどうやったらできるんですか?」
「あぁ、教えていなかったな。あれは『封速緊急飛翔』といってな、○ボタンと△ボタンとR2ボタンを同時に押しながら、回避したい方向に左スティックを一回転させるんだよ。機体が回転している間は敵の弾は当たらないし、その間にリロードも出来る」
「何言ってんですか!?相当のゲーマーですね!!」
これじゃまるで廃人じゃないか。
「フッ、近所では『廃人姉さん』と呼ばれたこの私にかかれば大抵のゲームはコンプできるさ!!」
「名前そのまんまだった!!」
やっぱり廃人でしたか。
「さてと!!一通りゲームも終えたところで、本題に入ろうか。私はこれでも美術部員だしな」
その事実は初耳だ。
こんな廃人が『まともに絵を描けるのだろうか…?』
「康也、それは違う。美術とは何も絵画ばかりではないだろう?」
「なるほど、造形の方でしたか。納得」
「じゃあ美咲、話を………」
「待ってください」
先輩の言葉を美咲が遮った。相変わらず容赦のない奴………と思っていたが。
その時確かに聞こえた、「異音」。
異音は絵画室の右奥、絵画準備室の方からした。
ガサガサ、ギュィーーン!!ビガガ、と何かをいじくるような音が微かに俺の耳に届く。『一体何の音だろうか』。
「あぁ、この音か。奥でちょっと連れがね、おーい椿!!出てこい!!」
「ぇえ!?とあっちょっと待ってィアーーー!!」
「うわっ!!」
いきなりで驚いたのだろう、その少女は勢いよくこっちへ走って来て、石灰像にすねをぶつけて盛大にスッ転んだ。ひっくり返ってスカートがめくれ、『白いパンツが丸見えだ……』
「死ね!!」
「ウギャッ!!」
美咲から鳩尾にエルボーを食らう。早くこの癖を直さないと本当に命が危険かもしれない。
「あだだだ……何だよ谷ヤン?」
「椿、そこの二人に自己紹介しなさい」
「え?あ、うん。はじめまして、蒼樹椿です。2年生です」
その椿と呼ばれていた少女は、
地面に座り込みながらも頭を下げた。
ロングの蒼髪は肩付近で2つのおさげにしており、前髪はカチューシャでまとめている。細いフレームの眼鏡をしており、どこか知的な印象を与えた。
片手に十徳ナイフらしきものを持っているのが気になるが。
「ちなみにこいつも美術部員だぞ」
と谷ゴー先輩。
「え!?すいません、上から見下ろして」
「あ、大丈夫だよ。よいしょ!」
と言い椿先輩は立ち上がったが、俺の肩くらいしかない。やっぱり見下ろす形になってしまった。
だが先輩はそんなこと気にせず、俺と美咲の顔を交互に見つめると、
「……主従関係?」
「ちょっと違うけどだいたい合ってる!?」
へんなとこを見破られてしまった。
これには美咲も驚いていたが、すぐ我にかえり口を開く。
「ちょうどいいです。美術部員はあと何人ですか?」
「これでおしまいですよ」
「!?」
「あぁ、みんなあの看板ぶっ壊されたことでショック受けちゃったらしくてね、みんな辞めてった」
今サラッと先輩はすごい事を言った気がする。
「そうでしたか。実はその事でお話があって今日はここに集まってもらったのです」
次の更新はいつになるやら……
っ、なるべく早く投稿できるように頑張ります!