第1章 サバスの村編 ダイジェストと登場人物まとめ
第1章の大まかなあらすじです。全て読むのが面倒な方は、これだけ読んでも何とか話の流れは分かると思います(笑)
■あらすじ
まじない師たちが暮らすサバスの村。しかし、少年ヨルバはまじない師としての力を生まれつき全く持っていないことで、精霊から「祝福されなかった子」として村八分にされていた。転機が訪れたのは、13歳の春。力の大小をはかることができる黒の絵本をひらいたことで、ヨルバはまじない師として最高のサバシス見習いになれる権利を突然与えられた。
兄のシラクサや養い親の娘コニはそのことにとても喜んでくれたが、変わり者の友人である老婆ミシェバトはヨルバがサバシスになることに反対した。彼女はヨルバと同じく、力を全く持たない祝福されなかった人である。ヨルバは自分もそのことで孤独だったので、彼女の複雑な心境には共感できるものの、外に出て自由を手に入れたいと強く望む。
少年カジャは、先輩である見習いサバシスで幼いころからまじない師の才能を見いだされた秀才である。彼に色々な術を教わるヨルバだが、どうも馬が合わず衝突ばかり。ついには、村と街との境界に結界をはる仕事を自分ひとりでもできる、と意地から請け負ってしまう。
しかし、ヨルバの些細なミスから結界を越えて一人の少女ペコーラが森へと迷い込んできてしまう。街人は普段、サバスを恐れて向こうからは村に来ないのだが、彼女は一時的に街に滞在しているだけだったのでそのことは知らなかったようだ。口の悪い少女に辟易しながらも、ヨルバは老婆の家へと彼女を連れて行き、そこでしばらくかくまうことにした。
数日後、カジャの正式なサバシス入りを祝う儀式が執り行われた。この儀式の夜に、彼は森(村)から街へと抜ける呪印を新たに教わり、しばらくは街で暮らすようになるのだ。森に行く途中で、仮面をつけた見知らぬ男に襲われるヨルバとペコーラ。その甘い匂いに誘われてヨルバは肉体を抜け出し、夢中で男の魂を齧ろうとした。男が倒れた隙に、ペコーラを連れて逃げる。ご神木には、ちょうどカジャがいた。ヨルバは、今後、彼を敬いカジャ様と呼ぶことを引き換えに、内密でペコーラを街へと連れて帰って欲しいと頼むことを決意した。
一年後、無事に正式なサバシスになることが決まったヨルバ。カゴから解き放たれた鳥のように、街に思いを寄せた。
■登場人物
ヨルバ……主人公の13歳の少年。オリーブ色の髪と目。生まれたときからまじない師の力がなく、周りからは「祝福されなかった子」として避けられていた。そのため、どんどん内気でネガティブになり、誰も来ないご神木で過ごすことが多くなる。母はヨルバは生まれたときに、村から出て行った。現在は、養父のポーカス家の敷地内になる離れで、兄のシラクサと暮らす。変わり者の隠者ミシェバトにはなついている。性格はかなり暗い。そのくせ、負けず嫌いで無鉄砲。余裕がなくて切羽詰まっている。今まで自分を認めてくれる人が皆無(特に上から)だったので、そのことに強いコンプレックスを持っている。そのため、幼いころからまじない師としての才能を認められていたカジャには、尊敬と嫉妬と競争心と認められたいという本人にもよくわからない感情を抱いている。(兄のシラクサに対しても)
ペコーラ……12歳の少女。黒檀の髪と丸い目。小動物のように機敏な動き。背が低いことをひそかに気にしている。遠い街で祖母と暮らしていたが、彼女が亡くなったことで一時的にラカッシュの街に滞在していた。(親戚の家に泊まっていた)まじない師たちが住むサバスの村の噂をきき、森に迷い込んできた。性格は、好奇心旺盛で、しかも後先を考えない。女の子なのに口がとことん悪い。しかし、先入観で物事を判断しない素直な面も持っている。
カジャ……14歳の少年。赤みがかった栗色の髪。背は高い。幼いころからまじない師としての力を認められ、長い間見習いとして修行してきた。村でも有名。周りからも期待されている。自分の力を信じてやまない(周りの影響もかなりあるが)。突然現れたサバシス後輩のヨルバに対しては、はっきりとした敵意を向けている。
シラクサ……ヨルバの兄17歳。生真面目で苦労人。弟のヨルバとは違い、力があるので薬草師として修行している。
ミシェバト……ヨルバの友人(?)である変わり者の老婆。神木近くの森に隠居している。人間には厳しいが、森野動物には好かれている。ヨルバと同じく力を全く持たない「祝福されなかった人」だが、物知りで薬草にも詳しい。この年になって素直になれないのもどうかと思うが、ヨルバのことは本気で心配している。彼がサバシスになるのには反対している。
ポーカス……シラクサとヨルバ兄弟の養父であり、村をまとめる交渉人の長でもある。45歳。老木のように厳しい人。コニというヨルバと同い年の実の娘がいる。
ヘミンキ……交渉人のひとり。温和な22歳の青年。彼の家は代々交渉人を務めてきた。いずれは、ポーカスの次に長になるだろうとされている。