第四十話〝満月〟
能力は〝月〟... ――つまり満月...
06月05日
AM 07:26
今日も始まりの朝を知らせてくれる時計のアラームが鳴り響く。
俺は時計のアラームを止めようとし、手を伸ばす...
が、突如時計のアラームが鳴り止み、次に聞こえてくるのは...
「おはよ♪ 悠くん。 昨日はよく眠れたかな?」
そう俺の中でのMY ANGEL... つまり奏空のモーニングコールである。
そして、俺は例のアレを楽しむ。
「ほらー、早く起きなさーいっ」
奏空は優しく俺に声をかけながら、布団を引っ張る。
俺はそれに対して布団から出ない作戦。
そして、例の柔らかいアレが、俺を快楽へと導く。
…と、思ったら俺の隣にも柔らかい物が...!?
これは、いかん。 そう考え、俺は起きない作戦へと移行した。
その直後、布団がどかされた。
そして、次に聞こえてくるのは嫁... いや、あの子の声だ。
「ふあー。 あら、お早う御座います、奏空さん。 …そして、あ・な・た❤」
「――!?」
――やっぱりいいいいいいいい。
俺は布団をどかされても起きないと言う作戦である為、まだ寝てるふりをする。
だが、この場にはまたも昨日の様な雰囲気が漂う。
起きなきゃ、何か違うことが絶対に起きる!!
俺はそう信じて... ――寝てるふりを続行!
…と、その瞬間。
「楓ちゃん…? どーして、貴女は悠くんのベッドの中で寝てるのかな!?」
「別にいいじゃありませんか。 私の元、旦那様ですから。ね、貴方様?」
楓は俺に話しかけるが、俺は寝てるふり。それを見かねた楓は次の行動へと。
「もぉ、まだ寝てらっしゃるのかしら? 貴方様ーっ」
そう言い、抱きついてくる。
もぉ、朝から柔らかい物が当たりっぱなしだってばっ!
「こらー! 楓ちゃん、ダメっ!」
奏空はベッドの上で楓の手を掴み、俺から引き離そうとしている。
だが、楓は抵抗している。 ちょ、離れろうっ!
そんな勢いで俺のベッドの上で暴れたら!?
と、そんな時に奏空が俺の腕を踏み、バランスを崩し...
ドンガラガッシャーン!!
まぁ、お決まりのサービスカットーッ!! が、此処に入る予定で。
そんな感じで俺が下敷きとなって3人はベッドの下に落ちた。
「奏空... 楓?」
俺も頭を踏まれたり、色んな所が痛かったり、俺は奏空と楓にちょっと説教をする。
「朝からなんでこーなるのー!?」
と、言うことで俺の朝は騒がしく... また、少しいい感じ?に始まる…。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
AM 08:43
場所は学校。 今は朝のSHRの時間である。
昇さんは出席など、色々となことを終えていた。
そして、あのことを言う時が来た...
「今日からこのクラスにまた転校生を紹介する。」
「「「!?」」」」
3人を除く、クラスの生徒はその事に対して驚きを感じている。
転校生多いなあ... …この学校。
「じゃ、入って来い。」
月ノ宮 楓は落ち着いて教室に姿を現した。
「え、可愛いんだけど!」
「待てよ待てよ... このクラスに美少女3人目だぜ!?」
「うおー!? 名前なんて言うんだ!?」
と、男子の声が多い。 ちなみに俺は騒いでない。
だが、ヨウはワザとらしく叫んでいる。
「さ、名前を黒板に書いてくれ。」
「はいですわ。」
楓はすらすらーと綺麗な字で黒板に書き... 俺達の方にふり向く。
「月ノ宮 楓です。 以後、宜しくお願いしますわ。」
「「「おおおおおおお!!!」」」
これまたクラスの男子が騒ぎ始める。 …まぁ、そりゃそーだろうな。
「じゃ、お前の席は...」
と、昇さんが言い終えようとした時に。
「昇先生! 私、悠さんの隣がいいですわ!」
と、その発言後、クラスの男子の視線が俺に集まる。
ちなみに、光と奏空も俺に対して視線を送る。
俺は隣の席にさせまい! と、楓に言う。
「あ、いや! 楓さん! どーせなら、黒板に近い前の席にどーですか!?」
「え? さん付けなんてダメですわ!
私の事は、楓と呼んでくださいって、言ったじゃないですか!
そ・れ・に、私は貴方様のお隣がいいのでありますわっ」
「「「貴方様...ぁ!?」」」
クラスのほぼ全員が声を合わせる。
と、そこに纏める為に... 昇さんが声をかける。
「まあ... でも、学校生活は初めてみたいだし、悠の隣に行ってやれ。」
「ほ、本当なのでありますか!? 昇先生!?」
そう言い、楓は俺の所に走って来た。
「これで何時でも一緒なのでありますわね... あ・な・た❤」
「…な!?」
クラスの視線が... 視線がああああああああああああ!!!
「ちなみに悠。 お前も移動だ。」
「!?」
昇さんの発言が突発すぎる…。
「奏空の席と悠の席を反対にして... でその右隣は楓でいいだろ。」
簡単にまとめるとこうなる…。
☆ ◎ ★
☆=奏空、◎=悠、★=楓 と、なり...
奏空が窓側の席である。
…こうして、急遽俺の右隣りの席に座った。
そして、元々俺の右隣りにいた君の有志を忘れないっ!!
と、言うより... そのままでよかったんだよおおおおおおおお!!
「あ、悠さん? どーかなさいましたか?」
「…いや、なんでもありません。」
俺は涙声で話す。
こうして、昇さんの陰謀とともに朝のSHRが終わった。
そして、気づく...
俺の席と左隣りの奏空の席は少し近いのは普通なのだけれども...
俺の席と右隣の楓の席は見事に合体している。 …え、どう言うことなの!?
傍から見れば、ラブラブカップル席にしか見えない。
こ、これも昇さんの陰謀と言うことなのか...ッ!? …と、楓が話しかけてくる。
「ねぇ、悠さんっ」
「…ん?」
「私達って、やっぱり運命の夫婦なのかしら?」
その言葉と同時に奏空と光の目が少し光る。
いや、怖いから!
「だから、これからも宜しくですわっ あ・な・た❤」
だから、俺はあ・な・たじゃないからね!?
そんな勢いで、朝から疲れる展開となってしまった俺であった。
AM 09:18
一時間目の授業中である。
俺は右隣の席に居る楓が、席をくっつけているままなので注意していた。
「楓... ほらさ、席離さないか? 授業中だしさ、そろそろ離してもいいか?」
「嫌ですわっ!」
と、椅子も俺に近づいてきた。 もはや、小学生並の近さだこりゃ。
AM 10:28
二時間目の授業である。
俺は右隣の席に居る楓が、席をくっつけて…(以下略)
「楓... そろそろこの距離、二時間目から卒業しないか?」
「嫌ですわっ」
だが、動かない楓。
AM 11:38
三時間目の授業である。
俺は右隣の席居る楓が、席を…(以下略)
「楓... も、もういいよな!? な!?」
「嫌ですわっ」
だが、(以下略)
AM 11:53
昼間休憩となり、生徒達は一時的に解放された感じとなっている。
だが、俺は右隣の楓から解放されない。
「貴方様っ」
「…もー。」
先程授業が終わった瞬間に抱きついて来たので解放されずにいる。
実際には嬉しいんだけど、こーいうみんなが居る場所でされるのもなあ。
まあ、楓の愛ってヤツは嬉しいんだけど…。
そこを見計らって奏空が突撃してきた。
「わあああああ!!」
「「!?」」
俺と楓が腕を組んでいる所に勢いよく突撃し、
俺は左側に飛ばされ、楓は右側に飛ばされ、腕組み状態から解放された。
「ちょっと、どういうことなのですか!?」
「ごめんね! ワザとじゃないから!」
周りから見ればワザとであるが、俺としては嬉しすぎるのである。
と、楓の反論が始まる。
「ちょっと、貴女は何がしたいのですか!?」
「それはこっちの台詞! 悠くんが嫌そうにしてるのが分からないの!?」
「…しょ、証拠はあるんですか!?」
「悠くんに実際に聞けば分かります!
私の言うこととか、楓ちゃんの言うことが正しいのかが! 悠くん、どっちなの!?」
まさか俺が、この問題の主犯だと言う流れになってしまった。
「もちろん、私ですわよね!? 貴方様?」
「いや、私だよね? 悠くん?」
「…。」
何も答えない。 と、言う回答が世の中には存在する。
俺はそうしてその場を過ごそうとする...
「…元々、貴女がこんなことを言い始めるから悪いのですわ!」
「…いいえ! 楓ちゃんが悠くんの邪魔をするからいけないの!」
再び二人は討論を始めてしまった。
まさか、何も答えない回答が正解になる時が来るとは... 予想出来なかった。
引き続き、二人の討論は激しさを増した。
「そもそも、もう楓ちゃんは悠くんのお嫁さんでもなんでもありません!」
「いいえ、私はあの方のお嫁さんですわ!」
楓が無理矢理質問を捻じ曲げた。
しかも、質問を返さず自分の意思のもと言っているだけである。
俺はそろそろ止めようと二人に口を挟もうとするのだが…。
「意味が分かりません! 楓ちゃんは悠くんのお嫁さんじゃないです!」
「いいえ、私がお嫁さんですわ!!」
「「…ッ!!!」」
先程と同じことを言い、その場の空気が一瞬固まった。
…その直後、二人の口からとんでもない言葉が出て来た。
「「――勝負よ!」」
勝負... え、まさか。
「「セフィラを使った真剣勝負っ!」」
二人の台詞が揃ってる。
「私が勝ったら、悠さんとの仲を邪魔しないでくださる!?」
「望むところですから! 私が勝ったら、夫婦とか関係なしにしてください!」
「えぇ、構いませんわ…。 負ける気がありませんもの!」
「こっちだって、負ける気がないからね…!」
こうして二人の討論は... セフィラを使った真剣勝負となってしまった。
二人の間では何かが吹っ切れて、セフィラのことを人に叫んでいる。
実際、セフィラがどうとかこうとかと、言う話は関係者以外話してはいけないのだが。
教室での騒ぎは人を呼び、野次馬達が教室を取り囲んでいたことに今気づく。
「グラウンドで勝負ですわ… 奏空さん!」
「えぇ、望むところです!! 楓ちゃん!」
俺は、何も出来ずその場を見過ごすことしか出来なかった…。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
PM 12:00
場所はグラウンド。
教室から討論が始まり、まさか勝負まで発展するとは思わなかった。
グラウンドには、奏空と楓が対立するように立っている。
その周りには俺、光、ヨウがいて、クラスの人達や野次馬が次々に集まっている。
普通、こう言う感じには教師の誰かが気づくはずなのだが、昇さんが多分止めているのだろう。
その為、グラウンドには生徒しかいない状況である。
生徒達が集まっているので、何も知らない生徒も次々に集まり始めている。
「さあ、奏空さん... 勝負ですわ…!」
「はい…!」
中心にいる二人はお互いにセフィラを取り出し、発動させようとしている。
俺は隣で見ている光とヨウに話しかけた。
「光、ヨウ... これはマジでヤバくないか?」
「…仕方ないよ、楓ちゃんが悪いと思う。」
「まぁ、楓ちゃんが悪いねえ…。」
「!?」
光とヨウは奏空側についている。
と、言うよりそろそろ止めないと本気で発動してしまう所であるが...
「さあ、行きますわよ…!」
「…!!」
奏空には金色のセフィラを、楓には桃色のセフィラを掲げている。
「ティファレエト... ――発動ッ!!」
「ゲットー... 発動ッ!!」
楓の桃色のセフィラは〝ゲットー〟である。二人のセフィラが発動する。
その直後、中心から金色と桃色の光が周りに放たれる。野次馬達はかなり驚いている。
「祭りか?」「いや、勝負だとよ?」
「でも、なんであんなに綺麗なんだ?」「知るかよ!」
と、言った声が聞こえる。
そうして、中心の二人は別々のオーラを纏いながら、お互い武器を構えている。
奏空の手には、黄金に輝く弓を構えている。
対して、楓の手には斧の様なチャクラムの様な武器を構えていた。
一瞬の静止後... 楓から攻撃を開始してきた…!!
「私の能力...〝月〟 ――つまり満月…! 私の月の能力を見せつけてあげますわ!」
楓がそう言い、奏空へ駆け出し、跳び上がる…!!
と、その直後、楓の手にある武器に桃色のオーラが注がれる。
この時の武器の大きさは約円盤投げで使用する時の円盤位の大きさだったのだが、
次の瞬間には手の武器が先程とは全く違う大きさになっており、
大きさは円盤を約100倍の大きさにし、宙でそれを奏空に向け、落ちてこようとしている。
まるで月が落ちてくるようにもみえる。
と、次の瞬間にはグラウンドに衝撃と震動が伝わってきた。
楓が武器と同時に一瞬で奏空に向け落ちて来た。
落ちた先には奏空がいるハズなのだが、落ちた衝撃で砂埃がたち、姿が見えない。
そんな中、楓が喋り始める。
「月が落ちてくるのよ... ――全てを壊しにね。」
その言葉にかなり疑問を抱いた俺だった…。
「これで分かった…? 月って恐ろしいものなのですわ。」
楓はその台詞を言った直後、武器の大きさを戻し、一旦最初場所に戻ろうとしていた。
その場はまだ砂埃が舞っていて、奏空の状況が分からない状態だった…。