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〝 夢 世 界 物 語 〟  作者: 神昴
〝双花編〟
34/44

第三四話〝慈悲〟

悔しさに... ――慈悲を

05月14日

PM 04:39

場所は屋上。

澪狗との戦いとなった悠と茜である。


「蒼雨 茜... まぁ、よくやってくれたっちゃ、よくやってくれたんだが...

  結局ふりだしに戻ったからどーでもいいよなぁ!?」

「…クッ...」


茜の胸に刺さった槍は消滅していくのだが...

茜のダメージは半端なく、命にかかわる重大なダメージとなってしまった。

茜はその場に蹲った状況で動こうとしない。


「茜さん!!」

「…。」


悠が呼びかけたのだが... 反応が薄れている。


「こんなのは卑怯だ...ッ!! 澪狗ッ!!」

「卑怯なのは正義だ。  …さて、後はお前だけか...

  んじゃ、本気を出せば... お前なんてすぐに殺せる!!」

「…!?」

「行くぜ... ――発動ッ!!!」


澪狗の周りに膨れ上がった紫色のオーラが出現する。

しかし、そのオーラは今まで戦った時よりもかなり強いオーラだった。


「…な、なんだ... この発動は...!?」

「幻〝ファンタジー・ウエポン〟 ――剣〝チェンジ・ソード〟ッ!!」


澪狗の手には紫色の幻で作られた剣を持っていた。

その剣を持ち、悠に先制攻撃を仕掛けた。


「グッ!!」

「フフフ... 発動力があがったせいか... お前の力が弱く感じるッ!!」


そう言い、悠を吹っ飛ばす。

悠はあの時に戦った時よりも格段に上がった澪狗の強さに翻弄されていた。

すぐさま澪狗の攻撃が来る。 悠は受け流すことしか出来ず、

反撃のチャンスをうかがえずにいた。


「ハアアアッ!!!!」


澪狗が剣を振るうと周りには紫色のオーラとともに衝撃が伝わる。


「クッ...。」

「どうした...? どうした!? 救世主〝メシア〟よ!?

  あの時よりかなり弱くなっていないか...?

   いや違うか、俺が強くなりすぎた... と、言うことか!!!」


悠はかなり澪狗に押されていた。

と、悠はチャンスを見つけ... 攻撃をしてみることにした!


「〝インフィニット・アクセルシュート〟ーッ!!!」


澪狗に向け真っ直ぐに放たれた白き衝撃波だったが...


「無駄だ。」


澪狗は自分の剣をその衝撃波に向け、かき消した。


「…な!?」

「ハハハハハッ!!!! 楽しいなあッ!!」


澪狗はどんどんと悠に近づいて行く...

悠は白き衝撃波を放っているのだが... 全く効いていない状況である…。


「もう、終わりか?」

「…。」

「ならば... 殺してやるよッ!!! ――〝ファンタジー・ストリーム〟ッ!!」


紫色の衝撃波らしきものが悠を襲った。


「グアアアアアアアアアアアッ!!!!!」

「フハハハハハ!!!」


悠はその場に手をついた。


「クソッ...!!! …強すぎる!? 格段に違う...ッ」

「さて、救世主〝メシア〟も今日で終わりだな...ッ!!」


澪狗が悠にとどめをさそうとした瞬間...!!

突如、青きオーラが輝きだす。

その輝きにより、少量の雨が降ってくる。


「――!?」

「…まさか...ッ!?」


青きオーラとともに蒼雨 茜が復活した。

オーラの輝きがます度、発動力があがっていくのが分かった。


「テメェーは俺が殺す...ッ!! さっきのお返しと行こうぜェッ!!!」


茜は妖刀〝村雨〟を再び発動させる...ッ!!


「本当は悠に対して、この攻撃をくらわせる予定だったが...

  裏切り者に対しては、俺は許さねェ...ッ!!!」


青きオーラは茜の周りを囲み、再び輝きを増す!!


「俺の能力は雨だけじゃねェ...ッ!!! 天候そのものが俺の能力...ッ!」


その言葉通りに先程から降っていた雨が止み、天から光がさす。


「慈悲の光...  ――即ち...〝快晴〟...ッ!!」


天からさした光により、天候は快晴となった。

そして、妖刀〝村雨〟からは青い炎のようなものが刀の刃を包む。


「これが俺の〝蒼穹〟の能力...ッ!!

  行くぞ...ッ!!! ウオオオオオオオオオオオオッ!!!!」



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



何時だって、何時だって俺は本気で真面目だったんだよ。

何度も目の前に壁があっても... 諦めなかったあの頃。

悲しいことがあったとしても... 前に進んでいたあの時。

変わらないあの笑顔... ずっと大切にしたかった。

気づけば俺は、お前の笑顔で此処まで辿りつけたのかもしれない。

護られた時もあった。 勿論、護ってやったこともあった。

だが、もうお別れなのか? 俺は一生... 一人なのか?

もう... 諦めることしか出来ないのか?


             茜色の空に咲いた一輪の菖蒲を。


               いや、少し違ったな...


          茜色の空に咲いたとても非力な一輪の菖蒲を。


だが、それでも俺は前に進まなきゃならないのか?

此処で立ち止って諦めてもいいんじゃないのか...?  と、思う。

だけど... それじゃ、誰かが悲しむ... 悲しんでしまう。

一体どうすればいい?  どうすれば俺はいいんだ?


――生きて。


生きて? 生きてお前の悲しみを償えばいいのか?

それが、お前に対する慈悲の日光となるのか?


――分からない。


俺にも分からない。

けど... 俺がお前を護ってやる。 それだけは忘れないでくれ。


――護っててくれてありがとう。


ああ、こっちこそ。


――信じてる。


俺も信じてる。


――出会えてよかった。


俺も。


――お別れだね。


…。


――さようなら。元気でね。


…あやめ...ッ



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



PM 05:02

先程同様に屋上での戦い中である。

復活した蒼雨 茜が物凄い勢いとかなりの発動力で澪狗と対等に戦っている。


「ウオオオオオオッ!!!!」

「な...!?」


茜は妖刀〝村雨〟を振りかざし、澪狗へ斬撃攻撃を加える。

青い炎で包まれた妖刀〝村雨〟は澪狗の幻で作られた剣を弾き...

屋上のコンクリートに刺さって剣だけが青い炎とともに燃えている。

今は茜の方が発動力が高い為、澪狗は押されている状況である。


「どうだ...ッ!!」

「だが、俺にはまだ戦える力があるんだよッ!!」


澪狗も負けじと弾かれた剣の方向へ向かい、

それから次の武器を生成させようとしたのだが...


「…まだ燃えているだと...!?」

「フッ、かかったな...。

  俺のこの技〝快晴〟では、武器を焼くことにより、

   一定時間その武器を扱えることが出来ないようにする技だ。」

「…チッ!!!」

「さあ、とどめだぜ...ッ!! …静かな雨... ――即ち... 〝霧雨〟...ッ!!」


この言葉とともに少量の雨が降ってくる。状況としては天気雨となっている状況である。

茜は青いオーラを纏った〝村雨〟の斬撃攻撃をくらわせようとした!!


――キンッ!!!


だが、その攻撃は... あいつによって阻止された。


「お前は...ッ!?」

「澪狗... 手を抜きすぎじゃないのか?」


そう... 謎の仮面の男... ――皇王 煌がそこにはいた。


「テメェーは誰だ...!?」

「皇王 煌だ... 仲間が世話になったようだな…。

  それと、救世主〝メシア〟もこのざまか...。」

「…。」


皇王 煌は自分の所持している光輝剣〝グラム〟で茜に斬撃攻撃をした。

が、茜はその攻撃を軽々受け止め... 両者再び刃を向ける。


「ほう... 中々いい発動力だ。」

「だろうな...ッ!!」

「だが、今日はこれにて撤退させてもらう。  行くぞ、澪狗ッ!!」


すると、澪狗はすぐさま紫色のオーラを放つ。


「テメェー!!!  待てッ!!!」

「また、戦えることを楽しみにしているぞ...。」


そう言い、皇王 煌と澪狗は紫色のオーラとともに姿を消した。

茜は発動を解除し、悠に話しかける。


「悠... すまな...ッ...」

「…!?」


茜は急に倒れた。 多分、急な発動で体力を底までにしたのだろう。

悠は茜を保健室へと運んだ。

こうして... 悠と茜の戦いは終わった。

だが... まだの戦いは終わっていなかった。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



AM …分からない。

随分... 時間が経ったと思う。 俺は急に目を覚ました。


「…!?」


俺は生きていた... ってより、生きているハズだと思っていたのだが…。

さて、此処は何処だろう?  と、思い右を向く。


右を向いたら、あやめが寝ていた。


どうやら、此処はあやめを運んだ病院らしい... って!?

…あやめ...!?  あやめは生きている!?

と、言うよりあの戦いからどのくらい経ったのか分からなかった。


「茜... おはよう。」


と、あやめが俺に気づき声をかける。


「おはよう... あやめ大丈夫か?」

「うん、大丈夫。」

「よかったー。」

「あ... えーと、あの日から10日経ったよ。」


10日...!?   俺はそんなに...!?


「茜はずっと起きないから心配だったよー。」

「ああ、悪い...。」


どうやらあやめは無事らしい。  よかった... とってもよかった。


「茜、今日が何の日だか分かるかな?」

「今日... …って、まさか俺達の誕生日か!?」

「わー、おめでとー!」

「おめでと、二人して18歳じゃんか!

  …ってより、まさか病院で二人して祝うことになるとは...。」

「ともあれ、茜、私... 18歳まで生きることが出来たよ!」

「いや、これからも生きようぜ!! 二人でなっ!」

「うん、茜... でも、お別れだよ。」


あやめは顔を下に向ける。


「…え?」

「私は18歳までしか生きられないんだよ?」

「嘘つくなよ!  ってより、18歳になってすぐ死ぬとか可笑しいじゃんか!

  ってより、18歳になったってことは逆に18歳を過ぎれば...

   もう死ぬ危険性は0%じゃないのか!?」

「それ、私が言いたかったのにー!」

「…え!?」

「でも、私達の18歳を茜と祝うことが出来て... 本当に嬉しいよ。」


あやめが笑顔で俺を見つめていた。


「ああ、俺もだ...」

「好きだった... 私は茜がずっと前から大好きだった。」

「え!?」

「ありがとね! 茜!  私は幸せだよっ!」

「ああ... あやめ...」


「…こんなお別れでごめんね。」


「なんか言ったか?」

「う、ううん!! なんでもないの!!」

「そうか... んじゃ、また治療と言う名の睡眠とするか!」

「なにそれ!  でも、今日が終われば... 私達は退院だからっ!」

「お、そうなのか!! んじゃ、先に睡眠するよーう! おやすみー、あやめっ!!」


俺はそう言い、すぐさま睡眠へと... 熟睡へと入った。


「貴方と同じくして生まれて嬉しかった。

   じゃあ... 本当にさようなら... 出会えて嬉しかったよ。  茜…」



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



05月??日

PM 08:49


「あやめーっ!!!」


俺はそう言いながら... 目を覚ました。

場所は病院... あぁ、まだ今日だよな。 明日... じゃないんだよな。

そう思い... あやめのいる方向である右側を向く。


「あや... め...?」


だが、右側にはあやめは居なかった。

俺は突如として起き... 病院のベッドから出る。


「あやめ...!? あやめ!?」


俺はあやめの名前を叫んだものの... 何も変わりがない。


まさかこれは...!?


俺は個室を飛び出し... 歩いていた看護婦さんにあやめのことを聞いてみた。


「す、すみません!! 蒼雨 あやめって知りませんか!?」

「…蒼雨 あやめ... さんですか...。」

「…?」

「すみません... 此方に来ていただいても宜しいでしょうか?」

「あ、はい...。」


俺は看護婦さんに言われるまま着いて行った。

まさか...!?



PM 08:54

場所はある病院の個室だった。  そこにいたのは...


「あ... あやめ...!?」


ベッドで寝ているあやめの姿だった。

俺は近づこうとしたのだが...


「残念ながら... あやめさんはもう...。」

「…!?」


そう... あやめはもう息をひきとっていたのだ。

俺には急に悲しみが込み上げてくる...。


あやめの死を認めることが出来ないからだ。


「貴方が急に入院してきてから9日後に息を引き取りました。」

「…!?」

「昨日... 息をひきとったと言うことです。」


どうやら... 俺は夢を見ていたようだ…。

あやめと俺の誕生日の日の時の夢を...。


俺はすぐさまあやめの手を掴む... 勿論、手は冷たい。


「あ... やめ... あやめ...っ!!!!  くっ... そお...ッ!!」


俺は泣きながらあやめの手を握り締める。

勿論、あやめの手は反応してくれない。


あやめは18歳の誕生日を迎えられず... そのまま息をひきとったことになる。

そして、今日、05月24日は、俺達の誕生日である。


「…あやめ... あやめええええええええええええっ!!!!!!」


俺は心から叫んだ...涙で前が見えないのだが... この手は離したくなかった。

そうして、あの夢の中で俺は... すぐに寝ると言うことをしてしまい...

もっとあやめとの時間を過ごせなかったことを後悔している。


所詮夢であっても... あやめとの時間が欲しかった。

何故... 俺は明日に期待したのだろう...!!!

何故... あやめともっと話が出来なかったのだろう!!!

何故... あやめは... …あやめは...ッ!!!!


俺はその場から1時間動くことが出来なかった。

あやめを感じたい...  だが、もうその手は... その魂は...


俺はあの夢を後悔している。  これからも一生後悔することになるだろう…。

俺はそう思い... あやめの手を握り続けていた。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



05月25日

PM 09:31

俺のクラスの大半が病院に来てくれた。

と、同時にあやめの死で悲しむ者が大勢いた。


「すまない... あやめを助けることが出来なかった。」


俺は来てくれたみんなにそう伝える。

すると、刹那が声をかけた...。 涙声で。


「もう、そんなことを言っても... 遅いよっ!」

「…。」


何も言い返せなかった。 と、言うよりも言いかえす言葉がなかった。


すると、スカーレイド、メルティ、シラヌイが話をし始める。


「運命には逆らえない。  それは事実ですよ。

  あやめさんは一度運命に逆らおうとしたと思いますよ?

   しかし... それがうまくいかなかった... それだけですよ。」

「スカーレイド…。」

「あやめは... 十分生きた。 と、言っていたわ。

  アタシは、この現実を受け止めることが出来ないけど...

   受け止めるしかないのよね...」

「メルティ…。」

「死んだ人間は生き返らん。 お前が悩んでも仕方ない。」

「シラヌイ…。」


3人の言葉で少し俺も落ち着くことが出来た。

でも... あやめがもういないとなると... 俺は...ッ。



AM 11:38

病院から、クラスの大半が一時的に帰る中...

刹那、スカーレイド、メルティ、シラヌイだけが残って俺の手伝いをしてくれた。

…本当にいい奴らだよ。



PM 12:23

刹那、スカーレイド、メルティ、シラヌイが病院から帰り...

またもあやめと俺は二人っきりになった。

勿論、あやめは目を覚ますことはない。

そんな中なのだが、俺はあやめに話しかけていた。


「あやめ... 俺が全て悪かったんだ。

  あやめを救うって... 言ったのに... 無理だった。

   許してくれ... お前を救いたくて... しょうがなかった!!!

    だが、実際には俺は無力で何も出来ない。

     こんな兄貴に生まれてすまないっ!!!!」


俺はあやめに色々と話しかけた。

無駄だと分かっていても、話しかけている。

あやめが... 何時かあやめが気づいてくれるかもしれない。

…と、思っていたが... やはり無理だった。


そんな中... 急に個室のドアが開く。


「茜さん。」

「…悠!?」


そう... 勘違いから戦いに巻き込んでしまった後輩の悠だった。


「…あやめさんは... やっぱり。」

「気にするな... お前の問題じゃない、俺の問題だ。」


そう言うしかない... ただでさえ、裏切り、裏切られた俺だ。

悠に対して、何も言えることがない。


「茜さん... 俺。」

「…?」

「俺はケテルの治癒能力を使ってあやめさんを助けようとしたんですが...」

「――!?」

「やっぱり無理でした。 覚醒者ではないとやはり能力使用は無理みたいでした。」

「…そうか... 俺はただ無駄に争いを起こしていただけなのか...。」


俺は罪深き男だ…。


「あ、勿論、あやめさんが生きている時ですよ!?

  そんな時に自分は... あやめさんから話を聞きました。」

「…?」

「『茜は頑張ったから、もういいよ』と…。」

「…そうか...。」


俺はその言葉を聞いてまたも涙が出て来た。


「茜さん... でも、茜さんの戦いは無駄じゃなかったと思いますよ?」

「…?」

「茜さんはあやめさんを助けようと必死だった。

  その戦いはこんな結末でしたが...

   茜さんにとっては無駄じゃなかった。  と、思いますよ?」

「…なんだか、慰めになってないような気がするんだが?」

「…あ、すみません... 俺国語は苦手で。。」

「ともあれ、お前もありがとうな...。」

「え?」

「俺の勘違いから始まったんだ... 本当に申し訳ない。」

「い、いや... 俺は。」


そんな形で悠には謝ることが出来た。

これでいいよな... あやめ?


そうして、時間は過ぎていった。



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


05月27日

PM 05:28

気づけば、あやめの葬式や色々なことは終わり...

俺は俺の父親と母親とあやめが眠るお墓の前に立っていた。

この時には... もう悲しみは枯れて、悔しさしか残っていなかった。


「父さん... 母さん... あやめ...

  俺はこれからどう生きて行けばいいのか分からない...。」


俺はお墓の前で呟く。


「お金... ああ、お金が全て消えてしまったよ。 ついでに家も。」


あやめの葬式や色々なことで家を売りそれでお金を手に入れたワケだが、

お金が全て無くなってしまった。


「ごめん、全てを失ってしまったよ...。」


俺はこれからどう生きて行くか全く考えずにいた。

どうしようもない結末になってしまったからな...。

と、その時にお墓の近くに咲いていた一輪の花を見つけた。


「…菖蒲の花…」


そう、その花は菖蒲の花だった。

あやめは同じ名前の花、菖蒲が好きだった…。

俺はその花を見た時... 何故かホッとした。


「まだ、俺は終わったワケじゃないし始まってもいない。」


そう、俺にはセフィラ...〝ケセド〟がまだ残っている。

俺が護ればいい... ヴァングルスや澪狗などから。


と、そんな時声が聞こえた…。

小さい声だったが、かすかにあやめの声だと感じた。

俺はその言葉に対して、心で言い返した。


そう、俺は生きて行くことを決心したのであった。

そうして、茜色の空を眺めながら... ――その場を後にした。

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