第十五話〝水流〟
能力は〝水〟 つまり水流... ――操られる結末
04月16日
AM 11:31
今は悠達の学校の授業中である。
外は昨日の雨が続き、雨の状況で少しジメジメとしている。
俺はそんな外の風景を見ながら、授業を受けていた。
「じゃあ、今日は今配ったプリントを終わらせた者から休憩だ。」
教師がなんか頑張らせる為に終わった者から終了戦術を仕掛けた。
そこで一旦、クラス全体がざわめいた。
そこで頭が悪い者も頭が良い者も早く終わらせようとしていた。
勿論... 俺は頑張るが... 途中で諦めた。 と、その瞬間に...
「悠くん? 終わってないのかな?」
奏空が話しかけてくれた。
しかも... ビックリなほどにさっき配られたプリントなのにもう終わっている。
「は、早いね! お、俺なんか... 途中でもうね。」
「光、悠くんに勝ったーっ 諦めた所が…!」
光が前から絡んで来た。
プリントの状況は終わっていないのだが、俺より一つ進んだ所で諦めている。
「二人とも終わらせなきゃダメだよぉっ」
奏空があきれた感じで二人にプリントを見せようとしている。
「奏空! 見せてくれるのか!?」
俺は期待しながらも、奏空のプリントを掴もうとした。
「だーめっ。 頑張らなきゃだめだよっ!」
と、掴もうとしたプリントに逃げられた。 え、焦らされてる!?
「光は勉強がめんどーだよぅっ!!」
突如、光が叫んだ。 やっぱり、叫んだか。
そんな中、ヨウが絡んで来た。
「うへー。 スゲェ、面倒だぜ? これ」
…ってより、教師がせっかく作ってくれたプリントにそんなこと言うなよ!
学校ってのは、勉学を育む場なんだぜ?
…ぉ、俺... カッコイイこと言ったじゃん。 スゲェ!
とりあえず、こんなことを一人で考えていたのだが、
自分もそれだしさ... 人のことは必ずしも言えないけどね。
PM 12:01
時間は昼食中。 今日は雨で屋上へは行けないので教室でのお昼。
勿論、いつものメンバーでのお昼である。
いつものメンバーだと俺から見ると...
個性的すぎやしないか? このメンバー的な意味で。
そんな中、菜々美が俺に話しかけて来た。
「悠、この後ちょっといいかなー?」
菜々美がそんなことを言ってくるだなんて、初めてだ。
「あぁ、別に構わないけど?」
「んじゃ、ご飯食べたら、うちに着いてきてね!」
「ん?」
そう言った感じに了解をした。
「菜々美... ま、まさかっ!?」
何故か、ヨウが異様に反応して来た!?
「なんだよ、ヨウっ!?」
「いやさ、なんでもない」
「オイコラ、ヨウ!」
「でも、菜々美ちゃんがそーいうことするのは初めてかもしれないね」
奏空が言うことには正しいと思われる。
ってことは... 菜々美には何か俺に対して何か...?
しかも、他に誰も呼ばない...?
…一瞬、頭に浮かんだことを言おうとしたのだが...
この感じじゃ、そーじゃなさそうな気がする様な…。
PM 12:21
俺は菜々美に言われるがままに着いて行った。
しかし、着いて行ってみたものの、着いたのは... ――屋上だった。
雨の日は出入り禁止なのだが、菜々美は構わず、ドアを開けた。
「あの...? 菜々美ー? 雨の日はダメなんじゃ?」
「大丈夫だよー」
「なんか、めちゃくちゃ心配なんだけど。」
「いやいや、良いじゃんか!」
そう言って、雨が降っている中でも菜々美は屋上を駆け抜けて屋上の真ん中へ。
――何か、可笑しいと俺は一瞬感じたのだが... 何故かためらいもなく、
屋上の真ん中へ... 菜々美の元へ行った。
「菜々美、急にどうしたんだー?」
俺は菜々美の目の前で止まり、話しかけた。
「悠... 消えて。」
その時、菜々美は赤きオーラと共に、剣を持ち出し、俺に攻撃を仕掛けて来た。
「――!?」
俺は素早くその状況を理解し、すかさず避けた。
これは昇さんの戦術...
――つまり、反射神経が勝負を決めると言ったのは本当だったんだな。と、理解する。
そして、俺はケテルを手に持ち、戦闘へと構えた。
しかし、俺は何故、菜々美が俺に剣を向けた... のかは分からない。
しかも、何故... 覚醒者なのかと...? 俺には全く分からなかった。
「なんだよ!! 菜々美!? どうしたんだよ!!」
だが、菜々美には俺の声が聞こえていないみたいであり、
またも剣を俺に対して、構えていた。
「菜々美ッ!! 何故、俺に剣を向けるんだよ!?」
しかし、菜々美には全く聞こえておらず... 菜々美が攻撃を仕掛けて来た。
菜々美の剣は俺の横から斬撃攻撃を仕掛けてくる。
俺はその横からの斬撃攻撃をかわし、セフィラを発動させた。
「菜々美!!」
菜々美の第二の攻撃を始める。
今度は炎を剣に纏わせ、それを俺にぶつけて来た。
このことから、菜々美の能力は... 〝火〟だと理解出来た。
俺は発動させた〝無ノ剣〟で炎を振り払った。
そして、菜々美は接近戦を仕掛ける為に、走って俺のそばまで来た。
また炎を纏った攻撃をしてくるのだが、俺は剣で受け流す。
その時に俺は菜々美の顔を見た。 表情に... ――感情がない。
まさか、これは誰かに操られているのか...? と、考えた。
その考えは当たっていたらしく、全く感情がないままに斬撃攻撃を仕掛けてくる。
俺は剣で菜々美の斬撃攻撃を受け流しているのだが、
全く、菜々美には効果がない状況だった。
…まさか、こんな早くから対人と戦闘になるなんて思ってもいなかった。
しかも、相手は友達の菜々美である。
菜々美を傷つけたら...俺はどんな顔で菜々美に会えばいいのか分からないからだ。
だが、今は菜々美にかけられている幻覚催眠を解くことが大切だ。
俺は菜々美に話しかけてみることにした。
菜々美が攻撃を仕掛けた時に、剣で斬撃を受け止めて...
「菜々美っ!! 一体何があった!?」
そこで菜々美に話しかけることにする。
しかし、先程同様全く効果はなかった。
意味のない行動、そして、無駄な体力を使っていた。
すると、屋上の出入りするドアの所に紫色のオーラが突如現れた。
まさか... ――澪狗!?
「フフ... 〝救世主〟メシア。 お前は此処で消えるんだ。」
そう... 全ての原因は澪狗だったようだ。
どうやら澪狗は菜々美に幻覚催眠をかけ、俺に攻撃をさせているらしい。
俺はそう考え、菜々美の斬撃攻撃を避け、澪狗の方へ走った。
しかし、足場が悪く、俺はこけてしまった。
「…無様だな〝救世主〟メシア。 …もう、お前の負けだ。」
そう告げ、俺は立ちあがり、菜々美の方を向こうとした時には...
菜々美が俺の後ろに立っていた。 そして、菜々美は剣を振り下ろした。
――その時... キンッ!!!
目の前にブーメランのような物により、菜々美の剣は弾かれた。
そして、そのブーメランのような物はある友人の元へと戻って行った。
戻って来たブーメランを受け止めたのは... ――清水 怜だった。
PM 12:37
突如として現れた清水 怜。 しかも、俺の危機を救ってくれた。
怜くんは青色のオーラを纏いながら、俺に話しかけてくれた。
「大丈夫でしたか? 悠くん。」
「あぁ... なんとかな。 ありがと!」
「いえいえ、礼には及びませんよ。」
「えと、急にだけど、怜くんは... 覚醒者とみなしていいんだよな?」
「そうですよ。 ああ、ついでに近藤さんもですよ。」
…菜々美が覚醒者...!?
しかし、それは俺は身をもって体験したことであり... 認めなければならない。
それは嬉しいことなのか... どうかはわからなかった。
次に澪狗に対して、話しかけた。
「やはり... ――貴方でしたか、全ての原因は。」
「フフ... 知られているとなんだか、イラッと来るね。」
「…さぁ、早く近藤さんの幻覚催眠を解いてください。」
「そんな普通にお前の言うことを聞くと思うのか?」
「そうは思っていません。 しかし、これは僕の願いです。」
「そうかよ... まぁ、でももう幻覚催眠は意味なさそうだな。」
そう言って澪狗は菜々美に向かって幻覚催眠を解いた。
菜々美は意識を持たず、その場に倒れた。
…この行動に俺は、少し気になっていた。
何故... こんな微妙な所で菜々美の幻覚催眠を解いたのだろうか。
「妙に素直ですね。」
「…? ともかく、話すのが、面倒だ... 消えろッ!!」
突如、澪狗は紫色のオーラを最大限に身体から放出し...
「幻〝ファンタジー・ウエポン〟 ――槍〝チェンジ・スピア〟」
能力である幻〝ファンタジー・ウエポン〟を発動させる。
この前とは違って今度は槍状態の武器を取り出した。
この武器は... 彼の能力である〝幻〟から作られている為...
武器の形状は変化させることが可能らしい。
「話すのが面倒だからって... その言い方はないと思うんですが。」
「うるさいな... 文字数を少なくしてくれればいいんだけどさッ!!」
澪狗は怜に向かって槍で攻撃を仕掛ける。
怜は先程のブーメラン状の物を二つに分離させ、トンファーのように持つ。
そして、槍攻撃を受け流しながら攻撃に出る。
怜のトンファー攻撃は澪狗には効果的であり、澪狗が押されていた。
だが、澪狗は次の攻撃へと出る為に... 槍で怜を振りらはった。
怜は槍攻撃を受け止め... 少し距離を置いた。
その時... 澪狗が不敵な笑みを浮かべてた、
「幻・槍〝ファンタジー・スピア〟の出番は此処で終わりだな。」
「どういうことですか?」
怜が疑問を相手にを問い詰めた。
しかし、澪狗は無視して... 紫色のオーラをまた放出させた。
「幻〝ファンタジー・ウエポン〟 ――斧〝チェンジ・アックス〟」
幻・槍〝ファンタジー・スピア〟の形状は紫色のオーラを纏いながら、
幻・斧〝ファンタジー・アックス〟へと姿を変えた。
「俺の武器は... 形状とともに能力も少し変るんだぜ?」
そう言って、澪狗は怜に攻撃を仕掛けた。
今度はかなりの距離を詰めて、幻・斧〝ファンタジー・アックス〟を空に翳し、
斧を振り下ろす攻撃へと戦法を変えた。
「そりゃさ... 強いセフィラを持っていても
攻撃方法や使用者により、ただの宝の持ち腐れになる。」
「そうですよね... 貴方達のセフィラとは対等には戦えないと分かっています。
しかし... 僕の戦闘スキルとリングの強さをなめないで欲しいものです。」
怜はトンファーの様に持っていた物を銃のように持ちかえ、銃撃攻撃をした。
「飛び道具にもなるんだな...。 そりゃ、面白いッ!!」
澪狗は水の銃弾を斧で防ぎ、弾き返しながら怜の元へと近づく。
怜は対抗して、銃撃の速度を上げるのだが...
澪狗は紫色のオーラを最大限に発し、銃弾を撃ち落としていた。
「…まさか... セフィラにはそんな風な能力もあるんですか!?」
「いや... これは俺の特殊な能力のお陰だからさ。」
そして、澪狗は怜の近くにもう居た。
怜はすかさず、トンファー状態に持ちかえるのだが、時は遅く...
トンファーが弾かれ... 澪狗は斧を振り下ろす体制だった。
「オイ... ――怜ーッ!!!!」
俺は叫んだのだが... 怜くんの顔は何故か笑っていた。
「フッ... 無駄に良い笑顔だな...。」
「ふふ... みなさんにはそう言われています。」
「…じゃ、消えろッ!! 〝ファンタジー・ブレイク〟ッ!!!」
澪狗は斧に紫色のオーラを纏わせ... 斧を振り下ろした。
――その時...
斧は怜の身体に当たった瞬間に... 斧は水を一刀両断したような形となった。
「…こ、これはどういうことだ...!?」
澪狗は驚いている中... 怜は突如、俺の近くに現れた。
「ふふ... これが僕の属性... 〝水〟... ――つまり水流です。」
「リングにはそのような... 能力、属性があるのか...。」
「まぁ、これはただの一例にしかすぎません。」
そう言って、怜は先程、弾かれた武器を持ちなおした。
「面白い... 実に面白かった...。 じゃ、俺は此処で失礼するぞ。」
「待て... 逃げるつもりか...!?」
「いや... これはあくまで様子を見るだけだからな。」
そう言って、澪狗は紫色のオーラを放出し、姿を消した。
そして、消えた直後に昼間休憩の終了のチャイムが鳴り響いた。
PM 01:01
俺と怜くんは、保健室へと菜々美を運んでいる状況だ。
そして、とっくに4時間目の授業は開始されている。
「しかし... まさか、怜くんまで覚醒者だったとはね...。」
「ふふ... 人間には一つや二つ以上、秘密があるんですよ。」
「そんなものなのか!?」
「…あ、そうそう... 今度は僕も戦いに呼んでくださいよ?」
確かに怜は戦闘に慣れていそうであり、俺よりも確実に強い。
しかし、セフィラではなくリングでの覚醒者だ。
リング... その力は俺にもまだ分からない。
「あ... 近藤さんには僕が覚醒者だってことを言わないでくださいね。」
「え? どうしてなんだ?」
「いや... 秘密ですよ。 二つ目の。」
「…分かったよ。」
怜くんにも裏事情というなの秘密があるらしい...。
菜々美も覚醒者... いつかは怜くんが覚醒者だってこともバレるハズなんじゃ?
そんなワケで俺と怜は保健室へ急いだ。
PM 01:04
俺と怜くんは菜々美を保健室のベッドへ運び、各自の教室へ戻った。
勿論、奏空と光にはこの件については...
「 なんか、菜々美が急に倒れたー。 」
と、軽々しく言ったもの...
二人には、昼休みの会話からそんな展開にはならないと思われていた。
「いや... うん、ごめん。 奏空と光には...。」
俺は何を言っていいのか分からなかった。
そんな感じで軽々しく言ってしまい... 二人には申し訳ない。
しかし... リングの出現については俺は全く知らないのである。
今後は... 菜々美や怜と協力して戦えるのかどうか... 判断しなければ。
それよりも、澪狗... あいつは一体...。
疑問や心配が残る中... 俺は外の景色を見ながら... また、色んな事を考えていた。