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30話 リュナ城での交戦

 領主城――さすがにエメラニア王国の城ほど大きくはないが、二階建てのそれは城と呼ぶにふさわしく、重く堅牢に作られていた。


「中はどうだ、カイル」

「……既に三体が待ち構えてる」

「三体か……よし、正面から行くぞ」


 ローエンは領主城の扉を開け放った。


「……おい、本当に人間だったぞ」

「だから言っただろ、魔族じゃねぇって」

「……………集中しろお前ら。仮にも同胞を殺した敵だぞ」


 三体の魔族は、小さな人間を前に軽口を叩き笑っていた。


 そんな中、リオネアが一歩前へ出る。


「……もし、見逃すって言ったら、森に帰りますか?」

 その声は低く、とても静かだった。


「あ?なに言ってんだこの人間」

 まあまあ、といって一体の魔族がリオネアの前にしゃがみ込む。

「あのなぁ、人間。それはこっちのセリフ。大人しく逃げるなら、滅ぶまでは長生きできるぞ?」


「なんで、人間の村を襲うんですか?」

 リオネアは小馬鹿にしたような魔族の表情を、鋭くにらみつける。


「……お前はさぁ、森を焼く時、いちいち虫たちの許可取るの?」

 ぎゃははは、と後ろの魔族が大笑いする。


 ザンっ――。


「……………え?」


 ぼとり、と何かが地面に落ちる。

 魔族の腕だ。

 リオネアは静かに大剣の血を振り払った。


「……ぃ……ってえ!!クソっこいつっ!!」


「私は………人間のためにあなた達を倒しますっ!!」

 リオネアの鋭い眼光が流れ、腕を失った魔族の背後を取る。

 そしてそのリオネアを他二体の魔族が取り囲む。


「リオネアっ!」

 ローエンは走り、腕の無い魔族に突進する。

 不意を突かれた魔族はバランスを崩し、後ろの魔族に支えられる。


 その間に、ミレイユは土魔法で脚を絡め、カイルは電磁弓を打ち込んだ。

 しかし、その矢は外し、魔族の肩をかすめただけだった。

「……ちっ」

 こうも混戦だと狙いが難しい。この威力だ。一歩間違えば、仲間を巻き込んでしまう。



「…………随分と楽しそうだな」



 リオネア達も、そして魔族達も、その声に振り返る。


「嫌なタイミングで来やがったな……」

 カイルは狙いを定める。

 しかし、引き金を引くよりも速く、放たれた魔法によりカイルは吹っ飛ぶ。


「カイルさんっ!!!」

 ミレイユは叫んだが、カイルの反応はない。


「………ほう、いつぞやの人間か。切った腕でも返しに来たのか?」


「………魔王、ネルグサリア!!」


 切ったはずの腕はすっかり生え、そして以前よりも圧を感じる。

 魔族達は一旦引き、ネルグサリアを守るように構える。

 しかしネルグサリアは手をはらい、それを断った。


「よい。遊んでいたのだろう?奴らは私の腕を切った手練れだ。お前らの暇つぶしにはちょうどいい」

 ネルグサリアは踵を返し、奥にある王座に腰を掛けた。


「さあ、始めてくれ。私もそろそろ害虫駆除に飽きてきた頃合いだ」


 リオネアはその言葉に、ぎゅうと柄を強く、強く握りしめる。


 改めて、リオネア達に三体の魔族が立ちはだかった。


 ミレイユは土魔法を発動させ、二体をせき止める。その隙にリオネアが片腕の魔族を切りつける。

 が、残った腕で止められてしまう。

「……くっ!」

「そんな簡単に殺せると思うな……よ……?」

 言い終わる前に、後方からローエンが首をはねる。


 その首が地面に落ちるや否や、他二体を止めていたミレイユの防壁が破られる。

「なっ!貴様!!よくもっ!」

 強烈な突進。ローエンが受けるが押される。

「俺と力比べか!いいだろう!そのまま死ねっ!」

 城の柱を何本もなぎ倒しながら押される

「ぐはっ………くそっ……!」

 とてつもない力だ。しかしだからこそ、ローエンは大盾を替えたのだった。

 その力を、受け流すために。

「ぅおおおぉぉおぉお!!!!」

 ローエンは大盾の端を引き、反対側を肘で押す。

 勢い余った魔族は壁に突き刺さり、城外へと弾き飛ばされる。

 その隙を狙い、ローエンは剣を突き立てて突進した。

 ずぶり、と深々と剣が刺さったのを確認し、力いっぱい振り上げる。

 勢いよく血しぶきが上がり、魔族は息絶えた。


 残り一体。

 先ほどから冷静そうな魔族は、リオネアと対峙している。


「……お前はなぜ人間を襲うのかと訊いたな?」

 間合いを取りながら、魔族は話しかける。

「そのまま返してやる。なぜ魔族を襲う。人間」

 その言葉に、リオネアは一瞬目を伏せた。

 その隙を狙い、リオネアに切りかかる。が、リオネアもそれに反応する。

 がきん、と大きな金属音が城内をこだまし、剣が押し合いになる。

「ふんっ………結局っ、どちらも奪い合っているだけだ」

 魔族がリオネアを押す。堪らなくなり左に払いのける。


「……それが人間の傲慢さだ。奪うくせに、奪われることを極端に否定する」


「当たり前でしょ!誰だって死にたくないし、死ぬのを見たくない!」


「それが傲慢だって言っているんだ!!」


 再び振りかぶって間合いを詰めてくる。

 剣は再び交差しぶつかり合う。

「死ぬのを見たくないだ?ではなぜ今殺し合ってる!?」

「あなたが、剣を抜いたから!」

「違うな!!」

 今度は魔族がそれを払い、下からリオネアを切りつける。


「うっ…………!」


「命の責任を負いたくないだけだ。そしてそれが弱さだ」


「違う!!殺す強さなんていらない!」

 リオネアは低く飛び込む。


「それで何が守れるっ!」

 魔族は足元に飛び込むリオネアを剣で防いだ。

 その魔族の剣を軸に、リオネアは精いっぱい左脚で踏ん張り、後方へ回り込む。


 正直、守れるかは分からない、それでも――


「守るんだぁぁああああ!!!!」


 リオネアは遅れる大剣を無理やり後方に振り、そのまま魔族を切りつけた。


「んっっ!………がはぁっ!!」

 腰を深く切られた魔族はのけ反り、地面に崩れ落ちる。


「んっ!……んんんっっ!!」

 痙攣した脚で、それでも立とうとしている。


 そしてやがて、動かなくなった。

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