表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/35

24話 敗戦と課題

 ――……………………強すぎるって。

 俺は、リオネアたちの戦いを見て、震えていた。

 まさかここで死ぬのでは――そうとさえ思った。


 ――でも引いてくれて良かった……………。

 深く長いため息をつく。

 しかしそんな中だったが一つの疑問が浮かんでいた。


 ――魔王の表示、リオネアの勇者表示と違うところにあるんだよな……。

 地図上の『魔王』という表示は、地図の北部ネグ=サリアから動いてはいない。


 確かにネルグサリアは、自分が魔王だと言っていた。

 しかし、画面上ではそうではない。


 ――本当に、魔王なんだろうか?

 俺は強い違和感を感じた。



 *



「…………っ…………ヒ―、ル……」

 気を失っていたローエンは目覚め、折れた腕をヒール魔法で回復を試みた。

 何度もヒールをかけ、ローエンは疲れ果てる。

 しかし、まだ目覚めていない仲間たちが心配だった。


「ローエンさんっ!」

「ミ、レイユ………か……他の、やつは……」

「カイルさんもクラウゼン教官も、とりあえずは無事です……」

 ミレイユは、ローエンにヒール魔法を施す。


「さすが、本職は違う……な……痛たっ……」

 ローエンはなんとか起き上がった。


「リオネアは、無事か……?」


「無事ですが……身動き取れない状態でして……」

 ミレイユの指さす方を見やると、岩々に絡まった状態のリオネアがうなだれていた。


「わかった。いま助けよう……」


 ローエンは立ち上がり、リオネアの元に歩いていった。


「…………悔しい……敵わなかった………助けられなかった………」


 リオネアは、そう何度も小さくつぶやき、流している涙は地面で小さな水たまりとなっていた。



 ***



 陽はすっかり落ち、辺りは薄暗くなっていた。

 星々が徐々に顔を出し、鳴く鳥や虫の声も夜のそれと変わっていった。


 一行は、動ける範囲でゆっくりと、野営の準備を進めた。


 ミレイユやローエンの魔力は底をついたため、焚火の着火にはクラウゼンの火打石を使う。


 カチっ、カチャっ、という音が森に反響する。

 やがて穂口に火が付き、徐々に火を育てていった。


 焚火に火がともると、心なしか安堵感が広がった。


「………よく全員、生き延びた」

 ローエンがそうこぼす。


「…………でも、倒せませんでした」

 リオネアが、小さく座りながら返す。


「しかし……腕は奪えた。しばらくは……」

 クラウゼンがそうつぶやく。


「………俺は、役に立たなかった」

 カイルは、いつになく弱気だった。


「……………はい……私も」

 ミレイユも、自身の無力さを痛感していた。



 ただ、夜が更けていく。

 焚火だけが揺らめき、他はまるで時間が止まったかのような空間。


 そして各々眠りにつき、そのまま朝を迎えて行った。


 リオネアだけが、その明けていく空をただじっと眺めていた。




 ***



「さて、これからどうする?」

 日が昇り、皆が朝食を済ませた後、ローエンは今後について切り出した。


「………私はイデアスに戻ります」

 クラウゼンはそう申し訳なさそうに言った。


「ああ。巻き込んですまなかったな。上に報告するのか?」


「ええ。しかし……討伐には出向かないでしょう。あくまで警戒、となるかと」


「だろうな……」


「まさか、このまま追うって言うんじゃねぇよな?」

 カイルが訊く。


「それはさすがに出来ない。追っても勝てないだろう……」

 ローエンのその言葉に、リオネアは悔しそうに顔をゆがませる。


「なら~……一度エメランに戻りません?魔物に苦しんでるところは他にもあるはずです……」


「それが現実的だな。俺も装備を見直さんとならん」


「俺も……そもそもの戦い方を見直す必要がある」

 カイルも、小さく同意する。


「それでいいか?リオネア」


 こくり、とリオネアは俯きながら頷いた。


「それなら、早速移動しよう。みんな、動けるな?」



 一行は、王都エメランへの帰路についた。


 馬車に揺られながら、カイルはローエンと戦法について相談している。


「弓以外か……遠距離は魔法の主戦場だからな……他となると……」


「実は魔法は多少心得がある。サンダーボルトなら……」


「え~?そうだったんですかぁ?でもサンダーボルト……扱いが難しいですねぇ……」

 魔法、聞いてミレイユが話に参加する。


「ああ。だから使ってこなかった」


「なら、矢に纏わせたらどうだ?」


 クラウゼンのその言葉に、カイルは目を見開く。


「そうか。その手があったか……」


「難しいとは思うが、君の冷静さなら扱えるだろうさ」

 クラウゼンの言葉に、カイルは少し前向きになった。


「ルルティア。今後は俺らであの怪物と相手しなければならない。何が必要だろうか?」

 ローエンは、元部下であるクラウゼンに意見を乞う。


「そ、それは貴方の得意分野でしょうに……」

 クラウゼンは目をそらす。


「頼む。教えてくれ」

 まっすぐ見るローエンに、クラウゼンは仕方なく応える。


「そ、そうですね……私が見るに、圧倒的に火力が足りていなかった、と思います。今回はリオネア頼りで陽動し一撃を食らわせられた。しかし、本来なら、近接、もしくは遠距離からの強力なサポートが欲しい」


 クラウゼンは、ローエンの顔を見やる。


「ローエンさんは、タンクとしては申し分ないでしょう。強力な武具があれば、役割は果たせそうだ。しかし近接に不安があるなら、コンバートも視野にいれても良いのかもしれません。貴方は元々優秀な剣士だった」


「え、そうなんですか?」

 リオネアがクラウゼンに訊く。


「ああ。恵まれた体躯とパワー、そして技術を持った素晴らしい剣士だった」


「昔の話だ。俺も歳を取った。当時の機敏さはないさ……」


 そしてクラウゼンはカイルに向き直る。


「カイルは……そもそもの戦法に無理があった。弓矢は今でも奇襲に長ける。しかしああいう類にはどうしても不利だ。攻撃よりも、気を散らしたり、陽動が光るだろう。その意味でも、雷付与の矢は使い勝手がある」


 カイルは深くうなずく。


「そしてミレイユ。当時よりは随分発動が速くなった。しかし今度は火力が課題だろう。その速度を維持して、高火力を出せるように訓練するといい。あと、君は確か土魔法も使えたはずだ。鍛えれば、攻撃も防御も可能な便利な属性だ。これを機にそこを伸ばすのもいい」


「さすがクラウゼン教官……ご存じだったんですねぇ……」


「土魔法は軍ではあまり需要が無いからな……でも個人は違う。ミレイユは、一人でも戦える状態を目指すイメージだ。速さ、火力、戦略、援護……後衛ならではの視点で戦えれば、ローエンさんの負担も減る。これはカイルも意識した方がいいな」


 ミレイユとカイルは、その言葉を反芻する。


「そしてリオネア。君の最大の強さは火力だ。そして素早さもある。一瞬で間合いを詰め、強力な一撃を与えられる。剣士としてこれ以上の事は無い。しかし、技術がおざなりだ。周りにサポートしてもらうのも手だが、それでは満足しないだろう?」


 リオネアはうんうんと頷く。


「ならとにかく実戦だ。ローエンさんに教わるといい。私もそうだった」


「え!?」

 リオネアはローエンへ振り返る。


「……そうだったか?」


「覚えていないんですね………。貴方は私に、力ではなく速さを教えてくれました。……それで今の私がいます」


「そうだったか……すまない」


「それにしても、リオネアはローエンさんから指南受けたと言っていましたが……それにしてはまだ緩いというか……」


「すまん……まだそこまで、しっかり教え込めているわけじゃないんだ」


「それならしっかり叩き込むべきです!リオネアは貴方を越えられる逸材だ!それに、勇者なのでしょう?彼女を死なせない為にも、必要だ!」


「そ、そうだな……確かに……」


「まったく。ローエンさんは女性に甘いところがある!同じく命を懸けてる仲間なんですから!」


「すまない……」


「……ローエンも怒られることあるんだな」


「カイル、よしてくれよ……」



 心地よく馬車は揺れながら、王都エメランへとたどり着いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ