17話 ゆかいな仲間たち
――ミレイユたん……酔うと豹変するんだな……
見ているこっちまで、ひっ!となった。
――それにしても、またイケメンですよ。今度はクール系ですか……
カイル。あれは危険な存在だ。往々にして、女子はああいうのに弱い。と思う。
これは注視が必要だ。
*
出発当日――。
「あ、来た来た!ローエンさーん!!」
ローエンとカイルが集合場所にやってきた。
「二人とも早いな。忘れ物は無いか?」
「はい!問題ありません!ね、ミレイユ!」
「はい~大丈夫だと思います~」
「………ピクニックじゃねぇんだからな」
カイルがそう釘をさす。
「分かってますよ!」
「はいはい、それじゃ行くぞ」
一行は大陸中央部に向かうため、まずは森の街ヘイムを目指した。
***
「そうか、リオネアはノルディアの出身か。あそこはのどかで、故郷を思い出すよ」
馬車の中で、四人は出身地の話をした。
「のどかというか、ただ田舎なだけですよー。ローエンさんは、どこの出身なんですか?」
「あー………ローデル地方の外れの村だ」
ローエンは少し言いにくそうに答える。
「酪農で有名ですよね~ローデル地方~。カイルさんは~どこの出身なんですか~」
ミレイユは、少し離れて座るカイルに話を振る。
「………………アルデハルン」
「なんだ~私はメイナなんです~!割と近いじゃないですか~」
ミレイユは嬉しそうにカイルに近づく。
「ってことは~、ご実家は商売を?」
「………ああ」
カイルは少しミレイユと距離をとりながら答える。
「どうせ、たいして実家に連絡してないんですよね?」
ミレイユがそう憎まれ口をたたく。
「うるせぇ……」
「リオネア~それは私達もでしょう~?」
リオネアは頭を掻いた。
「はっはっは。まぁ冒険者ってそんなもんだよな」
ローエンが穏やかに笑う。
「確か、カイルは武器商のせがれだったな?」
ローエンのその言葉に、ミレイユは何かを思い出しそうな感覚になる。
「あれ、カイルさんの苗字って……」
「……フェルナー」
「……………あ~!もしかしてぇ、ブライアン君のお兄さん~?」
「!?知ってるのか?弟を」
カイルは切れ長の目を丸くして、とても驚いた顔でミレイユを見る。
「こないだの依頼が~ブライアン君だったんですよ~!かわいい弟さんよね~」
「え?え?カイルさんって、ブライアン君のお兄さんなの?皮肉屋だけど優しい……へぇ?」
リオネアはカイルを探るように覗き込む。
「な、なんだよ…………」
「そっかそっかーお兄ちゃんしてるんだねー」
「………………うるせぇ」
カイルは、顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
そんな和気あいあいとした会話をしていたら、いつの間にかヘイムに到着した。
「よし、それじゃ宿は各自で。朝9時にここ集合だ」
「んーーー久々のヘイムだー!こないだは何も食べなかったから、今日こそは!」
こないだ――騎士学校でパトリチェフが離脱した時だ。
「それどころじゃなかったもんねぇ……」
リオネアは早速、自分の鼻を信じて美味しい匂いのする方へと歩き、ミレイユはそれについて行った。
入ったのは、酒場。なぜなら、肉の焦げるいい匂いが、リオネアの腹の虫を鳴かせたからだ。
「ミレイユはお酒禁止ね。怖いから」
「え~!飲まないけど~……その言い方酷い~」
そして、いつものようにリオネアが全てのオーダーを取り仕切る。
相変わらず、すごい量だった。
「いやー壮観ですな!いただきまーす!!」
「お、リオネアとミレイユ。ここで食ってたのか」
ローエンと、その後ろにカイルもいた。
「ほーへんはん!はいふはんほ!」
「ちょっと~リオネア~!食べてから喋って!」
「…………すごい食い意地だな。太るぞ」
「んぐっ…………デリカシー!デリカシーが無いぞお兄ちゃん!」
「お兄ちゃんって呼ぶな………」
「俺らも一緒にいいか?どうも席が空いてないようだ」
「かまいませんよ~」
ちらり、とローエンはミレイユの手元を見る。
「……今日は、飲んでないんだな……よかった」
「…………もしかして、私~、こないだ何か失礼を……?」
「いや……失礼とは感じていないが……」
前回の親睦会。酔ったミレイユは、リオネアとカイルを叱っただけにとどまらなかった。
ローエンに肩を組み絡む、リオネアを撫でまわす、カイルに無茶ぶりをする――普段の清楚さからは想像つかないほど、活発、もとい、乱れようだった。
「……………酷かったぞ。こないだ」
カイルは、素直にそうミレイユに言い放つ。
ごめんなさいっ!――とミレイユは顔を手で覆った。
「まぁまぁ、楽しい酒だったのは確かだ。いいじゃないか」
ミレイユが何よりも恥ずかしいのは、それを覚えておらず、反省のしようがないことだった。
そして翌朝。
「それじゃ出るぞ」
一行は、ヘイムの大きな門をくぐり、エメラニア王国の国境を出た。
「私、国を出るの初めてです!」
「薬草採る時出たじゃない~」
「あれ?……まあそうかもしれないけど、こうやって本格的に外にでるのがって意味!」
「一応、ここからは魔物が出る。気を張っておいてくれよ」
仲良さげに話す二人に、ローエンは軽く忠告する。
「……それで?現在地と目的地は?」
カイルがローエンの持つ地図を横からのぞく。
「現在地はここ、ヘイムの北西だ。目指すのは、この近辺。ミージャスとラーニア、エメラニア国境の中間点だ」
「なんでこんな何も無いところ…………」
「ミージャスとラーニアが今後国家として建ち、国土が大きくなることを恐れているんだろう。そうなれば、エメラニア王国は拡張しにくくなる」
「だから今のうち唾をつけておこうってわけか……」
「ラーニアもミージャスも、最近は交易が盛んだからな。まだ街だが、いずれ国家に成長するだろうさ」
「なになに?どうしたの?迷子?」
「………バカは気楽でいいな」
「なんだとー!やるか―?」
「…………そうだな。やるか」
え?と、そのローエンの一言に、リオネアは?マークを頭から出した。
「リオネアの実力を今のうち見ておきたい。俺と手合わせ出来るか?」
「あ、そういうこと?分かりました。お願いしますっ!」
Aランクのローエン、Eランクのリオネアは、手合わせの準備をした。
「いいぞ、どっからでも来い!」
「それじゃあ、お言葉に甘えてっ!!!」
リオネアは、深く踏み込み、一気に間合いを詰める。
(なるほど。速いっ)
ガチンっ!!という大きな音を立てて、ローエンは、リオネアの一撃を大盾で受け流す。
(かなり重いなっ。しかし素直過ぎる)
リオネアはその反動を使って再度斬撃を繰り出そうとする。
それを見越したローエンは、大盾の端を蹴り上げ、リオネアの柄を狙う。
リオネアは体勢を崩しかける。しかしそれを必死で踏ん張り、耐える。
そして、柄を小突く大盾ごと、大剣を振り下ろそうとした。
(力任せか。それなら)
ローエンも踏ん張り、剣と盾の力比べが始まる。
しかしさすがのリオネアも、これには勝てなかった。
押し切られ、そのまま後ろに倒されてしまった。
「勝負、あったな……」
ローエンは手を差し出す。
「ありがとうございました……」
息を上げるリオネアは、その手を取り立ち上がった。
「うん。体裁きも、力も申し分ない」
その言葉に、リオネアは手を挙げて喜んだ。
「ただし、剣筋が素直過ぎる。教科書通りだけでは、魔物は相手できない。どんな攻撃が来ても対応できるように、訓練が必要だな」
「はい!ご教示お願いします!」
こうして、道中は歩きながら、野営中は実戦形式で、リオネアはローエンに教えを乞いたのだった。




