1話 どうやら神になっちゃったみたいです
『ようこそ!狭間の世界へ!そしておめでとう!あなたは見事、創世主の権利に当選しました!』
――え?
『あ、その顔、惑っていますね?そりゃあ、その若さで、寝て起きたら死んでたんですから、当然の反応ですね』
――あの、え?死んでた?
『ええ。あなたは若くしてお亡くなりになられました。ゲームばかりして夜更かしした不摂生が祟ったのでしょう。可哀相に。その証拠にほら……』
目の前に、自宅が映し出される。親が大慌てで救急車を呼んでいる。そして酒とエナドリの缶が積まれた自室から、自分が運び出されていった。
死因は、心不全だそうだ。戒名され、小さな祭壇が作られ、自分の写真が飾られる。
ロクに大学にも行かず、部屋に引きこもってずっとゲームだのアニメだの見てたからなぁ……でも、まさか自分の葬式を見ることになるとは、不思議な気分だ。
――本当に、死んだんだ……そっかぁ……彼女も出来ずにかぁ……そっかぁ……。
『……お悔み申し上げます。しかし、あなたには第二の人生が待っていますよ!』
――そうなの?
『先ほども申し上げましたが、あなたは創世主に当選されました!世界を自分好みに作り、管理する大変面白味のある役割となっていますよ!』
――へぇ、箱庭系のストラテジーゲーム的な?
『そのとおり!お得意でしょう?』
――まぁ、嫌いではないかな。
『では、早速、創世主に転生しましょうか!それー!』
………………
…………
……
『これがあなたの、あなただけの世界です!』
目の前に、小さなマップが広げられている。
『この地図は拡大縮小が自由自在です。特定の人物を注目して近くで追う事も出来ますよ!』
なるほど。大きなディスプレイみたいなものらしい。
しかし、それよりも気になるのは、この冗談のように大きいキノコ型の、色分けされたボタンだ。
――この手前にあるボタンは?
『操作ボタンですね。左から、介入、救世主、再配置、そしてリセットとなっています。まぁボタンに書いてある通りですね』
――たった四つのボタンだけで世界を?
『物足りなく感じているようですが、案外神とはその程度の力ですよ!でも、それが意外と大きい!少し説明しますね……』
青の介入ボタンは、任意の教会を通じて神父または祈祷者に信託を授けられるボタン。
緑の救世主ボタンは、世界の危機を救う救世主を誕生させるボタン。
黄のリセットボタンは、救世主をリセットし即時に転生させるボタン。
そして赤のリビルドボタン……天変地異などで世界をおおよそ崩壊させ、リビルドさせるボタン。
とのことだ。
『世界設定はあなたが一から作ることが出来ますが……あまりに難しすぎるので、ある程度選択肢から選ぶ形を取っています。これは説明するより、実際やったほうが早いので、わからなくなったらそこにあるマニュアルを読んで下さい!あとはお一人での管理となりますが、何か質問は?』
質問は山ほどある。しかし、目の前のこの『ゲーム』を触りたくてウズウズしていた。
――特に無いです!やりながら覚えます!
『それでは良い世界を!』
そう言い、声の主は消えていった。
――さて、早速、世界を作っていきますか!
最初に出てきた選択肢は、時代設定だ。
古代、中世前期、中世後期、近代、現代、近未来、とある。
やはりここは――
――異世界ファンタジーの王道!中世で!面白そうだから、前期から行こう!
そして種族。これは複数選択式だ。知っている種族から知らない種族まで100種以上がそこには記されていた。
――うーん……多すぎても大変そうだな……よく知っている種族だけにしよう!
人間世界セットなるものと、亜人種をいくつか。それと魔獣を選択。
――ん?勇者と魔王……これも種族扱いなんだ。……ならポチっと。
次に出たのは、スタート時の国の数だ。0からどこまでも数字を伸ばせる。
――これは敵国の数ってことなのかな……よし、3つにしよう!
そして最終確認画面がでる。一通り確認し、いよいよ世界が創造される。
――まずマップを確認っと。
国は三つ。南西にエメラニア王国、南東にドレガルド王国、そして北端にネグ=サリアが建ったようだ。
――ん?このネグ=サリアっていう国……人間の国じゃないのか?
拡大してみると、いくつかの亜人がそれぞれ集落を持っていて、その一帯の総称としてネグ=サリアとされているようだ。
――ふーん。魔族も国を作るんだ……ちょっと予想外。でも人間ほど文明は無さそうだなぁ。頑張り給え亜人たちよ!さて、人間のほうはどうなっているかなぁ……
エメラニア王国を拡大する。
時代は中世前期というだけあり、街はまさにファンタジーそのものだった。
大きな城、立派な教会、賑わう露店、武器屋、そして魔道具店……
――おお魔道具!つまり魔法があるのか!!そうそうこれよこれ!異世界と言えば魔法!
俄然テンションが上がってきた。
次はドレガルド王国をみる。
基本的にはあまりエメラニア王国と変わりない街並み。しかしどことなく、エメラニアをヨーロッパ的なのに対し、ドレガルドはアラビアンな雰囲気があった。
――なるほどー。ちゃんと細分化されてるって訳だ。もっと国を増やしてたら、日本みたいな国も生まれたのかなぁ。見たかったなー侍……。
少しがっかり。
しかし、この世界の神は俺だ。ちゃんと導いていかなくては!
***
――飽きてきたな。
数十日、人間たちの生活を見守ってきたが、特に何かが起こるでもなく、ただその営みを高い位置で見守る日々……初めこそ全能感と優越感に浸れていたが、いい加減、臨場感が欲しい。
そう独り言ちていると、ふと画面端に気になるアイコンが目に入る。
――ん?これは……
早送りボタンであった。300倍まで時間を加速できるようだ。
――あるんじゃん早送りぃ!それポチっと!
最大送りで月日を進めて行く。数日をそう過ごしたが、やはりこれと言った変化はない。しかもそれ以上に、人の営みさえ早すぎて見えないので、本当につまらなかった。
つまらない。本当につまらない。
神的な力で、なにかこう、もっとドラマティックに出来やしないものか……
するとふと、キノコ型大きな緑のボタン――救世主ボタンが目に入る。
――これは、押すしかないな。
物は試しだ。大きく振りかぶって、殴るように強く押した。
チープなビーブ音が鳴り、マップには『勇者誕生』と書かれた矢印が南西、エメラニア王国ほうを指している。
――勇者誕生!さて面白くなりそうだ……な……?
そしてもう一つ。マップ上端に出ている表示に気が付いた。
『魔王誕生』――それは北端ネグ=サリアを指し示していた。
――え?魔王も誕生するの?救世主ボタンで?そういう仕様?
マニュアルを読むと、世界を救う救世主が誕生するとは書いているものの、勇者と魔王が同時発生するとは書いていない。
――うーんわからん……でもまぁ、勇者と言えば魔王!面白くって良いじゃないか!
とりあえず受け入れることにし、産まれたての勇者を24倍速で見守ることにした。
そして、時折等速にして勇者にまつわるエピソードを回収しつつ、過ごすこと16年――。
――おお!!!これが……勇者っ!
情熱的な赤の長い髪。優しさを帯びた緑の瞳。意思の強さを感じる眉。まだあどけなさの残る整った顔立ちに、豊満な胸!そして肉付きの良い尻!
彼女は、勇者として街から王都へ出発するところだ。大人たちにペコペコと頭を下げ、子供たちの声援に元気よく応えている。
――うわぁ、めっちゃ好み!!え?なに?超美少女じゃん!いい!すごく良いよ!
こうして、勇者リオネア・アルヴェリアは立ったのだった。
『世界均衡値:±0』




