第8話:スカウトはミノの香り
【夜・焼肉店『たまらんや』店内】 (ミノ先輩が「大事な話」を切り出そうとしたその時、店のドアが勢いよく開く。現れたのは、あの駅前のスーツ美女だった)
よい「もう、一人で先に来ちゃうなんて。……ここが例の『たまらんや』? 煙がすごすぎて、私のスーツが燻製になりそうなんだけど」
りむ「(トングを握りしめて)……っ! あんた……駅前の……」
ミノ先輩「……早かったな、よい。彼女は俺のビジネスパートナーだ。りむ、彼女にも一皿出してやってくれ」
りむ「はあ!? あーしはミノ先輩に食べさせたくて焼いてんの! ミノの繊維もわかんないような女に、あーしの『魂』は食わせられないし!」
よい「あら、元気なリーダーさんね。……でも安心して。私、味にはうるさいわよ? 建築も肉も、構造が大事でしょ?」
りむ(心の声:……ムカつく! なにその余裕! ミノ先輩と並んでると、マジで美男美女の設計士カップルって感じで……あーしの居場所、網の上くらいしかないじゃん……)
(りむは悔しさを堪え、無言でミノを焼き始める。しかし、その手つきは怒りでいつもより「鋭い」。トングが網に当たる音が、鋭い金属音を立てる)
ミノ先輩「……よい。無礼なことは言うな。彼女の隠し包丁は、1ミリの狂いもない芸術だ。……りむ、あっちで話していた『飲食店スペース』のことだが……」
よい「そう、本題はそれ。私たちのプロジェクトで、最高の焼肉ダイニングを作りたいの。……そこで、あなたをヘッドハンティングしたいのよ。バイトリーダーさん」
りむ「……え? ……引き抜き?」
よい「ミノ先輩が折れないの。君のトング捌きじゃないと、あのビルの顔になる店は任せられないって。……どう? 私たちと一緒に、新しい『ミノの聖地』を作らない?」
りむ「(ミノ先輩を凝視して)……ミノ先輩。……これ、ミノ先輩が言い出したことなの?」
ミノ先輩「……ああ。私の作った箱に、君の魂を込めてほしい。……よいは、そのための運営担当だ」
りむ(心の声:……なんだ。付き合ってるとかじゃなくて、仕事の話だったわけ? ……っていうか、ミノ先輩。あーしのこと、そんなに認めてくれてたんだ……)




