第6話:あーしの知らない先輩
【夕方・駅前のショッピングモール付近】 (バイトへ向かう途中のりむ。いつもの派手なファッションで歩いていると、人混みの中に、見覚えのある「シュッとした後ろ姿」を見つける)
りむ「あ、ミノ先輩じゃん。……って、え、隣、誰?」
(先輩の隣には、タイトなスーツを着こなしたモデルのような美女。二人は図面のようなものを広げ、顔を寄せ合って親しげに笑っている。先輩が、彼女の肩を軽く叩いた)
りむ(心の声:……は? 何あれ。あんな顔、店でも見せたことないじゃん。……あーしがミノ焼いてる時より、全然楽しそうなんだけど……)
(胸の奥が、ミノを焼きすぎた時みたいにチリチリと焦げる感覚。りむは声をかけられず、逃げるように店へ向かう)
【夜・焼肉店『たまらんや』店内】 (開店して1時間。いつものようにミノ先輩がやってくる)
ミノ先輩「……。りむ、いつもの『極厚』を。今日は特に空腹だ」
りむ「(トングをガチャン!と置く)……はいはい。お疲れ様っしたー。仕事、順調そうで何よりだね?」
ミノ先輩「……? ああ、大きなコンペに通ったんだ。……どうした、今日は火力が妙に強くないか?」
りむ「別にー? 先輩がリア充すぎて、網の温度上がってんじゃないの? ……さっき駅前にいた女の人、あーいうのがタイプなわけ?」
ミノ先輩「……駅前? ああ、見ていたのか。彼女は共同設計者の――」
りむ「いーし! 聞いてないし! 先輩が誰と何焼いてようがあーしには関係ないし! ほら、さっさと食べてよ。焦げるよ」
(りむは、先日もらったばかりの特注ブラックトングを乱暴に使い、ミノをひっくり返す。しかし、動揺して手が滑り、ミノが網の端へ転がってしまう)
ミノ先輩「(そっと自分のトングでミノを中央に戻す)……。……りむ。そんな焼き方、君らしくない」
りむ「……っ。……うるさい……。もう、今日はあーし、焼かないから! 自分で勝手に焼けばいいじゃん!」
(りむはキッチンへ逃げ込む。残されたミノ先輩は、網の上で一人寂しく焼けるミノを見つめ、小さく溜息をついた)
りむ(心の声:バカ、あーしのバカ。ミノに罪はないのに……。……あんな女、絶対ミノの繊維のことなんて、1ミリも考えてないクセに……!)




