第5話:トングに刻んだ誓い
【夜・焼肉店『たまらんや』店内】 (ミノ先輩が初めて来店してから、ちょうど1年。今や彼が店に入ってくれば、りむは「いらっしゃい」の代わりに無言で特製の塩ダレをセットし、先輩も当然のように自前のトングを抜くのが日常の風景になっていた)
りむ「うぃーす。先輩、おつ。今日でちょうど1年じゃん。あーしのスパルタ指導に耐えて、よく通い詰めたよね、マジで」
ミノ先輩「……もう1年か。……りむ。君に毎日ミノを焼かせた、私なりの月謝だ。受け取れ」
(先輩がカウンターに置いたのは、細長い黒い箱。開けると、そこには見たこともないほど洗練された、マットブラックのトングが入っていた)
りむ「えっ……待って、これトング? マジ? 超カッコいいんだけど! しかもこれ、あーしの名前、刻印されてんじゃん……」
ミノ先輩「建築用の強化チタン合金だ。熱伝導を極限まで抑え、指先の感覚がダイレクトにミノの繊維に伝わるよう、私が設計した。……世界に一本の特注品だ」
りむ「……特注って、先輩。あーしのために図面引いたわけ? ウケる、ガチすぎてたまらんわ、それ」
(りむは嬉しさを隠すように、新しいトングをカチャカチャと鳴らしてみせる。1年経って慣れたはずなのに、なぜか今日は手元が少しおぼつかない)
りむ「……ありがと。あーし、これマジで一生使うわ。……あ、そうだ。1周年だし、今日はあーしも気合入れちゃおっかな。店長に内緒で、仕入れから外してた一番ヤバい『ミノの芯』、出しちゃうし」
ミノ先輩「……ふっ。……楽しみにしている。……君の、最高傑作を」
りむ(心の声:……ヤバ。1年も一緒にいんのに、今更そんな顔で笑うのズルくない? ……このトング、ミノよりずっと重く感じるんだけど……!)




