第2話:火花散る網上のバトル
【夜・焼肉店『たまらんや』店内】 (ミノ先輩の前の網。炭火がパチパチと音を立てる。男が「幻のサンドミノ」をマイ・トングで網の中央へ鎮座させた)
りむ「ちょっ、待った! なんでそこに置くわけ? そこは直火が強すぎて、せっかくの脂が落ちちゃうじゃん!」
男「……素人は黙っていろ。このサンドミノは脂の層が厚い。強火で一気に表面をコーティングし、旨味を閉じ込めるのが正解だ」
りむ「はあ!? あーし、毎日何百枚このミノ見てると思ってんの? その焼き方じゃ外側だけ焦げて、中は生焼けで終了なんですけど!」
(りむが腰のベルトに差していた「リーダー専用トング」を抜き放つ。カチャリ、と鋭い金属音が響く)
男「……ほう。抜いたな、リーダーのトングを」
りむ「あーしの『たまらんや』で、ミノが泣くような焼き方は許さないし! ちょっとそこ退いて!」
(二人のトングが網の上で交差する。男が右へ動かせば、りむが左へ押し戻す。火花と煙の中で、トングがカチカチとぶつかり合う)
男「……粘るな。だが、この角度! 遠赤外線を最大限に活かすには、この15度が最適解だ」
りむ「それじゃあ、隠し包丁の隙間に熱が入んないってば! あーしが計算して入れた切り込み、ムダにしないでよ!」
男「(ハッとしてトングを止める)……切り込みの、深さ……?」
りむ「そうだよ! 焼くと花が開くみたいに広がるようにしてんの! ほら、見て!」
(りむがトングで優しくミノを転がすと、網の上でミノがパッと花開くように美しく反り返る)
男「……美しい。……私の計算を超えている。……君に、任せよう」
りむ「わかればいーの。……ほら、今! 食べて!」
(男が、りむが焼き上げたミノを口に運ぶ。……沈黙。咀嚼するたびに「コリッ、ジュワッ」と音が漏れる)
男「……たまらん。……この食感、まさに無限……」
りむ「でしょ? 完璧な焼き加減。……で、さっき名前聞いてシカトされたけど。あんた、こんなにミノに詳しいのに名前も教えないとか、マジスカしてるよね」
男「……名乗るような大層な人間ではない」
りむ「あーもう、わかった。じゃあ決めた。あんた、今日からあーしの中では**『ミノ先輩』**だから。異論は認めないし!」
ミノ先輩(仮)「……。勝手にしろ。……だが、君の腕は本物だ。……また来る」
りむ(心の声:……自分から『また来る』とか言っちゃって。……でも、あーしが焼いたミノでそんな満足そうな顔されたら、……なんか、調子狂うんだけど!)




