第18話:逆転の風!銀座に響くミノの咆哮
【昼・全国焼肉店祭り 特設会場】 (銀座のど真ん中、歩行者天国。カルビ・キングダムのブースは巨大なスクリーンと爆音のBGM、そして黄金のカルビを焼く煙で、凄まじい集客を見せている。対する『たまらんや』は、小さな1ブース。初日は圧倒的な差をつけられていた)
カルビ将軍「フハハハ! 見ろ、この行列を! 銀座の民が求めているのは、溢れ出す脂だ! お前の地味なミノなど、誰も見向きもしねえぜ!」
りむ「(汗だくでトングを握り)……くっ、あいつ……。サクラまで使って行列作ってんじゃないわよ!」
ミノ先輩「……落ち着け、りむ。計算通りだ。……初日は物珍しさで流れるが、二日目の今日は、銀座特有の『ビル風』が北西から吹く。……今だ。仕込んだアレを投入しろ」
りむ「了解! ……あーしの1年間の想い、この香りでぶつけてやるし!」
(りむが網の上に、特製の「焦がしネギ味噌ダレ」に漬け込んだ極上ミノをドカッと乗せる。瞬時に、鼻をくすぐる香ばしく、どこか懐かしい、そして食欲を狂わせる香りが会場中に広がった)
ミノ先輩「……私の設計したこの特製ダクトが、香りの粒子を一番遠くまで、最も魅力的な濃度で運ぶ。……ターゲットは、カルビの脂に胃がもたれ始めた中盤の客層だ」
(その香りにつられ、一人、また一人とカルビの列から客が離れ、『たまらんや』の前に集まり始める。一口食べた客たちの目が、見開かれる)
客「……何これ、コリッコリなのに噛むと溶ける! 全然重くないし、無限に食べられる……! これこそ、たまらん!」
りむ「でしょ! これがあーしの、そして『たまらんや』の魂だし! どんどん焼くから、しっかり味わいなよ!」
(二日目の夕方には、『たまらんや』の前には会場を半周するほどの大行列が。焦るカルビ将軍。りむは忙しさの合間に、隣でテキパキと注文を捌くミノ先輩を見る。黒髪にしたあーしを、一度も目を離さず支えてくれるその横顔)
りむ(心の声:……先輩。あーし、今なら言える気がする。……この勝負に勝ったら、今度こそ、逃げさせないんだから!)
カルビ将軍「おのれ……! なぜだ! なぜマヨネーズたっぷりの黄金カルビが、そんな地味なゴムみたいな肉に負けるんだ!」
りむ「……ゴムじゃないし! これは『食感の芸術』! あんたみたいに脂で誤魔化してる奴には、一生かかっても出せない味なんだから!」
(最終日の集計。会場の大型モニターに、ついに最終売上と満足度投票の結果が映し出される。……1位の欄に輝いたのは『たまらんや』の文字だった)
カルビ将軍「バ、バカな……! 俺の5億の投資が、あんな小さなブースに……っ!」
ミノ先輩「(静かに眼鏡を上げながら)……将軍、君の負けだ。君は『銀座の胃袋』を計算に入れていなかった。……洗練されたこの街の人々が最後に求めるのは、過剰な装飾ではない。……彼女が焼く、嘘偽りのない、純粋な『職人の味』だ」
りむ「……店長! 見てた!? あーし、銀座で一番になったし!!」
(崩れ落ちる将軍。沸き立つ観衆。その喧騒の中で、りむはトングを置き、隣で静かに微笑むミノ先輩に向き合った)
りむ「……ねえ、ミノ先輩。あーし、勝ったよ。……これで、あーしの店も、あーしの居場所も、誰にも文句言わせない。……だからさ、もう保留はナシだよ?」
ミノ先輩「……。……ああ、わかっている。……君が黒髪に変えて、1年も待ち続けてくれたこと。そして今日、この素晴らしい景色を見せてくれたこと。……私の設計図には、もう君以外の住人は存在しない」
りむ「……(顔を真っ赤にして)……だったら、早く言いなよ! あーしのこと、好きなの!? どうなの!?」
ミノ先輩「(一歩近づき、りむの耳元で囁く)……愛している。……君という存在が、私の人生における唯一の、完成されたデザインだ」
りむ「……っ!(あまりの直球にフリーズ)……もー、バカ! ……あーしも、大好きだし!」
(祭りのフィナーレの拍手の中、二人は誰にも見えないブースの陰で、そっと手を繋いだ。それはミノの焼き加減よりも、ずっと熱い誓いだった)




