第17話:嵐の祭典!ミノvsカルビ
【夜・銀座『たまらんや』店内】 (カルビ将軍が去った後、静まり返った店内で、りむは机に置かれた派手なチラシを見つめていた)
りむ「……ちょ、待って。これって来週の『全国焼肉店祭り』じゃん! 銀座の特設会場で開催される、1年で一番売上が出るお祭り……。あいつ、これに乗っかって勝負しろって言ったわけ!?」
ミノ先輩「(チラシを手に取り)……そのようだ。公式ルールでは『3日間の総売上』と『客の満足度投票』で順位が決まる。……カルビ・キングダムはすでに10ブースも確保している。圧倒的な物量作戦だ」
りむ「10ブース!? ズルくない!? こっちは『たまらんや』の看板一枚で勝負しろっての?」
ミノ先輩「……数で勝負する必要はない。……りむ、君のミノには『リピート率100%』の構造がある。将軍のカルビは一口目のインパクトだけだ。……問題は、どうやって一万人規模の客を、この地味なミノの匂いで引き寄せるか……」
(突然の雷鳴とともに、店内の照明がパッと消えた。ゲリラ豪雨による停電だ)
りむ「きゃっ! ……もー、最悪。今から秘伝のタレを仕込もうと思ってたのに……。ねえ先輩、どこ? 暗くて何も見えないし……」
ミノ先輩「……ここだ。動かない方がいい。……足元にトングの予備が落ちている」
(暗闇の中、手探りで動くりむの手が、不意にミノ先輩の温かい手に重なる。1年前、あんなに「ギャルが苦手だ」と言って避けていたはずのその手が、今は力強く、りむの手を握り返した)
りむ「……先輩……。……あーし、本当はちょっと怖いよ。もし負けて店を取られたら、店長にも合わせる顔ないし……先輩とも、こうして会えなくなっちゃうのかなって」
ミノ先輩「……馬鹿なことを。……私が設計したこの店も、君の居場所も、他人に譲るつもりは1ミリもない。……たとえ世界中がカルビを求めても、私は君が焼くミノだけを評価し続ける。……それが、私の人生における唯一の『正解』だからだ」
りむ「(暗闇で赤くなる顔)……それ、ズルい。……そんなこと言われたら、あーし、負けるわけないじゃん」
(雨音だけが響く店内で、二人の距離が1年前よりもずっと近く、重なり合う。……翌朝、電力が復旧したとき、りむの瞳には迷いなど一欠片も残っていなかった)




