第15話:構造不明な恋心
【夜・銀座『たまらんや』店内】 (営業終了後。りむはカウンターで、ミノ先輩に新作の「塩ミノ」を振る舞っている。再会してからというもの、先輩は毎日来るし、距離も近い。なのに、肝心の一言が出てこない)
りむ「……ねえ、ミノ先輩。あーし、ずっと気になってんだけど。先輩、さっきから『たまらん』とか『理性が崩壊』とか言ってるけどさ……。結局あーしのこと、どう思ってんの?」
ミノ先輩「(ミノを咀嚼しながら)……どう、とは。言葉の通りだ。君が焼くミノ、そして君という存在が、私の生活設計における『不可欠な基柱』になっている」
りむ「……だから! その『基柱』って何よ! 普通に『好き』とか『彼女になって』とか言えないわけ!?」
ミノ先輩「……それは、非常に難しい問題だ。建築において、安易な補強は全体のバランスを崩す。今の私たちの、この『極上のミノを介した緊張感のある均衡』を、安易な定義で固定していいものか……」
りむ「(トングを机にドン!と置く)……あーし、めんどくさい構造計算の話なんて聞いてないし! 1年も待たせて、清楚にイメチェンまでさせたんだから、そこはバシッと決めなよ!」
ミノ先輩「……。……だが、君のその黒髪のシルエットと、時折漏れる『あーし』という力強い一人称のギャップを前にすると……私の語彙という建材が、すべて砂のように崩れ去るんだ」
りむ(心の声:……もう、この人マジで重症! 褒めてんのはわかるけど、肝心なところが全然繋がってないんだけど!)
りむ「……もういい! 先輩が言わないなら、あーし、明日はまた金髪に戻して、ギャル全開で店出るからね!」
ミノ先輩「(ガタッと立ち上がる)……それは困る。……いや、困るというより、私の視神経が耐えられない。……待ってくれ、りむ。……私は、君を……」
(先輩が、カウンター越しにりむの肩を掴む。真剣な眼差し。ようやく「その時」が来るかと思った瞬間――)
???「お取り込み中、悪いわねぇ!」
(店のドアが勢いよく開き、派手な金色のジャケットを着た男と、ボディガードたちが乱入してくる。向かいの『カルビ・キングダム』のオーナー、通称・カルビ将軍だった)
カルビ将軍「こんなジメジメしたミノの店、今日で終わりにしてもらうぜ! 銀座に必要なのは、脂と黄金だ!」
りむ「……はぁ!? 今、いいとこだったんだけど! どっからどう見てもお呼びじゃないし、さっさと帰ってくんない!?」




