第14話:恋の再構築、設計ミス?
【夜・銀座『たまらんや』店内】 (再会から数日。ミノ先輩は、失った1年を取り戻すかのように毎日店に現れるようになった。カウンターの隅、かつての定位置で彼は、黒髪になったりむの動きを、穴が開くほど見つめている)
りむ「……ねえ、ミノ先輩。さっきから見すぎだし。図面引けなくてミノ不足だったんじゃないの? 手、動いてないけど」
ミノ先輩「……。……ああ、失礼。君のその……黒髪の光沢と、網の上で踊るミノの脂の輝き。その二つの反射率を計算していたら、つい時間がな」
りむ「もー、相変わらず褒め方が理屈っぽいんだってば! ほら、焼けたよ。はい、あーん……って、あ」
(1年前の「清楚作戦」の名残で、つい無意識にトングを先輩の口元へ運んでしまうりむ。以前のギャル時代なら勢いで流せたが、今の清楚な見た目での「あーん」は、破壊力が違った)
ミノ先輩「(顔を真っ赤にしてフリーズする)……。……あ……」
りむ(心の声:……ヤバ。今のあーしの格好でこれ、マジで新婚さんみたいじゃん。……恥ずい、恥ずすぎるし!)
りむ「……な、なによ! 食べないならあーしが食べるし!」
ミノ先輩「(慌ててりむの手首を掴む)……待て、食べる。……私が、食べる」
(手首に触れる先輩の指先。1年前よりもずっと熱く、力がこもっている。二人の視線が至近距離でぶつかり、店内の換気扇の音さえ遠くなる)
ミノ先輩「……りむ。……私は大きな設計ミスをしていたようだ」
りむ「……は? どこが? 排気システム、壊れてないけど」
ミノ先輩「……私の心の防壁だ。派手な女性が苦手だと言ったが……今の君を直視すると、それ以上に理性が崩壊していく。……君の『あーし』という言葉が耳に届くたびに、脳内の構造計算がすべて白紙に戻されるんだ」
りむ「……それって、今のあーしなら……『あり』ってこと?」
ミノ先輩「……あり、どころではない。……たまらん。……今の私は、君という劇薬なしでは、もはや生きていけない体に改築されてしまったようだ」
りむ「(顔を真っ赤にして)……な、何よそれ! 告白ならもっと普通に言いなよ! バカ!」
(りむは照れ隠しに、一番火力の強い網の上にミノを叩きつける。激しく上がる炎が、二人の熱くなった顔を赤々と照らしていた)




