彼岸の宿
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本作は、華やかな表舞台に立つ女優たちが、ふとした瞬間に世界の「裂け目」へと迷い込み、逃げ場のない官能と恐怖に呑まれていく姿を描いた物語です。
誰もいないはずの山道、湿った苔の匂い、そして理性を溶かす熱い源泉。
彼女たちが辿り着いた先にあるのは、救いか、それとも永遠の絶望か。
耽美で残酷な「残響」の物語を、どうぞ最後までお楽しみください。
序章:黄昏の迷い道
**一条結月**がハンドルを握る車は、まるで何かに導かれるように、ナビにもない獣道へと入り込んだ。
ガツン、と床下で鈍い音が響いた気がしたが、車は音もなく滑るように進んでいく。
「結月さん、ここ……本当に道ですか?」
**白川雫の問いに、一条は答えない。バックミラーに映るその瞳は、焦点が合わず、どこか遠くを見ているようだった。
ふと後ろを振り返ると、後部座席の里中瑞希と凪咲陽葵**は、重なり合うようにして深く眠っていた。声をかけても起きる気配はなく、その顔色は蝋人形のように白い。
(みんな、疲れてるんだな……)
辿り着いたのは、湿った苔の匂いがする古い民宿。
管理人の男は顔色が悪く、影のように薄い。女将は妙に血色が良く、その笑顔は張り付いた仮面のようだった。
「おやまあ、若い娘さんが4人も……精がつくだろうねえ」
その意味深な言葉と共に、重たい引き戸が、ギギィ……とまるで怪物の口のように開かれた。
第一章:肉感の湯
「まずは裸になりましょ。全部、脱いで」
里中瑞希の言葉には、奇妙な強制力があった。湯気で視界が白む大浴場。4人は一糸まとわぬ姿となり、ぬるりとした源泉に浸かる。
「やっぱり、結月さんの身体、すごい……」
瑞希が、一条の豊かな胸に背後から手を回し、重量感を確かめるように乱暴に揉みしだいた。
「んっ、あっ……瑞希ちゃん、強い……っ」
「だって、こんなに柔らかいんだもん。ねえ、雫も陽葵ちゃんも、恥じらってないで見せてよ」
瑞希は抵抗する凪咲陽葵の手首を掴み、自分の方へ引き寄せると、自身の胸を陽葵の未成熟な胸に強く押し当てた。
むにゅり、と濡れた皮膚同士が潰れる音が響く。
「ほら、擦り合わせると気持ちいいでしょ? 乳首、硬くなってるよ」
瑞希の指先が、陽葵の敏感な突起を執拗に弾き、摘み上げる。陽葵は快感と羞恥で顔を真っ赤にし、「ひぁ……っ、変な感じ……っ」と声を漏らす。雫もまた、逃げ場のない湯の中で、彼女たちの熱気に当てられ、自身の身体が火照るのを止められなかった。
第二章:壊れる夜
夕食の酒には、何か媚薬のようなものが混じっていたのかもしれない。
部屋に戻った時には、4人の呼吸は荒く、眼差しは獣のようにギラついていた。
「……我慢できない」
普段は冷静な一条が、浴衣の前をはだけさせ、真っ赤な顔で凪咲陽葵に覆いかぶさった。
「ゆ、結月さん……? 重い、です……」
「陽葵ちゃんが可愛すぎるのがいけないの。……じっとしてて」
一条の手が、陽葵の太ももの内側を割り開き、露わになった秘所へと滑り込む。
「あッ!?」
陽葵がのけぞる。一条の細長い指は、濡れた粘膜を躊躇なく蹂躙し、敏感な場所を正確に擦り上げた。
「あっ、あぁっ! 結月さん、そこ、だめぇ! おかしくなるぅ!」
「いいの、おかしくなって。……こんなに濡らして」
クチュ、クチュ、と卑猥な水音が部屋に響き渡る。一条は陽葵の唇を奪い、舌を絡ませながら、指の動きをさらに激しくした。陽葵の瞳が白目をむきかけ、涎が口端から垂れる。
「ひぎぃっ、イくッ、イっちゃううう!!」
そのあられもない痴態を見て、里中瑞希は手を叩いて大喜びしていた。
「あははは! すごいすごい! 結月さんエロすぎ! 陽葵ちゃんも壊れちゃった!」
瑞希は自分の浴衣も脱ぎ捨て、全裸で悶える二人の横で、自身の身体を愛撫しながら、ギラギラした目で次の獲物を探した。
「……雫」
第三章:凍りつく視線
「ひっ……!」
雫は後ずさったが、壁際まで追い詰められた。
四つん這いで迫る瑞希の姿は、もはや人間ではなく、発情した猫のようだった。
「雫も、こっち側においでよ。気持ちいいこと、もっとしよ?」
「嫌っ! 瑞希さん、正気に戻って!」
瑞希の手が雫の股間に伸び、強引にこじ開けようとする。雫は必死でその手を振り払い、瑞希の肩を突き飛ばした。
「いい加減にして!!」
その叫び声が響いた瞬間、世界が止まった。
一条の指も、陽葵の痙攣も、瑞希の笑みも。
――ピチャリ。
何かが垂れる音がした。
雫が恐る恐る入り口を見ると、襖が全開になっており、そこには管理人と女将が立っていた。
二人は、乱れきった4人の痴態を、瞬き一つせず見つめていた。
「…………」
「…………」
その目は、白目がなく、すべてが黒い闇だった。
彼らの視線は、「人間を見ている」のではなく、「これから回収する肉塊」を見定めているようだった。
ゾッとした雫は、動かなくなった三人を揺さぶった。
「みんな! 起きて! ここはヤバい! 逃げなきゃ!!」
しかし、一条の身体は氷のように冷たく、陽葵は虚ろな目で天井の一点を見つめたまま。瑞希に至っては、止まったままの笑顔で涙を流していた。
管理人の口が耳元まで裂け、闇が雫を飲み込もうと迫る。
『――ず! ……雫!!』
終章:生還
「ハッ!!!!」
白川雫は、ベッドの上で飛び起きた。全身が冷や汗でぐっしょりと濡れている。
「雫……っ! よかった、やっと目が覚めた……!」
隣で手を握りしめていたのは、**八神 栞だった。彼女の大きな瞳からは大粒の涙が溢れ、雫の顔を見て崩れ落ちるように泣き出した。
「栞……? 痛い、体が……」
激痛と吐き気が襲う。そこは、集中治療室だった。
「……気がついたのね」
低い声がして顔を向けると、黒いスーツを着た成瀬 真琴**が、壁に寄りかかって立っていた。その表情は、疲労と絶望に満ちていた。
「真琴さん……。みんなは? 結月さんは? 瑞希さんは? 陽葵ちゃんは?」
雫の問いに、成瀬は視線を逸らし、震える声で告げた。
「……即死だったわ」
成瀬の言葉が、雫の胸を抉る。
「一条さんの運転ミスで、車ごと崖下に……。雫、あなただけが奇跡的に助かったの」
雫の脳裏に、あの部屋での淫靡な光景が蘇る。
一条の冷たい指の感触、陽葵の絶頂の悲鳴、瑞希の狂気。
あれは、死にゆく脳が見せた「最後の快楽の夢」だったのか。それとも、あの世へ連れて行こうとする仲間たちの誘いだったのか。
「う、うあぁぁぁぁぁぁッ!!」
雫は頭を抱え、獣のような慟哭を上げた。
病室の白い天井には、あの民宿の湿ったシミのような影が、ぼんやりと浮かんでいるような気がした。
(完)
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
雫だけが生き残ったあの事故。
集中治療室の白い天井に見えた「湿ったシミ」は、果たしてただの幻覚だったのでしょうか。
次回より、物語はさらに深い深淵へと突き進む第2作目へと続きます。
事故の裏側に隠された、女優たちの「真実の夜」と、23章に及ぶ壮絶な魂の彷徨——。
彼女たちの絶叫が、まだ耳の奥で鳴り響いています。
第2作目にて、またお会いしましょう。




