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黒薔薇の聖騎士 ー光より来りて闇を抱くー  作者: 霞灯里
第1章 黒薔薇の咲く丘

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第8話 大聖堂の祝福

さて、初めての教会で実地訓練だ。胸がどきどきする。


「いやっ、いやよっ!離してー!あっちの馬車に乗るってばぁ!」

「ダメですお嬢様、今日は絶対に帰って頂きます!」


恒例の強制送還されるジェシカを横目に、

ぼくは母さまと執事とともに、白馬が引く純白の馬車へと乗り込んだ。


「か、かっこいい……!」

御者は領地の騎士。さらに四人の騎士が護衛として並走する。

街に下りること自体が珍しい僕には、もう冒険気分である。


母さまは時折、思いついたように教会へお勤めに行き、

お昼には必ず帰ってきて僕たちと昼食をとる――それが日常だった。

だからこそ、ぼくはずっと不思議に思っていたのだ。

「特別司祭」って、何をする人なんだろう?


馬車は丘を下りて街へと向かう。

白い馬車が朝陽を浴びて、まるで聖者の行進のようだ。


そして――。


丘の下にそびえ立つそれを見た瞬間、ぼくは息をのんだ。


ノルヴェルン大聖堂。


白亜の塔がいくつも連なり、空へ溶け込むほど高く伸びている。

金と青のステンドグラスが陽光を受けて、宝石のように神々しく輝いていた。


母さまは白と金糸の刺繍が施された司祭服をまとい、

肩まで流れる銀の髪が、光の粒が反射してふわりと舞っている。

――まるで、女神さまみたい。


大聖堂に近づくにつれ、ぼくは異常に気が付いた。


「な、なにあれ……人が……」


大聖堂の前の広場に、大勢の人々がひしめいていた。

ご老人、赤子を抱く母親、怪我をした冒険者、商人、町娘……

老若男女、ありとあらゆる人たちが教会とその門前を埋め尽くしている。

人、人、人。その数、ざっと――数百人?!


馬車が近づくと、彼らの視線がぎらりと一斉にこちらを向いた。

そして、低くざわめきが走る。


「……奇跡さまだ……!」

「お戻りになられたぞ……!」


ぞくり、と背筋が震えた。

なにこれ、こわい!


馬車が止まり、執事が先に降りて母さまへ手を差し伸べる。

母さまがゆるやかに外に出た、その瞬間――


「おおおおっ……!」

「奇跡……、奇跡様だっ」

「ああああっ……!」

「おおおおっ……ふぐぅ」

「ありがたや、ありがたや……!」

「聖女さま……!」


轟くような歓声と祈りの声。

人々が一斉に膝をつき、両の手を胸の前で組んで祈りを捧げ始めた。

地面に額を押し当てる者、涙を流し嗚咽する者。

包帯を巻いた者、杖をついた老人……

その光景は、神聖な絵画を現実にしたようだった。


「…………!?」 

ぼくは口を開けたまま固まってしまった。


そして、浮世離れしたその道を歩く。

 

人々に囲まれた大聖堂へと続く道の中ほどで、母さまはふと立ち止まり、

小さくため息をついた。


「……はぁ」


その鈴の音で、周囲はまるで魔法のように静まり返る。


母さまは胸の前で両手を結い、そして天を指すように指先を掲げた。

皆がその指先を見上げる。

そして、やわらかく微笑みながら言葉を紡いだ。



「皆さまに、祝福を」

――その瞬間、世界が光に包まれた。


 

母さまの指先からあふれ出た光は、

無数の星々のように空へ舞い上がり、きらきらと輝く。

やがて昇った光は星屑のように大聖堂の周囲一帯に降り注ぎ、包み込んだ。

頬に触れた光は温かく、甘い香りがした。


「おおおお……!!!」

「腰の痛みが……消えたぞぃ……!」

「あなた、この子の熱が引いたわ!」

「傷が……治っていく!」

「あああっ、ありがたや、ありがたや……!」


まるで奇跡が雨のように降り注いだようだ。


歓声が爆発する。

涙、感謝、笑顔――感情が溢れている。


ぼくは呆然とその光景を見つめ震えながら、ぽつりと漏らした。


「な、なあに、これぇ……」

「早く行きましょう~」

「は、はいっ」


ぽっかーーーんとしてる僕は母さまに手を引かれ、ふらふらと大聖堂の中へ向かう。


「……あっ」

「え?」

「しまったわ~今日の患者さん、みんな治しちゃったかも~」

「……」

「ステラの実地訓練できないかもね~」


……母さま、ゆっるーい。


大聖堂の入口横では、シスターたちが大きな木箱の前で声を張っていた。

「ご献金はこちらでーす!そのあたりに置かないでくださーい!」


木箱がお金で溢れている……。

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