表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒薔薇の聖騎士 ー光より来りて闇を抱くー  作者: 霞灯里
第1章 黒薔薇の咲く丘

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/47

第5話 伯爵家の食卓(上)

香ばしい肉の匂いと、湯気の立つスープの香りが、食堂いっぱいに広がっていた。

うちの晩餐はいつも賑やかだけど、今夜はいつにも増して豪華だ。


だって今日は――妹、メルティアの八歳の誕生日。

白銀の髪に青い瞳。まるで母さまをそのまま小っちゃくしたような天使。

……まぁつまり、僕にも似ている。うん、自覚はある。


「メルティア、八歳のお誕生日おめでとう!」

「おめでとう~!」


父さま――エリオスの声で、晩餐が始まった。

家族が笑って手を合わせる光景に、胸の奥がじんわり温かくなる。


エリオス・エルディア。

“蒼風の君”の二つ名を持つ聖騎士。ノルヴェルン伯爵家現当主。

金髪碧眼、優雅な立ち居振る舞い、澄んだ声。まるで物語から抜け出した王子様。

我が父ながら、かっこよすぎて反則である。

王都では知らぬ者がいないほどの有名人らしいが、

「子どもたちの教育と領地経営に専念したい」とか言って、華やかな舞台をキッパリ降り領地を継いだとか。


そしてその隣――母さま、セレナ・エルディア。

“ノルヴェルンの奇跡”なんて呼ばれてる、我が家の女神。

白銀の髪に透き通る肌、宝石みたいな瞳。柔らかな笑顔を向けられると、それだけで世界が平和になりそうだ。

綺麗で、優雅で、やさしくて、ふんわりしてて……包容力の塊。いや、胸だけじゃなくて、全部が包容力。


国内唯一の“上級聖魔法”の使い手で、聖王庁の特別司祭という肩書きまである。

けど母さまがすごいのはそれだけじゃない。

この人の周りでは、日常的に不思議なことが起きるんだ。


たとえば――誘拐事件に巻き込まれた時。

父さまが助けに行ったら、盗賊たち全員が泣きながら母さまに祈りを捧げていたとか。

公園に座ると小鳥や小動物が群がり白百合の花が咲くとか、

湖に落ちたら“聖遺物”を拾ってきて、その湖が聖水化したとか……沢山ありすぎて意味が分からない。


そういった沢山の奇跡を巻き起こし、ついには「この人、もしや聖女では?」って国中がざわついた。

その結果――王都で“聖女裁判”まで開かれたらしい。魔女じゃなくて、聖女の方。

結局は「証拠なし」で無罪放免(?)になったけど、以来“聖女と疑われるほど神聖で尊き人”として周知されてしまったらしい。

……母さま、やっぱり規格外。


そんな彼女をめぐって王侯貴族たちがこぞって求婚合戦を始めたのだが――

全部ぶっちぎってで勝ち取ったのがうちの父さま。

まだ十歳のときに、平民だった母さまへまさかのプロポーズ。

「僕は必ず君にふさわしい男になる。だから、その時は僕と結婚してほしい」

――うん、もうこの時点でロマンチック主人公ムーブ。


その日から、父さまは勉学・武・礼儀・政治――あらゆる面で一切の妥協を捨てたらしい。

そして“蒼風の君”と呼ばれるほど成長した父さまは本当に彼女を迎えに行き、

文字通り風のようにさらって結婚式を挙げた。

……そりゃ国中の乙女たちも黄色い歓声あげるわ。


そんな“王子様と聖女”みたいな二人が、どうしてこんな辺境に引っ込んでいるのか?

理由はいたってシンプル。


「子どもたちを、喧騒のない場所で自由に育てたい」


……はい。国にわがまま通したらしい。すごい。


でも――目の前で笑い合う家族を見てると、分かる気がする。

この空気、この時間。

 

世界でいちばん尊い“奇跡”は、ここにあるんだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ