第56話 入学式と望まぬクラスメイト
活動報告にキャラクターヴィジュアルイメージを掲載し始めました。最近ハマってる流行りのAI生成イラストです。作風コロコロ変わると思います。都度更新予定です、もしよければご覧下さい。
姉さまとレオセルさんの二人に案内されながら、ぼく達は入学式が行われる講堂へと向かっていたのだけれど、その道中ずっと感じていたのは周囲から向けられる異常なまでの視線だった。姉さまに会う前にも感じてたけど、今はそれよりも断然多い。遠巻きに観察されているような感覚に陥る。
僕らの歩む道は綺麗に裂けて、両脇に立つ生徒たちは様々な感情を帯びた瞳でぼく達を見つめ、ひそひそと声を潜めて小声で話している。ときおり羨望の瞳で惚けた表情を浮かべたり、畏れるように距離を取ったりしていた。
未だにこの状況を理解しきれていないぼくは、小声で姉さまに尋ねた。
「姉さま、会長って何ですか?」
すると姉さまは、まるで今日の天気でも話すかのような気軽さで、何てことでもなさそうにさらりと言った。
「えーと私、今年から聖騎士学園の生徒会長になっちゃったの」
「え――――!?」
「お姉様、流石ですわ!!」
ぼくは思わず声が裏返って、隣ではジェシカが尊敬の眼差しを向けた。
流石というか何というか、凄いけど!そういう大事な事は教えてよ!そんなとこまで父さまに似ないで!!
そんなぼくの混乱など気にも留めず、姉さまは再びさらりと続けた。
「彼は副会長のレオセル、ちょっと変わってるけどいい人よ?」
紹介されたレオセルさんはフッと口元を歪め、如何にも悪者然とした不敵な笑みを浮かべると、指先で眼鏡の真ん中を押し上げた。その瞬間、陽の光を受けたレンズがキランと光り、いかにも危険人物ですと言わんばかりの演出が完成する。
「弟君、困ったことがあれば俺に言え……あんなゴミ共すぐに処理してやる」
「はっ、はぁい……」
低く囁くような言葉に、反射的に返事をしてしまうぼく。
「やめなさい!」
「はいっ!」
姉さまの鋭い一声に、嬉しそうに返事するレオセルさん……。今見ている現状が本当に理解できないんだけど。今度は叱られて嬉しそうに尻尾振ってるように見える。
父さまにも気を付けるように言われていた、見るからにやばそうな南部辺境伯の次期当主を、明らかに手懐けてる姉さまがいるんですけど。ヴァルデオ家は謀反まで企む、国で一番危険な貴族でしたよね?なんか、本当に主人に忠実な大型犬に見える。なにこれ?
「姉さま……」
「うん?」
「帰ったら、ちゃんと言ってないこと、全部教えてね……?」
「……?いいよ?」
疲れたようなぼくの声に、姉さまは不思議そうに首を傾げた。昔からそうだ、天才には自分の凄さが理解できないらしい。凡人には驚愕な非常識も普通な事のように思ってしまうのだ。
「さっきのステラは中々かっこよかったわね!う~ん、六十点!」
「六十ですかぁ!?」
「もうちょっと、ぐいっと引っ張って!力強く、庇う様に!」
ジェシカにはいつもこうして注文つけられ、それをキラキラした期待の目でセフィに見られこくこくと頷ずかれてます。
広く巨大な講堂へ到着すると、そこには既に多くの新入生が集まっていた。聖騎士学園の生徒は左側、聖教学院の生徒は右側と分けられているようで、ぼくとセフィは一旦姉さま達と別れ、右側の席へ向かった。
空いている席にセフィと並んで腰掛け、少し間を置いてからぼくは彼女に声を掛けた。
「セフィ……、その、さっきは大丈夫だった?あんなことになって、ごめんね」
セフィは一瞬驚いたように目を丸くしたけれど、すぐにはにかむように柔らかく微笑んだ。
「全然大丈夫です!ステラが護ってくれてるし、私も強くなりましたから」
「そ、そう、良かった」
「いつもありがとう、ステラ」
ぱああっ、と花が咲くように眩しく微笑むセフィ。可愛らしくて溶けちゃいそうだ。
そうこうしていると、生徒で殆どの席が埋まり入学式が始まった。二校の校長から話があり、退屈で眠く感じながら欠伸を噛みしめ眺めていた。意識が少しずつ遠のいていく。
――そんな時だ、司会の声が講堂に響く。
「生徒会長の御挨拶、聖騎士学園アンリエート・エルディア」
生徒代表の挨拶で姉様が凛と登壇してきて、ぼくは一瞬で目覚めた。
だからそういうこと言ってよ、姉さま!そういうとこよ!大事なことよそれぇ!!
壇上へ歩み出た姉さまは、家での柔らかな雰囲気とは違い、凛とした威厳を纏っていた。その立ち姿だけで空気が変わる。ざわついていた講堂が静まり返り、全員の視線が自然と姉さまへ集まっていく。
そして姉さまは何の躊躇いもなく、堂々と語り始めた。その挨拶をセフィと一緒に熱心に傾聴した。
「新入生諸君、聖騎士学園への入学を歓迎する。君たちは今日、この国の未来を護る者としての第一歩を踏み出した。ここでは家柄も、過去の実績も関係ない」
「問われるのはただ一つ――何の為に剣を取るのか?そして、その剣を取る覚悟だけだ」
「剣とは誰かを傷つけるためのものではない、大切なものを護り抜くためにあるものだ。その意味を理解した時、君たちは本当の意味でこの学園の生徒となる」
「これから君たちは敗北も挫折も知るだろう。自分の未熟さに打ちのめされる日も来るはずだ。だが、それでも立ち上がれる者が聖騎士の高みに至る」
「聖騎士学園生徒会長として、そして一人の先輩として――君たちの成長を楽しみにしている」
語り終えた後、姉さまはフッと柔らかく微笑んだ。その瞬間、張り詰めていた空気が解けて、大きな拍手に講堂は包まれた。
……かっこいい姉さま。
帰ったら皆の前でもう一回言ってもらおう、絶対!
「生徒会長の御挨拶、聖教学院ミレーヌ・オリヴェリア」
続けて響いた司会の声に、ぼくは再び反応した。金色の長い髪をした綺麗なお姉さんが登壇してきて、ご挨拶が始まった。
「あれ、オリヴェリアってもしかして……北部辺境伯の家の人かな?」
「そうかも……?貴族の家名でしたね」
「そっか、ぼく達と同じ北部出身の人も当然いるよね」
入学に対して敵地に飛び込むような心境でいたぼくだけど、北部出身の人も居ることに肩の力が少し解けた。生徒会長の姉さまもいるし、謎に頼れそうなレオセルさんもいる。あと意地悪な学者、フィオルナさんも。
うん、そうだ。仲良くしてくれる人たちを大事にして、友達になろう!
入学式の残りは再び退屈で、再び船を漕いでいたら終わってた。
そしてこの後は、ぼくたちは聖教学院のクラスで始業式を行い今日は終了だ。聖騎士学園は複数のクラスがあるみたいだけど、聖教学院はたった一つのクラスしか無い。聖属性持ちの子供が如何に少ないか、分かるよね。
のんびりセフィと生徒の混雑をかき分けながらぼくたちの教室に到着し、中に入ると既に二十名程の生徒が居た。
――そして。
「………チッ」
一瞬だけ視線が合い、すぐに逸らされた。
そこには朝に揉めたオルフェルが、面白くなさそうに舌打ちと悪態をつきながら、取り巻きっぽい二人と席に座っていた。
やっぱいるよなぁ……。
取りあえず無視することにするけど、あまりに度が過ぎてぼく達に害をなすならコテンパンにやっつけよう。
そう、心に決めた。
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