第55話 入学初日に早速絡まれる
活動報告にキャラクターヴィジュアルイメージを掲載し始めました。最近ハマってる流行りのAI生成イラストです。作風コロコロ変わると思います。都度更新予定です、もしよければご覧下さい。
「いってらっしゃ~い、がんばってね~」
「帰ってきたら遊んでね~!」
見送ってくれる母さまとメルに手を振りながら、ぼく達はエルディア家の馬車に乗り込み学校へと向かった。二人は今日、別邸の庭園を手入れするみたい。精霊たちも別邸に大分馴染んでる様だ。
「あっ、見えて来たわー!もうすぐ着くわよ!」
「生徒が沢山いるね、皆新入生かな?」
王都の貴族街を眺めながら馬車に揺られて間もなく、鉄柵に囲われた噴水のある庭園が見えてきた。その庭園を挟み左右に聖騎士学園と聖教学院、二つの学校が並び立ち、その両校の正面に大きく厳かな講堂がある、とても広い敷地だ。
校門の前で馬車を降りて、三人で手を繋ぎながら学園に続く広い庭園を歩く。周囲には沢山の生徒が居て、チラチラと視線と囁きを感じる。ぼく達は何だかやけに注目されていた。まぁ、こんな美少女が二人もいるもんね。
「綺麗な庭園ね~、精霊たちも嬉しそう」
「母さまも学生の時この庭園が好きだったみたいだよ、よくここに居たみたい」
そうして噴水前まで歩いていくと、更に強い視線を正面から感じた。明らかにぼくたちを睨みつけ待ち構える者達がそこには居る。中心には金髪に整った顔立ちのリーダーらしき生徒がいて、その表情は酷く歪んでいて性格が悪そうだ。ぼくは、背中にセフィとジェシカを隠して、溜息をつきながら前に出た。
取り巻きの中から中心に居るその生徒が、一歩前に出てくる。
「お前がノルヴェルンの黒薔薇姫だな」
「そうだけど……誰?」
「俺はエクレシオ公爵家の次男、オルフェル・エクレシオだ」
早速現れたエクレシオ公爵家。初日から絡まれたんですけど!?
ぼくは冷静を装いながら尋ねた。
「で、何の用?」
「お前、調子に乗るなよ、只の成り上がり田舎貴族風情が!」
「は、はあぁ!?乗ってませんけど!」
会ったばかりで何!?ぼく何もしてないんですが!?
「おい、ディラン、お前も言ってやれ」
「………」
オルフェルとやらが隣に立つ、金の短髪に筋肉質で背が高く、生徒には見えないほど体格のいい男に顎を振った。威圧感のあるその男がぼくを見据えながら口を開く。
「お、お前……、お前は……」
「何?」
「お前、本当に、男なのか……?」
「はぁっ?」
はあああぁぁ!?何言ってんですかぁ!!
いきなりの暴言に一気に怒り心頭になって睨みつけるぼく。男子の制服着てるし、どこからどう見でも男でしょうが!髪長いけど!黒薔薇の髪飾りつけてるけど!
だけど睨みつけたディランとやらは、ポッと頬を染めながらじっくりぼくを見つめ返していた。何だか悪気の無い様子に毒気が抜かれ……それよりなんか悪寒がするんですけど!?
「お、おいディラン、お前何言ってんだ?」
「いや、し、しかし……」
「お前はヴァレオン公爵家の者だろうが!お前も言われてんだろ?こいつらを調子に乗らすなと」
「う、うむ」
なるほど、こっちはヴァレオンか。二大公爵家の者がぼく達を早速虐めに来たってわけだ。
「チッ……おいお前、病弱な欠陥王女と婚約しただけで、大層偉そうじゃねえか」
オルフェルはぼくの胸倉を乱暴に掴み、言い放ちやがった。
病弱な……欠陥王女……だと!?
その言葉を聞いて、プッツンきた。自分はまだしもセフィへの暴言は絶対に許せない。
掴まれながらマナを練ろうと指を動かした瞬間、目の端の地面にぴょこっと一輪の黒薔薇が生えてきた。
えっ?
そして、しゅんしゅんと蔦で素振りを始める黒薔薇に、若干焦りを覚える。
ね、ねぇ!?黒薔薇さん、まさか……!?
「お前は俺が潰して――ガッ!?」
ぼくの胸倉掴んだの許せないとばかりに、黒薔薇が振るった蔦はオルフェルの顔面をパコーンと激しく打ちつけ、彼は一回転してズザーッと地面に転がった。
突然の出来事にこの場の時が止まった。ぼくも彼らも唖然として見ている中、オルフェルは倒れたまま動かない。
……死んでない……??
派手な転倒にどよめきが広がり、徐々に生徒が集まり始めた。
ちょっと心配していたら、頭と鼻と口から血を垂らしつつガバッとオルフェルは立ち上がった。一先ず安心したけど、彼は怒り心頭の狂暴な顔で歯を剥いた。
「てっ、てめぇ、やりやがったなぁ!」
「暴言を吐いて、先に手を出したの君だけど、文句ある?」
睨み合うぼくとオルフェル。ざわざわと取り巻く生徒たちがどんどん集まってきた、その時だ。
ゾクリと背中に冷たいものが走る。
「おい、そこの、何をしている?」
「ッ!!?」
急に冷たい空気が流れ込んできた……!?
いやこれは、殺気?……本物の殺気だ……!!
生徒の集団が割れて、一人の生徒が整然とこちらへとやって来た。銀髪に深い蒼の瞳、理知的な眼鏡をかけた少し釣り上がった目の、いかにも悪そうなイケメン……。
貴族らしく端正と歩む彼のその瞳に捉えられ、怖気が走る。その強烈な殺気にぼくは公爵令息ともども体が勝手に小さく震え出した。
「貴様ら、入学早々元気だな、殺してやろうか?」
「お前は……!」
「――ッ!!?」
一層濃密な殺気がこの場を満たした。一気に周辺の温度が下がったような、いや、これは実際に下がってる――?よく見ると、彼の周りに水の精霊が飛び回っていた。
「レ、レオセル・ヴァルディオ……!」
冷や汗を掻いたオルフェルが呟いた言葉を耳に拾った。ヴァルディオ……この人が南部貴族を纏める辺境伯の次期当主……!?
本物の死と隣り合わせの戦場を知っているような、猛者の視線。初めて本当の殺気を感じ冷や汗が流れ、震えが止まらない。怖い、ほんとに怖い!
「おい、エクレシオにヴァレオン、公爵家の貴様らが大勢で一人にたかり、恥ずかしくないのか?」
「ぐっ……!きさまぁ……!」
………?あれ??
だけど良く感じて見れば、その殺気はこの二人の公爵令息に向いていた。
「いいだろう、醜いお前らはここで死ね、恥を晒すよりマシだろう?」
「ひっ、ひいい!」
レオセルが右手を掲げると、濃密なマナが掌へと集まり数多の氷の氷柱がその周囲に沢山創られた。
えっ、本当に殺そうとしてる!?
「産まれてきたことを後悔しながら、逝くがよ――」
「やめなさい」
「イッ!?」
パァアン!!
突如、颯爽と風のように現れた姉さまに、レオセルの頭が後ろから叩かれ前のめりに体が崩れた。そして姉さまは周囲を見渡してから、ぼくを見つけて微笑みを浮かべ歩いてきた。
「はい皆、解散!ステラ、彼の怪我を直してあげて」
「えっ?あっ、はい!」
「か、会長!」
手を叩きながら、てきぱきと指示し始めた姉さまの言葉に、思わず頷いちゃう。
「レオセル、あなたやりすぎよ、普通に止めなさい」
「お、俺は会長の弟君を守ろうと……!」
「やりすぎ」
「は、はい……」
………???
先ほどまでの殺気が噓のように消え去って、縮こまるレオセル。きゅーんと怒られた犬のような表情で、尻尾を丸めてるようだ。なんだかヴァルディオ家の怖い人が、姉さまに飼いならされてる様に見えるんですけど!?
そして姉さま、会長って何!?
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