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黒薔薇の聖騎士 ー光より来りて闇を抱くー  作者: 霞灯里
第3章 セレスティア聖教学院

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第54話 入学式の朝

活動報告にキャラクターヴィジュアルイメージを掲載し始めました。最近ハマってる流行りのAI生成イラストです。作風コロコロ変わると思います。都度更新予定です、もしよければご覧下さい。

王都の別邸の自室でぼくは鏡の前に立ち、今日から始まる新しい生活の象徴とも言える制服の襟元を整えながら、ほんの少しだけ緊張した面持ちで深呼吸をした。


白と紺を基調としたその制服は、触れただけでわかるほど滑らかな生地は細い銀糸が織り込まれており、朝の光を受けるとほんのりと品のある輝きを放つ。


上着は腰のあたりで軽く絞られた端正なシルエットのロングジャケットで、深い紺色の生地の縁には細い白のパイピングが施され、胸元には学院の紋章を象った刺繍が輝いている。


下には白いシャツと濃紺のベストを重ね、首元には細い紺のリボンタイを結び、動くたびに布が柔らかく揺れるのがどこか誇らしい。


「……うん、ちゃんと学生に見えるかな」


鏡の中の自分に小さく呟きながら、相変わらず長いままの髪を靡かせると、机の花瓶にいた黒薔薇さんがぴょこんと跳ねるように動き、いつもの定位置であるぼくの耳元へとひょいと乗り移った。


「おはよう、黒薔薇さん」


軽く耳元をくすぐられる感触に微笑みながら部屋の扉を開け、静かな廊下へ出る。


今日はついに入学式。王都での学生生活が、いよいよ始まるのだ。


まだ少しだけ朝の空気がひんやりと残る廊下を歩き、食堂へ向かうと既に整えられた朝食のテーブルが待っていた。席に座って待っていると、二階の廊下の方から足音が聞こえ、やがて扉が開いた。


そこから姿を現したのは、同じ学院の制服に身を包んだセフィとジェシカだった。


二人とも、本当に――驚くほど制服が似合っていた。


セフィの制服は、ぼくと同じ聖教学院仕様のものだ。紺のジャケットの胸元には、細い銀糸で刺繍された杖の紋章があり、白いスカートの裾には小さな紺のラインが二本走っている。淡い白銀色の髪が制服の上で柔らかく揺れ、神秘的な雰囲気を醸し出していた。


一方、ジェシカの制服は騎士科のもの。デザインは似ているけれど、胸元の刺繍が杖ではなく剣になっていて、肩の装飾も少しだけ重厚なものになっている。短めの紺のプリーツスカートと白いブーツがよく似合い、赤い髪を高い位置で結んだ姿は、勇ましい騎士の佇まいだった。


「二人とも……、き、綺麗だよ……」


思わず言葉が詰まりながら、ぼくは頬を少し赤くして続けた。


「なあに?何か言った?もう一回、大きな声で言って?」

「二人とも!綺麗!可愛いよ!!」

「もうっ、最初からちゃんと言いなさいよ!」

「ふふっ、嬉しいわステラ、ありがとう」


悪戯っぽく笑うジェシカに続いて、セフィもくすりと微笑んだ。顔が一気に熱くなるぼく。


聖騎士学園と聖教学院の制服は基本的に同じデザインだ。ただし胸元の紋章だけが違い、騎士科は剣、魔法科は杖で区別されている。


ぼくとセフィは杖、ジェシカは剣だ。学校に寮はあるけど、別邸がこんなに近くにあるから家族みんなでここで暮らしてる。もちろん、姉さまも一緒だ。


「学園って楽しいかしら?」


ジェシカは椅子に腰掛けながら、目を輝かせて言った。


「強い人いるかしら?いるわよね?王都だもの!きっとすごい人がいっぱいいるわよね!楽しみだわ!」


朝からものすごいテンションだ。


「王都には実戦経験のある貴族も多いって聞くわ。私、そういう人と戦ってみたいのよね」

「いるんじゃないかな……でも、ジェシカに勝てる人なんて、そうそういないと思うよ……」


ウキウキのジェシカに、ぼくは苦笑しながら答える。すると、セフィも同調して楽しそうに身を乗り出した。


「王都の周辺にはダンジョンもたくさんあるよ?」

「えっ?」

「生徒たちもよく行くらしいの、休みの日に早速行きましょうか?」

「いいわねそれ!!」


ジェシカの目がさらに輝いた。あ、あの、王女様がダンジョン行っていいんですかね?授業でもダンジョン実習があるみたいだし、いいのかな?ぼくは二人の勢いに、少し圧倒されながら笑う。


ぼくとセフィは聖教学院へ。ジェシカは聖騎士学園へ入学する。そしてぼくは特待生として、聖騎士学園にも籍を置いてフィオルナさんの授業を受ける予定だ。


けど、かつて夢見て楽しみにしていたはずの学院は、今となってはそれほど好ましく思えなくなっていた。出来れば行かずにノルヴェルンに篭ってたい、三人でのんびり暮らしていたい。


だって――ぼく達を敵視している二大公爵家が運営している学校なのだ。


聞いた話によると、“ノルヴェルンの奇跡”の演劇で母さまを特に執拗に狙っていたあの大貴族は、やはり信仰を司るエクレシオ公爵だった。父さまを恋敵のように思ってそう……。


そして厄介なことに、その二つの公爵家の子供たちが同年代にいるらしい。


絶対に――何かあるよねぇ……?


さらにもう一つ。国境で帝国と小競り合いをしている、最も危険で強力な軍事力を持つ南部貴族、ヴァルディオ侯爵家の次期当主が、先輩として姉さまの学年にいるみたい。


ぼくとセフィが婚約した頃に、実はヴァルディオ侯爵家を筆頭とした貴族派による、謀反の気配があったそうだ。


貴族には派閥がある。王家を中心に王政を支える”王党派”、有力貴族の権益や発言力を重視する”貴族派”、特定の勢力に属さず均衡を保とうとする”中立派”の三つ。ぼくたちノルヴェルン含めた穏やかな北部貴族は皆、中立派だった。


でもセフィとの婚約発表と共に、エルディア家は”王族派”を名乗るようになった。


”王族派”は二つの公爵家を含む王家ではなく、王や王族に直接忠誠を誓いその意思を最優先にする派閥。そして仲良しの北部貴族たちは、皆ぼくたちに付き添ってくれて”王族派”を名乗るようになっちゃった。北部辺境伯のオリヴェリア侯爵まで一緒に。


これにより王さまの勢力が増し、何だが一大勢力になって貴族派はその事態に混乱、謀反は無くなったと言う。ここまで王さまや父さまが計算してたのかは分からないけど、なんだか二人の思惑を感じる。


父さまから、そんな三家と取り巻きの貴族には特に注意しろと言われている。


そんなことをぼんやり考えていると、父さまと母さま、それからメルも食卓へやってきた。


「みんな揃ったな」


両親が席につき、朝食が始まる。姉さまは用事があるらしく、もう先に学園へ行っているらしい。


「セフィは精霊魔法は控えて、なるべく力を隠し聖女と知られないように」

「はぁい、隅っこでおとなしくしてます」


セフィは素直に頷く。そして父さまの視線が、ぼくへ向いた。


「だがステラ、お前は違う」

「えっ?」

「己の正義に抵触するような輩は、やってしまえ」

「ぶっ!?やってしまえ!?」


父さまは紅茶を一口飲みながら、さらりと言った。ぼくは紅茶を噴き出した。


「構わん、やれ。相手が誰であろうとも」

「は、はぁい!いいんですね!?やっちゃいます!!」

「大事な婚約者の二人は特に、何があっても護るんだ。お前はもう、騎士なのだから」


ぼくは思わず背筋を伸ばした。何か父さまにやっつける許可を頂きましたぁ!


「お父さま……かっこいい……!」

「エリオスもね~、私が危ない時助けてくれたのよ~。ばったんばったん倒してたわ~」


ジェシカが尊敬の眼差しを向けると、母さまが嬉しそうに笑った。完全に惚気だ。


ふんふん、なるほど。やっちゃっていいのね!!


そんな時に、メルが元気に手を上げた。


「メルは~、もう一度、演劇を観に行きたい!」


その言葉に、両親は揃って同時にすっと横を向いた。


「ぼくも見た~い、休日に行こうね」

「私も!まだ見たことないわ!」

「こ、子供は他の遊びをしましょうね~?ね~っ?」


ジェシカも乗ってきて、母さまが慌てて手を振った。食卓に穏やかな笑い声が広がる。


王都に来ても、ぼくたちの幸せな生活は何も変わらない。

この物語を読んで頂き有難うございます。

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また、評価いただいた方、有難うございました!

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