表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒薔薇の聖騎士 ー光より来りて闇を抱くー  作者: 霞灯里
第2章 母さまの秘密

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

41/47

第40話 二人の聖騎士

王さまと王女様……――婚約者との会談!?


その言葉を聞いた瞬間、さっきまで何とか保っていた平静が、再び音を立てて崩れ落ちた。


再び、体が小刻みに震え出す。だめだ、無理。心も頭も、完全に追いついていない。涙が滲み、必死に息を整えながら、ぼくは声を絞り出した。


「ちょ、ちょっと……待ってください……!」


どうしても、頭から離れない。勝ち気で、意地っ張りで、でも本当は優しい――赤毛の幼馴染の綺麗な顔が。旅立つぼくを見送りながら、寂しさを隠すようにぷいっとそっぽを向いた、あの表情。


「ぼ、ぼくには……!ジェシカが……っ……!!」


言葉を続けようとするのに、喉が詰まり、息ばかりが空しく漏れる。頭の中が真っ白で、想いだけが、どうしようもなく溢れてくる。


その時だった。

すっと、母さまが立ち上がり、父さまの隣に腰を下ろすと、ぼくの方を見て柔らかく微笑んだ。


「……それとね~、話しておくことがもう一つあるわ~」


――まだ……あるの?……もう限界なのに。


「それは~……ジェシカのことよ~」

「そうだ、婚約こそしていなかったが、二人は確かに……仲を育んでいたね?」

「は、はいぃ……!!」


ジェシカの名前を聞いた瞬間、反射的にピンッと背筋が伸び、顔が熱くなる。


「陛下の許可を得てな、秘匿すべき部分を伏せたうえで、アルブレイン家には今回の件を早馬で伝えてある」

「……えっ!?」


「アルブレイン家と、ジェシカがどう判断するかは分からない。だが――」


父さまは一拍置いて、はっきりと告げた。


「陛下とセフィリア様は、“側室”を一人迎えること”までも了承された」

「……えっ……?」

「王族を相手に、本来はあり得ない話だ」


……そ、側室ぅ!?頭が、完全にフリーズする。


「だが、既に婚約者候補の幼馴染がいると話したところ、そこまで譲歩してくださった」

「私も~、絶対に譲れなかったからね~」

「それを受けて私は、アルブレイン家へ正式に縁談の申し込みをした」

「――ぶぅっ!!?」


頭の中で、何かが爆発した。


も、も、もう一つ縁談あったのぉーーー!!?


「それだけは譲れなかったのよ~、ジェシカの心を掴めるかどうかは~、ステラ次第よ~?」


母さまが、悪戯っぽく笑う。


「頑張りなさい~!」

「……そうだステラ、最後はお前次第だ。彼女を離したくないなら、誠意をもって自分の気持ちを伝えなさい」


父さまが「フフッ」と格好よく微笑む。


「これが、ジェシカとの――唯一の、最後の機会だ」


――もう、無理ぃいい!!!心臓がうるさくて、頭も体も熱くて、何も考えられない!!!


二人の言葉が、とどめとなって、ぼくはその場で完全に処理限界を超えた。


ぐらりぐらりと揺れて視界がかすむ意識の中で、再びニヤニヤと楽しそうに笑うエルフ学者の顔が見えた気がする。……絶対、楽しんでるよね!


他にも話すことはあったようだけれど、混乱しきったぼくを見て、この日の話し合いは一旦、ここでお開きとなった。






「……本当、とんでもないことになっちゃったなぁ……」


用意された私室。大きなベッドに横になり、頭の黒薔薇をそっと撫でながら、ぼくは天井を見つめて黄昏ていた。


気持ちは少し落ち着いたけれど、心の奥がまだざわざわしている。ジェシカの名前を思い浮かべるだけで、胸がきゅっと締め付けられた。


その時、控えめなノックの音がした。「ステラ~?」と、姉さまの声だった。


部屋に入ってきた姉さまは、ベッドの縁に腰を下ろすと、寝転ぶぼくの髪を、優しく撫でてくれた。


「……大変だったわね」

「姉さまは……いつから、このことを知ってたんですか?」


「王都に来て、学園に入学する頃ね、父さまから聞いたわ」

「……精霊のことも?」

「うん、それは、ノルヴェルンで父さまと特訓していた時」


姉さまは、「私には、精霊は見えないけれど」と少しだけ寂しそうに微笑んだ。


「父さまはね、あなたを……そして家族を護るために、ずっと私を鍛えてくれたの。必ず、大きな出来事が起きるって」

「父さまが……?予想していたの?」


「ええ。私は、エルディア家を護り抜くと、騎士として剣に誓ったわ」


一拍置いて、姉さまは凛とした真剣な眼差しで真っ直ぐにぼくを見つめた。


「……でもね?あなたも、護るのよ。聖女様とジェシカを……男として――騎士として」

「――!!」


「ステラこそが二人の護衛騎士……聖騎士よ」


――胸を強烈に強く叩かれ、一気に熱いものが込み上げてきた。


一瞬で意識が目覚め、迷いも、不安も、全部ひっくるめて、覚悟に変わっていく。がばりと勢いよく身を起こした。


「……ありがとう、姉さま……!」


そうだ。ぼくが愚図って、逃げてどうする。二人の女性の未来に、責任を持つのは――ぼくだ。


「頑張りなさい」


姉さまは、立ち直ることを最初から分かっていたかのように、ふふっと優しく微笑んだ。


……ああ、その笑顔、本当に父さまにそっくりだ。

この物語を読んで頂き有難うございます。

もし宜しければ、ブックマーク・評価を頂けると励みになり有難いです。

また、評価いただいた方、有難うございました!

今後ともよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ