第33話 父さまからの手紙
「ほう、少しは操作できるようになったじゃないか!」
「ぐぬぬぬぬっ……!」
――ついに出会ってはならない、似た者同士の二人が出会ってしまった。
久しぶりにジェシカがぼくの館を訪れると、フィオルナさんと目が合った次の瞬間、二人はまるで旧知の友人のように意気投合し、あっという間に仲良くなってしまったのだ。
そして案の定というか、予想通りというか。「ほう、君も魔法の才能があるねぇ!」と、危険な学者の目が、ぴかりと光った。
こうしてジェシカも、ぼくと一緒に魔術を学ぶことになった。
ジェシカは魔法の出力調整がとにかく苦手だと聞くと、フィオルナさんは庭の一角に小さな焚き火を作ると、
「この炎を、出来るだけ小さく動かして、出来るだけ安定させてごらん」
彼女に実に繊細で難しい課題を出した。
焚き火の前で、ジェシカは手をかざし、顔を赤くしながら必死にマナを練り操作しようとしている。。炎が突然暴れ出さないか、ぼくは内心ひやひやしていたけれど――
「大丈夫だよ。私は水属性だからね。飛び火したらすぐ消すさ」
フィオルナさんは余裕の表情で、すぐ横から見守っていた。
「なるほど……ジェシカは、マナの総量が非常に多いね」
「そ、そうかしら……?」
フィオルナさんはウキウキとした様子で、細長い棒状の謎の道具を取り出し、ジェシカにかざして測定している。その姿は完全に研究者だ。
改めてジェシカをよく見ると、赤く輝く火の精霊が、彼女の周りをふよふよと漂っていた。数は多くないけれど、まるで大事そうに見守っているように見える。残念ながら、ぼくには火の精霊の意思を感じ取ることは出来なかった。
元気娘のジェシカの登場で、我が家は更に賑やかになった。
そんな時に昼食を終えると、早馬が到着し一通の手紙が届けられた。差出人は父さまだ。今回もまた厚みがある。
「ついに来たのね~……」
「そのようだな……」
手紙を開ける前から、母さまとフィオルナさんの空気がどこか重い。
「えっ、どうかしたの?」
母さまはちらりとぼくとジェシカを見て、何とも言えない表情を浮かべたあと、
「今日はみんなで遊んでるのよ~?」
そう言って、フィオルナさんと一緒に手紙を持ったまま、館の奥の部屋へと向かって行ってしまった。
……え?なにそれ、すごく気になるんだけど?
どうしたんだろう、何か大事なことかな?と、ジェシカとメルと、ぽかんと首を傾げていた。
そして、二人はしばらく奥の部屋から出てこなかった。その間、ぼくはジェシカに玩具にされたり、彼女の訓練に付き合わされたりして過ごした。
そして日が沈み、夕食の時間。
母さま、フィオルナさん、メル、ジェシカ、そしてぼく。全員が揃って食卓を囲み、和やかに食事を終えたところで――
「実はね~……」
母さまが、いつになく改まった口調で切り出した。
「エリオスから連絡があって~、近いうちに王都へ行くことになったわ~」
「……えっ???」
えっ?……王都?……父さま?
「えっ?ま、まさかとは思いますが……ぼくも、ですか……?」
「そうなの~、詳しいことはまだ話せないけど~、王都に行く必要があるのよ~」
頭が追いつかずにぽっかーんとするぼく。
「もちろん私もメルちゃんも~、そしてフィオルナも一緒に行くわよ~」
「旅行!? 家族みんなで旅行!!」とメルがぱあっと顔を輝かせてはしゃぎ出す一方で、ジェシカは呆然と固まっていた。
「ええ~……みんな旅行に行っちゃうの?流石に王都までは私は付いていけないわね……」
寂しそうに呟いた。
「そうなのよ~、ごめんなさいね~、ジェシカ~」
「あっ、いえ! 王都に行ってる間、私は自分の家に帰ります!」
「長くは滞在しないと思うけど~、往復を考えると恐らく一月以上かしら~」
ひ、ひと月以上の、りょこう……!?
遠くへ長い期間の旅行なんて、ぼくは行ったことは一度もない。じわじわと胸の奥から、好奇心が湧き上がってきた!
「い、いつ頃に王都へ向かう予定なの?」
「なるだけ早くがいいから~、準備を整えて~……、一週間後くらいかしらね~?」
一週間後!?そんなにすぐ!?
最近なんだかわくわくすることが沢山あって嬉しい!
胸の奥が、期待でいっぱいに膨らんでいった。
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