表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒薔薇の聖騎士 ー光より来りて闇を抱くー  作者: 霞灯里
第2章 母さまの秘密

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/47

第29話 ノルヴェルンの黒薔薇姫

「い、今……、なんて言ったの……?」



あまりにも不穏な言葉が耳に刺さり、ぼくは鉛でも流し込まれたみたいに固まった。それでも必死に首だけを動かし、ギギギッ……と音がしそうなほどの動作で聞き返す。



「”ノルヴェルンの黒薔薇姫”、さぁ!」



エルフのお姉さんは、こちらの動揺など一切気にした様子もなく、もう一度高らかに叫んだ。その顔は興奮で朱に染まり、目は宝石を見つけたようにきらきらと輝いている。


そして――視界が、ふわっと浮いた。



「えっ?」



気づけばぼくは、ひょいっと抱き上げられていた。細い腕なのに軽々と頭をぐいっと胸元に引き寄せられる。



「わっ、わあああ!!」

「いい匂い……っ。薔薇の香りだねえ……!」



髪に顔を埋められ、すりすりと頬ずりまでされる。完全に捕獲された子猫の気分だ。



「ちょ、ちょっと!?」



てんやわんやで頭が真っ白になっていると、母さまが楽しそうに声をかけた。



「やっぱり~、あなたが来てくれたのね~?」

「当たり前だろう!こんな面白……いや、重大事案!私が来ないわけがないだろう!!」



えっ?知り合い??

抱き上げられたまま母さまとエルフのお姉さんを交互に見ると、母さまはにこにこと本当に嬉しそうだ。エルフのお姉さんは、ぼくをようやく床に下ろすと、背筋を伸ばして優雅に一礼した。


「改めて名乗ろう。私はフィオルナ・アウレリア。セレスティア聖王国の筆頭魔術師だ」


……ひっとう、まじゅつし?って何?

聞き慣れない肩書きに、頭の上に大きなはてなが浮かぶ。母さまに視線を向けると、ふわっと微笑んで補足してくれた。



「フィオルナはね~、魔法を研究している学者さんなのよ~、とっても優秀よ~?ちょっと変わってるけれど~」

「セレナも久しぶりだねぇ!元気そうで何よりだ!」



二人は顔を見合わせて笑い合う。どうやら本当に友人っぽい。



「相変わらず……君は本当に、奇跡を引き寄せる星の下に生まれている」

「もう~、大げさよ~?」



その言葉に、母さまは少し困ったように目を細めた。フィオルナさんは肩をすくめ、ちらりとぼくを見る。



「大げさなものか。王都ではもう大騒ぎだぞ?ノルヴェルンで今度は”黒薔薇姫”が現れたってね」



……え”っ?また不穏な言葉が聞こえた気がする……。



「噂はな、尾ひれどころか――翼まで生えているぞ?」



フィオルナさんは面白がるように肩をすくめ、指を折りながら続けた。



「美しすぎて姿を見ただけで言葉を失う、とか。視線が合えば心を射抜かれる、とか。光と闇、あらゆる属性に愛された神秘の子だ、とか……」



そして、最後に一拍置いてさらりと付け加える。



「新たな“聖女”の誕生だ、とかな。まあ……好き放題だ」



ぼくの背筋に、ひやりと冷たいものが走った。まるで、見えない手が首筋をなぞったような感覚。



「そ、それって……ぼくのこと?」

「他に誰がいる?」



あまりに当然のように言われて、思考が止まる。

言葉が、喉の奥で凍りついた。



「ちょ、ちょっと待ってください!ぼく、男です!」



青ざめた顔で必死に抗議すると、フィオルナさんはぴたりと動きを止めた。

きょとんとした顔のまま、ゆっくり母さまの方を見る。



「……え?……そうなの?あ、そういうこと??」

「ステラは男の子よ~?」



一瞬の沈黙。

そしてフィオルナさんは、ぼくを見ながら何か重大な真理に辿り着いたかのように、深くうなずいた。



「……うむ。“姫のように美しい男の子”、という意味だな!何も問題はない!」



ちょっとーー!?

あるよ!?めちゃくちゃあるよ!!


全力で叫びながら、ぼくは戦慄した。この噂、絶対にろくなことにならない!

この物語を読んで頂き有難うございます。

もし宜しければ、ブックマーク・評価を頂けると励みになり有難いです。

また、評価いただいた方、有難うございました!

今後ともよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ