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黒薔薇の聖騎士 ー光より来りて闇を抱くー  作者: 霞灯里
第2章 母さまの秘密

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第26話 奇跡の領地

「ジェシカと狩りに行きたいと言ったときにね~、闇の精霊たちがすっごくはりきっちゃってね~、とっても狩りに行きたがっていたのよ~」

「ええっ!?」



ふわりと微笑む母さまの声は優しいけれど、その内容は……なかなか衝撃的だった。



「そ、そうだったの?」

「ええ~。頼りになるところを~、どうしてもあなたに知ってもらいたかったみたいなの~。だから許可したのよ~?本当に愛されてるわね~」


「そっ、そうだったんだ……」

「そのクマさんはね~、闇の精霊たちが連れてきちゃったみたいなの~。かっこいいところを見せたかったみたい~」


「えええぇっ!?」



胸が少しだけきゅっと締め付けられる。闇の精霊たちは――ぼくのことをこんなに想ってくれていたんだ。


闇の精霊たちは周囲をふよふよ漂いながら、黒紫の光をしゅん、と縮ませる。“怖がらせてごめんなさい”と、心で伝わった……かわいい……。


「精霊たちはね~、好きな人には~、できることは何でもしてあげようとするの~。周りが奇跡と呼んでしまうようなことでもね~」

「母さまがこれまで起こした奇跡も……?」


「そうよ~。光の精霊たちが私のことを思って~、色んなことをしてくれたのよ~」



その言葉の響きには、少しだけ懐かしさと、かすかな寂しさが混じっていた。



「そうだったんですね……」

「あなたが今日使った魔法はね~、闇の精霊魔法よ~。このこたちがちょっとやりすぎちゃったみたいだけど~」


「黒薔薇さん……」



そっと触れると黒薔薇はふわりと揺れて、黒紫の光をひときわ柔らかく灯した。叱られてしょんぼりする子どものようで……胸があたたかくなった。



「そういうことが、私にもたくさんあったわ~。でも今は光の精霊たちは人前でとても気を遣っていてね~、昔よりおとなしくなっちゃったの~。寂しいわ~」

「気遣うって……?」


「私がね~、大変面倒なことに巻き込まれちゃって~、困ってしまったのよ~。聖女裁判の時にね~。それで光の精霊はすごく落ち込んでしまってたわ~」

「……ああっ、話に聞くあの裁判ですね!」


「あの時のことも~、あなたにはお話する必要があるわ~」



母さまの表情が一瞬だけ曇った。

けれど次の瞬間には、いつもの笑みが戻っていた。



「それで光の精霊たちは小さい頃から、いつあなたの前に姿をみせるか慎重に考えていたのよ~?そんな時に闇の精霊まで現れて~、あなたにまみえる日は今日になっちゃったの~」

「色々とあったんですね」


「精霊たちはね~、強い欲望や権力や信仰~、揉め事や争い~、虚偽や私利私欲~、そして戦争〜……そういう人の“負の感情”と言えるものを、とても嫌うのよ~」

「そっ、そうなんですか!?」


「神話の時代には、“精霊の御子”――精霊魔法使いは何人もいたらしいわ~。でも人は争いの歴史を積み上げてしまって~、精霊は人々から離れてしまったの~。それが属性が枯れゆく、この世界~……」

「……っ!!」


「精霊が属性の加護を人に与えてくれるわ~。その精霊たちが居なくなってしまえば~、どこまでも枯れて貧しくなってしまうわね~」



心臓がどくんと跳ねた。

それは今まで知らなかった“世界の真実”だった。



「……ステラ~、私と同じようにあなたも王都に行く時には~、きっと国の争いごとに巻き込まれてしまうわ~。それがとても心配なの~」

「母さま……」


「この領地にいれば、全く気付かなかったと思うけど~。外はね……悲しいほど争いごとで満ちているのよ~」

「えええっ!?」


「逆に言うと私たちの領地は~、私と精霊たち~、そして家族のみんなを守るために~、エリオスが頑張って築いてくれた~、とっても穏やかで平和な奇跡の領地なのよ~?」

「父さま……」



母さまはにっこりと微笑んだ。

その笑みは、“母さま自身の優しさ”が生み出した、温かさだった。


ぼくは胸の奥が熱くなるのを感じた。


この家族の元に生まれたこと。

この領地で生きていること。


改めてこの奇跡のすべてに、心から感謝した。

この物語を読んで頂き有難うございます。

もし宜しければ、ブックマーク・評価を頂けると励みになり有難いです。

また、評価いただいた方、有難うございました!

今後ともよろしくお願いします。

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