第21話 森のクマさんがぁ!
そうこうしていると、ジェシカが思い出したように目を輝かせて言いだした。
「そういえば、黒薔薇!闇魔法っ!!」
………思い出してほしくなかった。
「ねぇっ!闇魔法を使って見せて、ねぇっ!見てみたいわっ!」
「闇魔法なんて使ったことないよ! 何も分かんないってば!」
ああっ、また始まってしまった!
家にある図書室にも、闇魔法に関する文献は何一つなかった。それはそうだ、闇魔法なんてこの国で聞いたことがない。あるとしても、王都にある王家の図書館だろう。
「この前のように、黒薔薇にお願いすればいいんだわ!やってみてよ、ねぇっ!」
そうかもしれない。
この前の奇跡のような光景は、黒薔薇さんにお願いしたんだった。
ぼくは深呼吸したあとに、この前と同じように頭の黒薔薇に聖なる光を浴びせて撫でながら、お願いをしてみた。
「黒薔薇さん、ウサギを捕まえてくださいっ!」
すると――
行先方向の地面に一輪の黒薔薇がにょきっと生えて花を開いた。そしてふわふわ、きらりと揺れる。
「……?」
「わあ、綺麗ねぇ!」
道先にある黒薔薇をジェシカと眺めているも、特に何も起きない。……と、思ってた時、足元にふるりと地面の揺れを感じた。
ぼこぼこぼこ、……ぼっこおおおおん!
地面が盛り上がると黒薔薇が、というかその蔦がぼくたちの居る左右の至る所から、幹のように太く大きく伸ばし振るいながら、いっぱい生えてきた。
「うわあぁっ!?」
驚きながら見ると、その蔦にホーンラビットたちが大量に絡め取られている。ぎゅうぎゅうに縛られ、身動きもできてない。
「…………!?」
「…………!?」
「…………!?」
な、なぁに、これぇ?
ぼくも、ジェシカも、護衛騎士たちも、口を開けたまま固まった。
だがそれだけでは、終わらなかった。
びっくり仰天しているそんな時に、正面の森から「どすんどすん」と駆ける影が地響きとともに近づいてきた。
「ウガァアアァアア!!」
それは——大きなクマさんだった。
普通のクマより二回り以上も大きそうな、体中あちこちに歴戦の傷がある、迫力のある狂暴そうなクマさん。
「あっ、あれは!北の山のヌシ!?」
「な、なぜここに!?」
「嘘だろ……!」
「ゴルドベアだ!!」
「ま、まさかなぜ、こんなところに!?」
護衛騎士たちが驚愕し青ざめている。
「えええええっ!」
あまりの出来事の連続に、ぼくは固まる。さすがのジェシカも真っ青だ。騎士たちは慌ててぼくたちの前で、護衛の構えを取り始めた。
そんな中――
ひゅんひゅんひゅん
道先の方で最初に咲いた黒薔薇が、枝を蔦のように長く伸ばし、素振りを始めた。クマさんは一直線にその黒薔薇とぼくたちの元へ、ものすごい勢いで突進してくる。
ひゅんひゅんひゅん
――シャンッ!
黒薔薇が素振りの後に少し溜めて蔦を振るうと、”黒紫の刃”が飛び出し空間を切るような音がして、一直線に走った。
そして。
ぼとり。
一瞬で首が落ちる音が、異様なほど鮮明に響いた。
続いて、どさぁっ。
巨大な体が地面に沈み込む衝撃音がした。
その後に――
バサアァァァン……!!ミシミシ…ッ、
黒紫の刃が通った森で、木々が一斉に倒れ始め連鎖していく。斬られた方向に次々と傾き、まるで森が波打つように揺れた。
………………。
その光景を理解できず、暫らく呆然とした硬直の後。あまりの出来事の連続に頭が処理できず、限界突破してしまった。
「うっ、うわああぁ!!」
「きゃあああぁっ!!」
ぼくとジェシカは、仲良く泡を吹いて意識を失い、倒れ込んでしまいました……。
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