第16話 物憂げな少年
騒然となった国民属性鑑定式から、二週間ほどが過ぎた。
前代未聞の《聖》と《闇》の二属性を持つ子供が現れた、という報告が国に届けられたみたい。びっくりしたけど、近いうちに王都から調査員が派遣されてくると、さっき早馬の書簡で知らされた。
……なんだか、とんでもないことになっちゃったなぁ。
ふう、とため息が漏れる。
空はやけに気分と反比例していて、雲ひとつない青空が広がっている。
ぼくの気分が曇り空な理由は、あの黒薔薇だ。
鑑定式の日から、なぜか黒薔薇がぼくの傍に常に居るようになった。何を言っているか分からないと思うけど、ぼくもさっぱり分からない。
部屋の花瓶に挿したはずが、食事のときには食卓の花瓶に刺さってるし。スプーンを取ったはずなのに、黒薔薇を握ってた。外に出ると胸ポケットに当然のように収まってるし、お風呂に入れば湯船にぷかぷか浮いていて、鏡を見ると肩越しにちゃっかり映っている。
極めつけは朝。
起きると腕に絡みついた黒薔薇が、顔の前で「おはよう」と言わんばかりに花をふわっと開いてくる。……花が挨拶してくるって、なぁに?どういうこと?
花瓶に戻しても、何度でも、気づくと“ぼくの傍のどこか”にいる。
どこか世界の法則から外れている、黒薔薇……。
そんな不思議が、今や完全に日常になってしまった。
そしてつい先日、黒薔薇は決めたらしい。
ぼくの左耳の上。髪と耳の間に茎を器用に挟み込み、ひらひらと黒い花びらを誇らしげに揺らしながら、「ここが定位置です」と言わんばかりに居座っちゃった。
外しても花瓶に入れてもイヤイヤするように、いつの間にかぼくの耳元へ帰ってくる。その結果、常に黒薔薇の髪飾りをつけた男の子になってしまった。
男の子が黒薔薇の髪飾り。これって、どうなんだろう?
これがぼくの曇り空。
そして、まさに今。ぼくの頭の左側で、キラキラ輝いた黒薔薇が満開で嬉しそうに揺れている。
ふう……。
もう考えても分からないので、諦めました。
黒薔薇を揺らしながら、青空を眺める。
そんなぼくを見て、母さまは「ステラ~可愛いわぁ~!」と大喜び。
妹のメルなんて「おそろいする~!」と言って花を耳に挟み、気づけば母さまとメルも花の髪飾りをつけだした。ぼくだけ恥ずかしさで顔が真っ赤だ。
枯れることもなく、ずっとついてくる黒薔薇。
少し不安になって、母さまに尋ねてみた。
「これ……悪いものだったりしないよね? 大丈夫かなぁ?」
すると母さまは優しく微笑み、どこか確信めいた声で言った。
「悪いものじゃないわ~。むしろ、あなたを護ろうとしてるこ。とってもいい子よ~?」
……護る?黒薔薇が?花だよ?
訳が分からないです。
いやもう、ほんと訳わからないので、ぼくは考えるのをやめることにしました……。
黒薔薇は、きらきら揺れながら、相変わらずぼくの耳元で輝いている。
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