表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

縮みゆく部屋

〈選挙戰靑田に植わる爭點よ 涙次〉



 今回は、上総情救出篇。



【ⅰ】


 大新聞に勤める者、各社軒並みやられた。魔界に拉致されて拷問を受けるのである。何故、拷問か、大事な人質なのに? と問へば、「彼ら」が【魔】だつたから、としか答へやうがない。メカニック集團は完全に魔界の事全てにイニシアティヴを取り、他部門の【魔】たちを配下に納めてゐる。拉致の作戰全部を伊達剣先が執り行つた譯ではない。だが彼は魔道の者皆にカリスマを發揮してゐた。カンテラと寸分違はぬ能力を持つてゐるなら、それも頷ける。



【ⅱ】


「俺は今、一體何処にゐるんだら?」上総が思つたのは、まづそれであつた。薄暗い小さな部屋のやうなところに閉ぢ込められてゐる。救出の勞を、社は取るだらうか。だうせこんな事をやるのは【魔】に決まつてゐる。だとすれば「彼ら」が目指してゐるのは、東京、いや日本全土に亙る言論統制であらう。余り陳腐なので、監禁されてゐる者にも容易に分かつてしまふ。社は、社員一人の命と報道の自由とを、今天秤に掛けてゐるに違ひない。

 上総に讀めた事の、大方は当たりだつた。ふと、カンテラさんは來てくれるだらうか、さう云ふ一縷の望みが、上総の心に湧いた。それもこれも皆社頼りなのだ。カンテラ事務所を動かすには、大金がかゝる。社の上層部がケチでない事を上総は禱つた。



【ⅲ】


「おや、可笑しい」さつき迄頭上遥かに天井があつたのに、それが幾分低くなつてゐる。上総は目聡かつた。この部屋、縮んでゐるぞ! さう、上総の拷問を担当するのは、*「鉄箱男」、** ジョーイ・ザ・クルセイダーの遺髪を継ぐ、あの男であつた(彼奴(きやつ)も蘇生組の一人)。そんな事知る由もない上総だつたが、縮み行く部屋、と云ふのは怖かつた。「お師匠さん!」上総は尾崎一蝶齋の名を呼んだ。蟲の報せでもいゝ、誰か俺を- ふとこゝで思つたのは、師匠がよく云ふ、天命と云ふ事。このピンチにそれを思へる、と云ふのは、上総にも幾分かの剣客らしさが備はつて來た証しであらうか。だがそれも時遅し。上総、迫り來る壁に挾まれて、瞑目した-



* 前シリーズ第170話參照。

** 前シリーズ第91話・他參照。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈投票に行き公園でルートビアだうとなれよと日本思ふ 平手みき〉



【ⅳ】


 ところ變はつて尾崎一蝶齋道場。もう夜だ。テオとの合流を待つ、カンテラ・じろさん。泥と化した金尾の、その「泥」を殘らずテオが持つて現れた。テオ「魔界に急ぎませう。上総さんの命に代金が付きました」上総の勤め先の新聞社は、だうやら報道の自由は、社員一人の命も救へずに、あつたものではない、と氣付いたやうだ。尾崎「私はこゝで待つよ。かう云ふ事はプロに任せた方がいゝ」。



【ⅴ】


「泥」はゴーレムに變化した。ジョーイ・ザ・クルセイダーは金尾のゴーレムを大の苦手としてゐた。兄貴分の教へに忠實な「鉄箱男」は職場放棄。魔界から脱出した。ゴーレムのパンチで滅茶苦茶に壊されたその「鉄の小部屋」から、上総は救出された。問題は他の社の社員たち全員をだう救ひかだ。伊達剣先一人やつゝけても、濟む話ではない。

 だうするカンテラ、日本を救へるのはお前しかゐない! この儘各新聞の言論統制が續けば、そのプロパガンダに染め上げられた人間も出て來るだらう。そうなつてからでは遅いのだ。打倒・伊達剣先、次回必ずや!



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈冷清水汲んでこの世は皆茶席 涙次〉



【ⅵ】


 人間界に戻つて來た上総は、尾崎に何処かよそよそしくなつた。尾崎「その内分かる。私が足掻いてだうなる問題ではなかつた事が。愚かしさ、弱さも含めての人間なのだ」‐これが尾崎の活人剣の限界なのか。上総は社の上層部に直談判して、叛・伊達剣先のキャンペーンを開始、カンテラ一味に醸金を、と日本全國に呼び掛けた... 闘ひはたつた今始まつたばかりなのだ。今回はこれで。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ