さんさ　志乃の医薬譚

村にある、小さな店で働く志乃の毎日。
それは穏やかで、しかしどこか閉ざされていた。
医師の神近と出会ってから、志乃の世界は静かに色づき始める。
神近は東西の医学に通じ、医術と真心で人々の病を癒す不思議な力を持っていた。
彼の傍らで、志乃は初めて「人を救う」ということの重さと美しさを知る。
生薬の香りが満ちる部屋、薬研の音、夜を徹して続く診察、
病に苦しむ人々の叫びと祈り。
そのすべての中で、志乃は“医の道”と“生きる意味”を探していく。

女性が自らの意志を持つことすら難しかった時代。
流れに身を任せながらも、時に逆らいながら、
一人の少女が、確かに自分の人生を選び取っていく物語。

すべての命が、癒しを求めて息づく。
この物語は、そんな「治すこと」と「生きること」を描く旅です。

★漢方や生薬、医学に興味のある方、勉強されている方などにも、ぜひ読んでいただきたいです。

※本作は実在の医学文献を参考にしていますが、あくまでフィクションです。
　実際の服用・治療については必ず医師・薬剤師の指示に従ってください。