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第五十一話  脅威の真相を求めて

 災害級の魔物だったドラゴンを倒したあと、主要メンバーたちは天幕の中へと戻っていた。


 空心、マリア、アクエラ、エリサ、ラピス、ユーシアの六人だ。


 他のメンバーやクレスト聖騎士団たちは大戦の後始末をしている。


 時刻は昼過ぎ。


 戦魔の森から現れた二百体の魔物とドラゴンは倒した。


 あの大戦おおいくさから三十分は経っているが、戦魔の森から新たな魔物やドラゴンが現れる様子はない。


 ならば、もうこのガストラル大平原に用はなかった。


 ここへ来たのはそもそもラピスと商談するためであり、そのラピスも今では【反逆の風】に協力すると申し出ている。


 しかもこれからレジスタンスに必要になってくる大量の武具や食料、それ以外の代物を揃えるのに必要な資金すべてをラピスは貸してくれるらしい。


 しかも金利は一切取らないというオマケつきで。


 さすがのエリサも困惑したが、ラピスはこの国を魔族から取り戻したときの出世払いでいいの一点張りだった。


 だが、そんなラピスは一つだけ条件を提示した。


 魔族から国を奪還した暁には〈バルハザン商会〉をこの国から追放し、〈メディチエール商会〉に国内すべての商権を与えてほしいと。


 これにはエリサもすぐに返事はできなかった。


 それも当然だった。


 エリサにそのような約束ができる権限はなかったからだ。


 空心が聞いたところによると、元セレスティア王族のほとんどは魔族に殺されてしまったが、王宮にはたった一人だけ生き残っている王族がいるという。


 名前はリリーナ・セレスティア。


 元国王の一人娘であり、正統な王位継承権を持つ王女。


 レジスタンスたちはこの情報を頼りに、各地方で抵抗活動をしているらしい。


 まだ正統な王族が残っているのなら、魔族を倒したのちにリリーナを女王としてセレスティア王国を復活させると。


 そして、ラピスの条件は女王となったリリーナが決めることだ。


 女王となったリリーナが〈バルハザン商会〉の商権をすべて剥奪し、代わりに〈メディチエール商会〉に国内の商権を与えればラピスの願いは叶えられる。


 なのでエリサは素直にそのことを告げると、ラピスは「それでええわ、ただし、うちはこれから神の御使いはんの傍にいるからな」と空心にすり寄ってきた。


 今もそうである。


「いや~、ホンマに神の御使いはんは凄かったです。このラピス・メディチエール、十三年の人生の中で一番感服しましたわ。これからも〈メディチエール商会〉とうちをよろしゅう頼んます」


「はあ……」


 と戸惑いの声を漏らしているのは空心だ。


 実は天幕の中に帰ってきてからずっとこうだった。


 掌返しとはまさにこのこと。


 ラピスがあまりにも空心を褒め称えるので、空心本人もどう言葉を返していいのかわからなかった。


 その中で話題を逸らしてくれたのはエリサだ。


「ラピスさん、神の御使いさまが凄いのは当たり前です……それはさておき、御使いさまが倒した魔物とドラゴンの後始末はどうしましょうか? 素材になりそうなモノを剥ぎ取るのなら数日は要します」


「そんなもん帰る一択やろ」


 真っ先に答えたのはラピスである。


「あんなドラゴンが他にいるとは思えんが、だとしてもこんな場所にいつまでもおったら危険や。うちらは〈バルハザン商会〉の手前、表立って商売できへんからこういった人気のない場所で休憩しとるが、あんなバケモンが住んどったことを知っとったらこんな場所に来てへんかったわ。素材なんてこのさいどうでもええ。命あっての物種や。さっさとこんな場所からオサラバしようで」


 ラピスの言うことも一理ある。


 危険な場所には極力近づかず、危険だとわかった場所からは一刻も早く遠ざかるべきだ。


 しかし、このとき空心はまったく違うことを考えた。


 その矢先、マリアが「でも、何かおかしくないですか?」と手を挙げる。


「戦魔の森の方角から現れた以上、あのドラゴンが森に住みついていたことは間違いないと思います……ですが、それならもっと早くに魔物たちは森から逃げていたはずでは?」


「わたくしもそう思います」


 マリアに続いてアクエラも口を開く。


「あれだけの強さのドラゴンです。もっと前に戦魔の森に住みついていたのなら、その時点で戦魔の森の魔物たちは逃亡していたはず。けれど、御使いさまが倒した魔物たちはまるで今日初めてドラゴンを見て逃げ出してきたような感じではなかったですか?」


 アクエラは空心の顔を見ながら問う。


 空心はこくりとうなずく。


「アクエラさんの言うとおり、私が間近で見た魔物たちはそのような感じでした。何かに怯えるように森から逃げ出してきた。ただ、それがあのドラゴンだったかはわかりませんが……」


「いやいやいや、御使いはん。そんなもんドラゴンに決まってますがな。ドラゴンに(おび)えんで魔物たちは何に怯えますのん?」


「それを確かめに行こうと思います」


「確かめに行くとは?」


 尋ねてきたのはエリサだった。


「戦魔の森の中を捜索し、本当に別のドラゴンがいないかを確かめにです」


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