『原文帳に隠れた速記シャープ』
文房具屋に追われていた速記シャープが、原文帳の束の中に身を隠しました。文房具屋は、何冊かの原文帳を逆さにして振ってみたり、一枚一枚めくったりしてみましたが、ついに速記シャープを見つけることはできませんでした。
速記シャープは、文房具屋が立ち去ったかどうか、体を起こして見渡してみましたが、文房具屋はどこにも見えません。速記シャープは安心すると、急に速記が書きたくなりました。ちょうど目の前には原文帳がありますし。
速記シャープが原文帳に速記を書き始めますと、原文帳が揺れました。速記シャープと原文帳のこすれる音がしました。
文房具屋が振り返ると、原文帳が揺れて、さらさら音がしています。そうっと近寄ってみると、速記シャープが速記を書いているではありませんか。文房具屋はにんまりとして、速記シャープをつまみ上げると、店に帰っていきました。
教訓:自分の身を隠すものを揺らしたら、身を隠せない。