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第6話  チョット遠出


 3歳年上のハーフエルフ美少女を嫁にして。

 その弟で同い年の男の娘を側室にして。

 更に24歳年上の細マッチョ美熟女も奴隷側室にして。

 ポンコツオッサン戦闘奴隷を入手して。その世話要員に23歳の赤毛奴隷女も入手して。

 手元には既に一生暮らせるだけのカネまである。

 ほんの数日前まで食うや食わずの極貧生活だったのがウソみたいだ。

 前世でもこんな生活なんか想像も出来なかった。

 商人ギルドがモンスター素材を求めているから無理しない程度には狩りをする必要はあるけれど、名声を求めて無謀な冒険なんてする必要は無い訳で。

 お気楽に適当な狩り暮らしをしつつ、ハーフエルフ嫁にポージョン工房を切り盛りして貰ってさ。

 うん、ますますカネが溜っていくね。ホクホクだ。


 戦闘要員を揃えたから当座の活動をせにゃならず。じゃあ、どういう行動をするのさって考えた。

 街の北門から出ると日帰りでも狩りはできるけれど、余り大物は出てこない。

 街の西門から出ると片道の移動だけで5時間くらい歩く。でも、木々が大きい森林地帯に入り込めて、そこなら大物も期待できる。

 概ねCランク以上の冒険者だと西門コースで移動して、森林地帯の前で一泊。

 夜明け前に森林地帯に入り込んで狩猟開始。1日活動したら離脱して休養。

 十分な獲物を得ているか、装備が限界ならそのまま帰途へ。

 装備や出来高次第ではもう1日狩りを踏ん張る。

 最短でも二泊三日。場合によっては三泊四日の旅になるそうだ。

 既に魔狼の5匹も瞬殺ならこのコースだろうってことになったんだな。

 メンツは俺とオッサン集団とルカって事に落ち着いた。

 ベルとリタは最初からポージョン工房要員。ジーナは念の為の警備要員。元Cランカーだったリタとジーナだったら少々の面倒事なら対応出来るのだろう。大人がいてくれて助かるよ。15歳の小娘ベルだけじゃ危ないもんな。

 去勢したルネの体調が気になったけれどベルの治癒術が凄いのか、ルネはケロッとした顔している。いや、ケロッとじゃねえな。ウルッとした瞳で恋する乙女モードで甘えたがっている。オッサン連中は完全に女の子だと認識していたりするくらい。勘違いを放置していたりする俺だったりする。

 懸念はルネの体力が移動に耐えるかどうかって所。

 石器時代の野生児上りの俺と文明社会育ちのルネじゃ体力格差が半端ない。

 叩き上げの48歳のベテラン冒険者と12歳の男の娘じゃ体力差は大きいよな。

 野営の準備をしないとダメだし、大物用の狩りの仕掛けも考えないとだし。

 今までの俺だと単独行動だったからその場の勢いでなんとかしていたけれど、6人で行動するなら必要物資も増える。

 メシ、着替え、武器の予備、宿営用の装備、大切なのは食料と飲料。

 魔法袋があるから大荷物を抱えて移動する必要が無いのが救い。

 オッサンに必要な物を聞いて朝からドタバタ仕込んで昼頃に出発。

 ルネの足に合わせての移動だったから、モンスターの出没する森林地帯からちょっと離れた辺りで野営。

 例の城壁用の石でチョットした城壁を造って、内側に魔法袋に収納しておいた幌馬車を設置。テントじゃなく幌馬車の中で睡眠だ。

 一応、警戒の為に交代で仮眠ということになるのだけれど、ここで特異体質に気が付いた。

 故郷の村にいた頃だと兎や猪の小さい奴を狙って罠を張って、樹上で仮眠しながら待機していたのだけれどさ。どうやら3時間くらい寝ると体力的には十分みたいなのよ。他人と一緒に狩りに出て初めてそれが異常なのだと気が付いたよ・・・。

 ふむう、ひょっとして大きな狼だと思っていたのが実は体内に魔石を持つ魔狼って奴で、ガキのことから追いかけっこしていた俺は気がつかないうちにレベルアップしていったのだろうかね?

 サイクロプスを倒したからレベルが上がったというのはあるだろうけれど、それ以前からソコソコ高いレベルがあったのかな。体力回復が早いようなスキルでもあるのかいな。

 野営の時には干し肉と硬いパンってのが定番のメシらしいけれど、魔法袋があるのならそんな事をしないで済む。

 ベルとリタに用意しておいて貰った料理を魔法袋に放り込んでおけばいいだけ。

 本日の晩飯は水溶き小麦粉の薄いパンでベーコン、チーズ、野菜を包んだクレープ風。

 それに鍋ごとの野菜と卵のスープ。

 焚火を囲んで机と椅子を並べて、呑気にメシを食う野営。

 レジャーでキャンプしているようなモンだね。

 オッサン連中はエールの一つも飲みたそうな顔をしていたけれどアル中で落ちぶれた奴がいるから禁酒!奴隷と主の関係は絶対なのよん。


 夜明け前あたりから厚切りベーコンを炙った奴とスープの朝飯を済ませて、城壁を収納して行動開始。

 ベテランのオッサン連中は地理に明るいから特に悩むこともなくズンズン進んでいく。

 概ね狩場というのはパーティ単位で決まって来るそうだ。元Bランカーのオッサンはちゃんと良い場所で狩りをしていた模様。

 鬱蒼とした森林地帯の藪を鉈で切り開きつつ進んで行く。

 藪をつつくと蛇ならぬ角兎が飛び出す。

 ベテラン連中は余裕でいなして逆襲して仕留めて行く。

 全く危なげない。

 モンスターの出没する森といっても普通の獣も生息していて、猪や鹿なんかもいるのな。

 でも、罠でもないと逃げる獣を追いかけて仕留めるのはちょっと無理。

 オッサンの馴染みの狩場に着いたら、岩塩と途中で狩った獲物を解体して囮の餌にして設置。これで暫く木陰に隠れて待ち伏せするらしい。

 待つ事暫し。

 やって来たのはラプトルだった。恐竜映画でお馴染みのアレだ。後ろ足にゴッツイ爪が目立つ。これが4匹の群れ。


「ウラァァッ!」


 アル中が雄叫びを上げて突進。


 ガウウッ!


 威嚇するラプトルだったけれど、横からギャンブル狂が槍を投擲。

 これがあっさりと横っ腹に命中。


 ギャアッ!


 横倒しになって絶叫を上げながら悶絶するラプトル。


 キシャッ!


 一番大きな個体が怒り狂ってギャンブルに襲い掛かるけれど、そこに突進していたアル中が突っ込んで槍を突き立てる。


 ギャッ!


 胸の真ん中に槍を突き立てられたラプトルは血反吐を吐き出す。

 そこを容赦なくアル中はメッタ刺しで仕留めにかかる。

 それを見た残り2匹は逃げにかかる。

 手前にいた個体に槍が2本突き刺さる。オッサンと結婚詐欺が投じたものだ。


 ガッ!


 血反吐を吐いて転げる個体に追撃の槍が突き刺さる。

 でも、残る1匹は逃亡に成功。


「まずはラプトル3匹ですな。冒険者ギルドに売れば150万というとこです。

 これは幸先良いです。一回の狩りにしては上々の戦果です」


 ドヤ顔のオッサンである。


「連携良いんだな、前から組んでいたの?」


「軍で槍兵の訓練を受けた者だと皆が同じような動きを仕込まれています。

 初回でもある程度息を合わせる事も出来るのですよ。

 冒険者予備校上りの初心者だとこうはいきませんな」


 ドヤ顔のオッサンである。

 ちょっとウザい。


「場所を代えましょう、血の匂いが流れると余計な有象無象が寄って来てかないませんからな」


 血の匂いがすると取り敢えず死肉漁りの獣が寄って来てしまうらしい。

 カネにならないようなのも来るから消耗を避ける為にも移動してしまうのが得策なんだそうだ。

 かくしてまた藪を切り開きつつ移動を開始。

 途中で角兎がまた飛び出すけれど余裕でサクッと。

 トボトボと歩いて開けた場所に到着。野戦で正面からぶつかるには良いのだろうけれど。


「ここでまた仕掛けを作ります」


 オッサンが言ったのだけれど、俺は異議申し立て。


「うーん、四方が木に囲まれている場所がいい。ここは半端に開けすぎ」


「そうですかい?」


 という訳で少し移動して、ちょっとした広場の四方を木々で囲まれている場所を発見。

 ポンコツ組に木登りさせて手頃な枝上に待機させて。

 持ち込んでいた誘引剤をばら撒いて、ついでに先程のラプトルの腹を裂いて膀胱を取りしておいた尿もばら撒く。

 誘引剤というのも尿瓶に採取しておいたベルとリタの・・・。

 お姉さん達が真っ赤になって恥ずかしそうな顔で用意してくれていたもの。いやー、ガキンチョのお願いを断れずに心底恥ずかしそうな顔で受け入れてくれたよ。

 ゴブリンやオークというのは女の匂いに寄って来るそうだ。

 フェロモンに誘引されるのであれば、これが威力を発揮する筈だ。それなりに離れていた場所にいたのだろうゴブはジーナとリタに反応してやって来ていたのだし。

 でも、ゴブリンがホイホイと寄って来るのは面白くない。それは邪魔なだけ。そこでラプトルの尿だ。ゴブにとってラプトルは捕食者になる相手。ラプトルの匂いをゴブは嫌う筈だ。

 誘引剤をばら撒いたらルネに風魔法で匂いを発散させて、俺も枝の上で待機。


 聞いた話だとこの世界のオークは3mくらいの身長。上半身が肥大気味の二足歩行の猪と言った存在らしい。毛皮がゴワゴワしていて、皮下脂肪は分厚い。この為に普通の弓矢、剣、槍だと致命傷を与えるのが難しい。そして、牙による噛みつきは金属甲冑を簡単に貫通させる。膂力も優れていて突進してのタックルや上半身の発達した筋肉からのパンチは当たり所が悪いと一撃で致命傷になりかねない。通常6匹以上の群れで行動することが多く、C級冒険者パーティ以上が推奨されている。

 C級でもジーナは押し倒されて背中をガブリと食い千切られたけれどさ。生還出来たのは殆ど奇跡だと本人が言っている。


 待つ事しばし、時計なんて無いから時間なんて知らん。

 でも、ゴソゴソと木々を掻き分けてやってきました巨大な影。


 ブギィ?

 ブヒッ!?

 ブヒ、ブヒィ!

 ブギィィィ~ッ!


 なんだか喜んでいるような二足歩行の猪。

 容貌魁偉って奴だね、しかも臭いの。風呂なんて入らないんだろうなァ。

 俺の横っちょにしがみ付いていたルネに視線で合図。

 怯えた顔でコクンと頷いたルネ。怯えたルネも可愛いなァ。サイクロプスの時を思い出すよ。

 ルネが右手を差し出してなにやらゴニョゴニョ呟く。


 ピカッ!

 ゴーン!


 閃光と共に落雷の音。

 電撃系でスタンという痺れさせて行動不能にさせる魔法。

 ルネだと魔狼の群れを丸ごと殺す様な威力の術は出来そうにないらしい。ましてやオークだと猶更。

 そこでひとまずはスタンを一発。さらに、続けて二発目。


 ピカッ!

 ゴーン!


 うん、オーク6匹の群れは無言でバタバタと倒れて行った。


「ルネ、偉い!

 野郎ども!仕留めろ!」


「うおおっ!」


「殺したらぁ!」


「でええいっ!」


「だりゃあっ」


 慌てて木から降りて、オークの群れに突撃の奴隷集団と俺。

 意識が飛んでいるオークだと仰向けにして喉元を突き刺すのが良いそうだ。

 俺的には使いにくい直刀だけれど突き立てるのならコレ。

 ポンコツ集団もグッサグッサと突きまくっていく。


「大将、こりゃいい。強力な術者がいるとオーク相手でも楽。

 ルネ嬢さんは見事ですな!」


 オッサン集団はルネを女の子だと思い込んでいる件。

 そのルネは危ないから樹上で待機させている。ルネが近接戦闘なんてする必要ないもんな。


「こりゃいい、オークの群れを丸ごとなんて2年ぶりだぜ」


「ああ、オークなら1匹仕留めりゃ大成功ってもんだしな」


「ラプトル3匹にオーク6匹。しかも、損害無しだぜっ」


「ここでもう一押しかな?場所変えるべき?」


「大将、帰って祝宴ですぜ。こりゃ快挙だ」


「そうなんだ・・・」


 うーん、これで快挙なんだね。全くピンと来ない件。

 トコトコ帰ることにしたのだけれど、ルネがグッタリ気味で足取りがフラフラ。魔法って負担が重いのかな。単に体力が無いだけか。ヨイショッと肩に担いで運んでしまう。山賊が女を搔っ攫っていく時の抱え方ね。でへへっ、ルネは俺のモンだ~っと。

 でも、帰路にも色々出て来た。


「大将、やべえっ。火炎蜥蜴だ!」


 見た目はコモドドラゴンって感じのデカイ蜥蜴。でも、火炎を吐き出すという面倒さ。一説には屁を口から吐いて火炎にしているという。実際に一度火を吐いたら暫く吐けないそうだ。それに火炎を吐いた時に臭い匂いも漂うと。別に魔法的な生物という訳じゃないらしい。


「ええい、メンドクサイ!」


 抱えていたルネを降ろして。

 ポンコツ連中が投擲用に使っている槍を俺も持っているから問答無用でぶん投げた。

 ヒュッと飛んで行った槍はアッサリと首元に命中。


「おお、俺は偉いな。もう一丁!」


 ヒュンと飛んで行った槍は見事にグサリと命中。


 グウッ!!


 うん、口から血を流して絶命したらしい。獲物一匹追加っと。

 ああ、確かに蜥蜴の口から少しオナラの匂いがするかも。

 少し歩いたらまた蜥蜴さんが出て来てやっぱり槍の餌食になってくれた。


「この蜥蜴って美味いの?」


「塩を振って串焼きにすると良い酒のつまみになりますな」(ホクホク顔)


「そりゃいいや、串焼きか」


 クア~ッ!


 藪から棒にデッカイ駝鳥!?印象的には体高で5mくらいありそうな巨大感!!


「ディアトリマです!オークを餌にしやがるヤバい奴です!魔法をもう一発お願いできますか?」


「いや、戦斧を買いなおしたから試してみたい。俺が行くわ」


 これは絶対に旨いだろう。唐揚げ食いてぇっ!


「にゃははっ!唐揚げになっちまえ~っ!」


 ケエッ~!


 怪鳥は叫び越えも妙だった件。

 ガツッと鈍い感覚が手に伝わって来る。斧の刃が欠けてしまった。もっとも怪鳥の首はそスパッと切れたけど。


「うん、これで唐揚げだぁ!」


 既に頭の中が唐揚げになってる。


「大将、唐揚げってなんですかい?」


「肉に塩と山椒とニンニク、生姜をまぶして小麦粉つけて油で揚げた奴。旨いんだよなあ!」


「ゴクンッ、旨いんですね・・・」


 うん完全に食肉の調達行動になっているな。まあ、間違っていないか。

 ルネを抱き上げて半ばスキップで歩いていたら、オッサン集団も喜々としてスキップしてやんの。


「肉、肉、肉~っ」


「肉だーっ」


「「「肉だーっ」」」


 どうやら俺もポンコツらしい・・・。


 かくして2泊3日の狩り旅行を終えて街に帰還。森林地帯を出たらルネを荷車に乗せてオッサン連中に引かせて帰ったりして。ルネは完全にお嬢様扱いされてんの。

 商人ギルドに行って素材を出したんだけれどさ。

 ラプトル、火炎蜥蜴、ディアトリマ、オークについてはそれぞれ1匹分の半身を持ち帰りたいっていったら、サクッと解体して渡してくれた。

 素材を解体して売ることも出来るんだね。

 それでもオークがまるッと5匹の入荷はギルドとしては嬉しいらしい。群れ丸ごとっていうのが珍しいのはホントらしいね。

 丸ごとだった場合、標準的にラプトルで@100万、火炎蜥蜴で@200万、オークで@400万、ディアトリマで@600万だってさ。

 魔石が値段の7割くらいを占めるそうだけれど、もう出来高を考えると胸やけしそうだ。


 受付のお姉さんに串焼きパーティするけれど来る?って声かけたら「是非っ!」と力強く頷かれた。

 香辛料各種とオリーブ油、卵を買い込んでっと。


「肉、肉、肉~っ」


 妙なテンションでスキップしながら帰宅。受付のお姉さんは少し遅れて業務を終えてから来るってさ。

 家に帰ればベル、リタ、ジーナが大人しくお留守番していた。

 既にポージョン作成を始めていたらしく漢方薬みたいな匂いが漂っていた。生薬成分由来のお薬なのね。薬草が原料だったけね。

 ベルが俺とルネを洗浄魔法でスッキリ綺麗にしてくれてサッパリ。奴隷連中には「水浴びしなさいっ」てアッサリ。

 すっかりテンションがおかしくなっていた俺とルネは「肉パーティだぁ!」って盛り上がってしまってベルとリタが怪訝な顔。

 ラプトル、火炎蜥蜴、ディアトリマ、オークの半身の肉を出すと目がテンになった。

 リタにはオークの骨と人参、玉葱、セロリでスープを作るように言ってだ。

 俺とベル、ルネでラプトル、火炎蜥蜴、ディアトリマを使って、パプリカや西洋風の長ネギを使って焼き鳥風の串をセッセと作る。

 塩と山椒のスタンダート版。生姜とニンニクも加えた風味の奴も。

 沐浴を終えたオッサン連中にも手伝わせたった。

 そして大事な唐揚げの準備。

 ワインにすりおろした生姜、ニンニク、玉葱と塩にワインビネガーを混ぜた漬け汁を用意して、一口大に切ったラプトル、火炎蜥蜴、ディアトリマの肉を漬けておきます。

 そして薄く削ぎ切りにしたオーク肉も同じ漬け汁に漬けてみた。

 ふうっ、下準備ができたぜっ!

 なんとなく準備出来たら受付のお姉さんが、商人ギルドの事務長氏と出納長の領主の末弟氏まで連れて来た。ありゃ、偉いさんじゃん!

 いいのか、むさ苦しい奴隷のオッサンと一緒で?

 この屋敷は庭にテーブルと椅子があって野外でメシが食えるの。それを期待して焼き鳥なんだけれどさ。

 偉いさんはチャンと椅子に座って貰って、オッサン連中にはゴザ敷いて座らせた。

 庭に簡易竈を作って木炭で火を起こしてイザ、モンスター素材の焼き鳥。

 でも、焼く段になったら48歳のオッサンが妙な迫力で「私が焼きます!」と言い出した。なんだか串焼きに拘りがあるみたい・・・。

 それはそれとして、もう一つ竈を用意してそちらは鉄鍋にオリーブ油を注いて熱してだ。いい塩梅になってきたら漬け汁に浸しておいた肉を出して水気を切って小麦粉まぶして。

 ジュッ!

 うん、いい音だ。

 少ししたら香しい香りも漂って来た。

 焼き鳥もいい塩梅に煙と肉の焼ける脂の匂い!


「かーっ!こりゃいい匂いですな!」


 焼き鳥番長と化していたオッサンの怪気炎!怖いわっ!

 なお、唐揚げはちゃんと二度揚げしたぞ。

 焼き鳥と唐揚げがある程度出来たら、ひとまず乾杯!で宴会スタート!


「「「「肉だーっ」」」」


「こっちの揚げた奴はライムの搾り汁か、パセリ、粉チーズでもかけてみてください。

 ワサビとからしもあります、少し風味付けにどうぞ。辛いから沢山かけると大変ですからね!」


 うん、これは絶対に旨い奴だ!


「これは良いですな。肉汁が閉じ込められています」


「パセリと粉チーズを掛けるのが好き!」


「ライムもさっぱりして良いと思いますよ。

 ああ、ワサビがツーンと来ました・・・でも、これはワインとよく合いますね。

 うん、これは美味しい。ディアトリマですか、美味しい肉ですね」


 事務長さん、受付さん、末弟さんの順。


「ラプトルとディアトリマって似てますね。火炎蜥蜴って淡泊です」


 受付さんったら評論家になっちった。


「た、た、大将!あっしらにも酒を!酒を!」


「お前って酒で身を持ち崩して奴隷になったんだろう!懲りないな、エール一杯限定な」


「ヒャッハーッ、エールだ!」


「あれっ、奴隷になって肉をたらふく食ってエールも付くのか?」


「もっと早く奴隷になってりゃ良かった!?」


「・・・いや、お前な」


「こうしてネギと肉、パプリカと肉という串焼きも良い物ですね。

 ラプトルはこんなに美味しいものだったのですね。白ワインによく合います。

 火炎蜥蜴は淡泊な味わいですね・・・。

 うん、ディアトリマは脂の乗り具合が良い」


 末弟氏も評論家になって来たぞ。

 では、お次。

 漬け汁に漬けておいたオーク肉登場!

 こちらは鉄板を使ってバター焼き。それと卵を絡めてピカタも!


「これはオークのステーキですかな?

 卵で絡めるのは珍しい・・・」


「贅沢ですっ!贅沢ですっ!」


「うーん、卵で絡めるステーキですか・・・。

 おや、スープもオークですか?

 成程、これは贅沢ですね」


 オークステーキと一緒に出したスープの出汁はオークの骨だからね。


「もう一つ試してみましょうか?」


 オーク肉のチーズ挟みフリッターね。


「・・・これはなんとも!」


「蕩けます、チーズが蕩けます!

 こんな・・・贅沢ですっ!贅沢ですっ!」


「これは素晴らしいものですね!

 領主のパーティでも出ませんっ。

 これを持ち帰ることは出来ますか?」


「持ち帰ってお腹壊されると怖いので、料理人さんを寄こしてください。

 作り方なら提示しますから・・・」


「ええ、それで結構です。それでは明日の昼前にお願いしますね」


 末弟様、これを領主様のパーティで出す気かな。


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