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第4話  お姉ちゃん登場


 いい塩梅に角兎が狩れていたからちょっと早めに昼飯にした。

 妙な獣がウヨウヨ出るような場所でのメシ。

 味気ないメシになるのかと言えば違う。

 ここでも城壁用の石に活躍してもらうつもり満々の俺です。

 ザックリと15m四方で高さ10mくらいの城壁をサクッと構築。大容量の魔法袋は便利この上ない、石なんてホイホイ収納出来てしまう。んで、ルネに城壁の上で監視当番させておく。

 その城壁の内側で石組の竈を作ってさ。

 獲れたての兎さんをちょっと血抜きして解体してさ。うん、俺は基本野生児です。

 兎肉を薄く削ぎ切りにして、玉葱を薄く切って、キャベツも刻んで鍋に放り込んでスープに仕立ててだ。味付けはリタにお任せ。

 更にそこらへんで拾っておいた枝に切り取った兎肉を刺して、塩と山椒をまぶしてさ。後はジーナに焼かせておいて。

 そして、硬いパンは絶対に嫌だったので買い込んでおいた乾燥パスタを使う。鍋で茹でてオリーブオイルと刻んだバシル、塩、山椒で味を調えましてだ。粉チーズも用意したよん。

 水瓶を魔法袋に入れてあるから水の調達に悩むことも無い。

 うん、周りにモンスターがウヨウヨいる筈の場所で呑気にバーベキューやってます。

 城壁用の石って便利だなッと。


「ぬははっ!うめえっ!」


「モンスターの出る森の中で串焼きなんて考えたことも無かったよ」


「スープの味はお口に合いますか、旦那様」


「こんなに角兎を贅沢に食べていいのかな?」


「いいじゃねえの、旨けりゃ正義だ!ぬははっ!」


 食うや食わずの世界よさらば!

 俺は豪勢に肉を喰らって暮らすんだい!

 レストランで5万も取られるような飯を自前でドーンだ!

 うーん、いいなぁ!

 一緒にメシ食っているメンツが全員お手付きだなんて、前世じゃ想像もできなかったよ。

 転生してからの12年は一体何だったのさ。

 俺は幸せだぁ!

 もう、転生人生大勝利でいいじゃんさ。

 4人でメシ食って、すっかり満腹。

 もう、本日の労働は終了でいいかなって。お家帰ったらルネとイチャコラするんだい。

 もう少し早くこの境遇になっていたら、妹は死なずに済んだのにな・・・。

 人生って難しいよ。手に負えねえ感じがする。

 前世も加えると通算で34歳なんだよな、俺。

 でも、人生が儘ならねえ。

 絶望的な極貧から、一気に大金持ちってどんな人生だよ。


 メシ食い終わって後始末してさ。

 帰りながら兎狩りでもしようかってタイミングで事件発生。

 抗争の気配が近づいて来る。

 人間の悲鳴と狼らしい雄叫び。


「拙いね。旦那、ありゃ魔狼の声だよ。こんな森の浅い場所には滅多に来ないってのに!」


「駆け出しの冒険者がうっかり魔狼の縄張りに入り込んで追われながらここ迄引っ張ったのでしょう。街にまで引っ張って行かれるのは困りものです。

 先程の城壁を設置出来ますか?高い場所から弓矢なり槍なりを使いましょう。この人数では普通に遣り合えば殺されるだけです。Cランクの冒険者が6人くらいいないと対抗しきれません」


「うん、城壁ね」


 そう言えば俺のレベルについて二人に話していないな。多分だけれど俺のレベルだと狼くらい叩き殺せそうなもんだけれど。

 それはそれとして切羽詰まった二人の言う通りに魔法袋から石を出して積み上げてしまう。本当に便利な魔法袋だ。


「まって、ジョン君。お姉ちゃんの声だよっ、魔力も姉さんの気配がするんだ!

 お願い、お姉ちゃんを助けて!」


「なんと!そりゃ行かなきゃ」


 うん、こんなに可愛いルネの姉なら美少女に間違いない。絶対に嫁にしないと!

 行かねばならぬ!絶対に!

 待ってろ、嫁!


「ちょっと旦那!相手は巨体なんだよ、私達だけじゃ分が悪いんだ!」


「旦那様、確かに勝ち目がありませんよ?それでも行くのですか!」


 熟女二人は必死だね。


「ルネのお姉ちゃんなら俺の嫁にしたいもん、絶対に助けるよ」


 でも、妙にお気楽な俺がいる。サイクロプスに追い回された時の脅威に比べるとデカイ狼くらいじゃね。どうでもいいって。


「旦那!死んじまったら元も子も無いんだよ!」


「旦那様、私をお捨てになるのですか?」


「ああ、そこで待ってたら」


 うん、もうどうでもいいや。


「ルネ、行くよ!」


「うん!」


 普段は可憐っていう感じのルネがキリリッとした顔になってタッタカ駆け出す。

 正直、正確な場所がワカラン俺はついて行くだけしかない。

 タッタカ駆けるルネが意外に速い! ちょっと想像できないほどに。

 野生児と自覚している俺でも本気で走っていてもドッコイドッコイという速さ。

 実は武闘派だったのかね、ルネって。可愛いのにさ。


 ウォォーン!

 グオッ!

 グルルッ!

 ガオッ!


 いた!

 デッカイ狼が5頭ほど木を取り囲んで吠え立てている。

 木の上にはローブ姿の女の子。ローブから顔を出しているから緑の長い髪からエルフ耳が覗いている。顔はルネをキリリとさせて大人びた風情にしたような印象。

 クールなルネって感じか。

 うん、美少女だ。可愛いっていうよりも美人系だね。

 カーッ、嫁にしてぇ!


「お姉ちゃん!大丈夫?ケガしてない?」


「ルネ!?何でこんな場所に、殺されてしまいます!すぐに逃げなさい!」


 俺が見惚れていたら姉弟愛が炸裂してた。


「大丈夫、お姉ちゃんを助けるんだ!

 エイッ!死んでしまえっ!」


 ピカッ!

 ガラガラッ、ドーン!


「ぬわっ」


 ビックリしたぁ、ルネが切れると怖っ。いきなり雷撃がドーンだよ。


 ギャンッ!

 グアッ!


 派手な閃光の割には2頭に直撃して悲鳴を上げただけ。別に黒焦げって訳じゃない。

 静電気でも帯びたのかモフモフが逆立って滑稽な感じに変わっただけ。


「ダメッ、ルネ!それでは魔力が足りなくなります。

 電撃は魔狼の毛皮を貫き難いのです」


 木の枝に乗っているルネ姉が切羽詰まった口調。多分、本人は既に魔力切れなのだろうな、経験者は語るって奴。

 ノンビリ眺めてしまっている俺。

 実は違和感アリアリ。

 だって、ウチのご近所にいた狼の大きい方の連中と同じだったんだよ、魔狼ってさ。

 ワサビの粉末をぶつけて追い払っていた奴と同じなんだよ。

 俺ってガキの頃からモンスターと追いかけっこしてたの??

 なんだねぇ・・・。

 ええっ、Cランク冒険者が何人必要なんだけか。


「そこのあなた!弟を連れて早く逃げてください!死んでしまいます!逃げてっ!」


 ルネ姉が切羽詰まって叫ぶ姿。

 綺麗だなぁ。


「ジョン君、ボクじゃアレを殺せないっ。お姉ちゃんを助けて!お願いだから!」


「うん、いいよ。大丈夫、なんとでもなるからさ」


 なんだかすっかり肩の力が抜けている件。

 本日すっかりお気に入りになった戦斧を使ってみよう。そうしよう。

 ルネの電撃に怒り狂った一頭が突っ込んで来る。


「ていっ!」


 ガンッ!

 パリンッ!

 ギャンッ・・・。


 金属がぶつかり合った感じの嫌な音。だあっ、斧の刃の部分が砕けた!

 なんだよ、安物掴まされたかな。

 でも、魔狼の頭が潰れたからヨシとしよう。

 斧の反対側と先端にピック状の尖った部分があるからまだ戦えるさ。


「ホイ、お次だ」


 ガシッ!

 ギャッ!

 ポキンッ!


「ダーッ、安物掴まされたーっ!

 なんだよ、簡単にポンポン折れやがって!」


 斧の反対側にあった鋭い突起がアッサリ折れやがんのよ。


「ダウッ!次は先端部分で突いたる!」


 ギャッ!

 ポキンッ!


「くっそうっ、あの武器屋め!クズを高いカネで売り付けやがった!」


 バシッ!

 ベキッ!

 グァァッ!


 単なる棍棒と化した元戦斧を棍棒として殴り付けたら、これまたアッサリへし折れやんのよ。ったくよ!

 代わりの武器はっていうと、昨日の盾と直刀か。あんまりシックリ来ないんだよな。

 取りあえずは盾でぶん殴ってみようか。


「でいっ!」


 バシッ!

 グアッ!


 ぶん殴ったら盾が砕けて粉々になった件。ダメじゃん。

 狼は嫌そうな顔?してるけれど生きてる。

 なんとなく涙目になっているような気がする・・・気のせいかな。

 盾がダメになったから、直刀の出番か。


「ていッ!」


 面倒だからブン投げただけ。


 ギャンッ!


 うん、普通に突き刺さって・・・ヒクヒクしてるからその内に死ぬだろう。


「他にもいるのかな?」


 パッと見た所これで状況終了って感じだけれど。


「いいえ、もういません。当面の脅威は去りました。

 あなたにお礼をしなければいけませんね。

 私はルネの3歳上の姉でベルと申します」


「俺はジョン、12歳ね。

 この街の名誉市民勲章を貰った身の上。

 サイクロプスを単独で3匹討伐した男!(ビシッ!)

 ルネの恋人にして、ベルお姉さんを妻に迎える男(ビシッ!)」


「・・・何を言っているのですか?」


 露骨に醒め切った対応されたった。うん、所詮は前世でも恋人なんていなかったさ。

 30歳まで童貞で魔法使いになるのかって本気で思ってた。


「実に醒めた対応有難う。

 でもさ、俺が助けなければお姉さんはココで死んでいたのは理解してもらえるよね?」


「それは、そうですが・・・。

 冒険者同士の救援なら相応の金銭で対価を払うのではありませんか?」


「12歳の俺が冒険者の訳がないでしょ。

 商人ギルドに登録している正規の商人だよ、俺。

 冒険者が商人に救われたんだ。お姉さんは俺にその命の代償を払うべきだよね。

 俺の嫁になって子供産んで育てて欲しいなァってね。

 サイクロプスの素材が大金になったから既に2億を超える資産がある。ルネとお姉さんを面倒見るのに問題なんて何もないよ」


「ルネ、この子は一体何を言っているのです?」


「ジョン君がサイクロプスを殺してくれたから僕は生きているんだよ、お姉ちゃん。

 商人ギルドで素材を売ったから大金を得ているのは本当だよ。

 それにレベル測定したら77もあったんだ。この国でも有数の強さなんじゃないかな。

 ボクね、誓約の魔法を使ったんだ。生涯、ジョン君の傍にいる、絶対に裏切らないって」


「・・・理解出来ない話ですが・・・。

 しかし、単独で魔狼を5匹瞬殺出来てしまったのは現実ですし。

 本当に私など妻に迎えていいのですか?男性にとって然して魅力があるとは思えませんが」


「ベル姉さんは既に男がいるとか?もう、他の男の子種を植え付けられてガキの相手なんてしてられねえ!とか?」


「これでも純潔です!尻軽な女ではありません!」


「じゃ決まりだね、ベル姉さんに魅力があるかどうかは俺が決めること。

 俺はベル姉さんにお嫁さんになった欲しいの!

 誓約して貰おうかな!俺の嫁になって、俺と将来の子供にだけ愛情を注いて裏切ること無しって感じでさ」


「神殿で正式な契約を締結して頂けますか?

 私の純潔と貞操を誓約する代わりに、私と子供の生活を保障すると」


「フーン、神殿ってそういうのがあるんだ。良いよ、それでさ」


 これで実際上はお姉さんの嫁入りが決定だね。

 俺としても生活費くらい出す気満々だぞ。

 魔狼の素材を魔法袋に回収して気分はスキップ状態で、熟女の待つ場所に戻ってからテクテクと街へ。

 ベル姉さんは6人でパーティを組んでいたのが、魔狼に襲撃されて魔法使いは足止めしろ!と勝手な事を言われて取り残される羽目になって。でも、魔力が切れて樹上に逃げ込んだそうだ。15歳の新人集団で魔法使いという物を過大評価していたメンツだったらしい。

 この姉弟は騎士家の側室腹の子供で土、水、火、風と万能型の魔法の才能があった。なまじ才能が有ったモンだから本妻とその子供達に嫉妬されて、結局は家から追い出されたという顛末。魔法の才能は貴重なのだけれど、それよりも本妻の実家のメンツが大きかったそうだ。

 お陰で綺麗な姉弟を嫁に出来たから、俺的にはラッキーだね。

 なお、ベル姉さんの方が器用で治癒魔法やポージョン作成までこなせるそうだ。ルネも練習すれば出来る筈なのにとはお姉さん。


 街に着いて、商人ギルドに寄って素材を渡した。

 夕方のオークションにかけて貰うことにして、支払いは明日ってことにした。

 オークションって商人が半狂乱でちょっと怖い件。

 本日の獲物は角兎が5匹と魔狼が5匹。

 兎さんが@40万、狼が@100万でここから税金が2割。

 なんだか異常にカネ回りが良い件。

 怖いんですけれど・・・。


「今日は魔狼もですか。幸先いいですねぇ」


 例の領主の末弟氏がホクホク顔だった。

 ベル姉さんを嫁にしたいから冒険者を引退させて商人として登録したいと言ったら、あっさりと妻という扱いで登録してくれちゃった。


「神殿だと15歳じゃないと結婚契約できませんが、商人ギルドの登録は年齢に制限はありませんよ。領主の人頭税の管理台帳上でベルさんを妻として算入するだけですのでね。ええ、この先まだ何人でも妻として登記できますよ。あなたには十分な財力がありますからね」


 ベル姉さんは呆然としていてあっさりと商人ジョンの妻として登録されていた。

 魔狼が5匹で500万ソルというのがショックだったらしい。

 冒険者だと冒険者ギルドに素材を売る場合、魔狼なら@50万、角兎で@20万。

 冒険者ギルドはこれを2倍で商人ギルドに卸す。

 差額で冒険者ギルドは情報収集や安価でポージョンなどの装備、治療行為を提供することをやっている。素材の転売で利ザヤを抜いておいて、冒険者へのサービス提供を行う互助会って感じ。

 商人が独自に狩りをやるならそうしたセーフティネットが皆無になる代わりに稼ぎも大きいという形。

 商人ギルドからすると仕入れ価格は冒険者ギルドでも自営の商人からでも変わらない。

 ベル姉さんとしては目の前で大金が流れて行くのにただ呆然。いくらで落札されるのかを確認しないで明日確認すれば良いというのもまた混乱の元らしい。

 ついでに信用できる宝石商を紹介してもらった。オークションの時間が近いから商人も集まっている時間だったんだね。そこでベル姉さんとルネに金のネックレスと指輪を買い込んだ。2人用で200万也の贅沢なお買い物。これでベル姉さんはまた呆然、ルネは大喜び。

 人間の感情表現って様々だね。

 商人ギルドで用を済ませたら神殿に行く必要が無くなった。

 神殿だと15歳からしか結婚を認めていない。幼いと出産時に死んでしまうことが多いから幼い頃の結婚を予防する意味があるらしい。

 国の法律的には年齢制限は無いそうだ。法的には領主税台帳上で既に俺とベル姉さんは夫婦になっている状態。

 でも、神殿で結婚の登録をするなら15歳未満は婚約契約という形になって、15歳になったら自動的に婚姻契約が有効になる・・・そうだ。

 婚約契約や結婚契約というのは定型文があって、夫は妻と子を食わせる義務を負い、妻は貞操を守りますというのと、どちらかが死んだ場合の遺産の扱いを規定するらしい。

 でも、神殿の結婚契約はあくまでも神殿における信徒台帳上の事で領主の人頭税とは無縁だそうだ。法的に意味はない。

 俺的にはベル姉さんは荒事に行かせたくないかなってね。魔法使いとしては才能があるかもしれないけれど、荒事には向いてない性格に思えるしさ。

 家でも借りるか買うかして、ベル姉さんとリタは籠の鳥にでもしておきたいかなって思う。

 二人を籠の鳥にしてしまうのなら、惜しげもなく使い潰せる戦力を追加したい。それを収容できる家が欲しいともなって来る。

 また商人ギルドに行って手頃な家は見つかったか聞いたら、庄屋の屋敷で空いているのが見つかったってさ。

 事務のお姉さんに案内されて馬車で現地へ。

 人口30万の街だからそれなりに広いんだね。

 屋敷というのは母屋が石造りの屋敷で、その他に木造の二階建てアパートみたいのと、木造二階建て一戸建ての離れ、馬や牛用に使える家畜小屋と鶏小屋。


「デッカイ豪邸だね。でも、戦闘奴隷を買い込んだ時にはこれくらい欲しいのか。これで行きましょう」


「即断なんですね・・・」


「戦闘奴隷を買い込んで、屋敷の管理のメイドも買い込んだら、これくらいじゃないと収容できないでしょ」


 生活に必要な物は明日にベル姉さんとリタで相談して調達してもらうとして。

 その前に冒険者ギルドへ。

 ベル姉さんを冒険者として廃業させて、私物をピックアップして引っ越し準備して貰わないと。

 私物のピックアップは襲われた隊商の連中から回収しておいた魔法袋の一つを渡して使って貰えばOKだろう。ついでに沢山ある穀物も少し渡しておこう。

 魔法袋はルネとリタにも渡しておこうかな。実は余り気味なのよ。高価なモンらしいのだけれど。


 んで、初めての冒険者ギルド。

 ベル姉さんは駆け出しの初心者の一人に過ぎない。

 リタとジーナは中堅処だった筈だ。それなりに知り合いもいるなら、こっちの二人だね。

 実際の冒険者ギルドは昔の西部劇に出て来る酒場みたいな感じというのか。うん、荒くれ物の巣窟って感じ。

 入口入ったら酒場で酒の匂いがスゲエ臭い。

 その奥の方に受付があって、その一角だけは役所って風情になっている。

 座っている受付嬢もどこか銀行の受付って感じだし。

 入ってからベル姉さんの後をくっ付いて行ったら、酔っ払いから早速絡まれた。


「なんでえ、ジーナじゃねえか。おめえ奴隷になったんじゃねえのか?」


「おう、俺が買ってやってもいいんだぞ!毎晩可愛がってやるよ、ぎゃはっは!」


「リタ、アンタ大丈夫だったの?心配だったよ・・・」


 酔っ払いの中にも素面なのもいるらしい件。

 オッサンばかりでも無く、熟女のおば様もいるし、若いのもいるのは当然か。


「ええ、私は元気にやっています。良い主に買って貰えました・・・」


「それならいいけれど・・・無理してないの?」


「無理をしない冒険者なんていないわよ。でも、ハウス・メイドに転職する事になりそうよ」


「アンタはその方が向いているのかもしれないね」


「そ、そうなのかしら・・・」


 リタの古馴染みなんだろう、優しそうなおば様。

 俺の方を見て目を細めた。


「なんでぇ、ジーナ!無視してんじゃねえぞ!奴隷風情が何様だ!気取りやがって!」


「私は商人に買って貰ったんだよ。もう、冒険者じゃないんだ。

 冒険者が商人の奴隷に手出しする気なのかい!うるさいんだよ!黙んな!」


「なんだとテメェ!ふざけんな、このアバズレ!」


「ヲイ、何をしておるか!商人相手に冒険者が狼藉など言語道断だ!

 除名されたいのか!この馬鹿もの!」


「ケッ、軍曹かよ!」


「チッ!」


 酔っ払いの無頼漢って感じの冒険者2名と制したのはスキンヘッドのゴッツイおっさん。


「何の御用でしょうか、商人殿」


「うん、このベルを冒険者から廃業させたいというのが一つ。

 そして、彼女にポージョン工房をやらせようと思っているんで、薬草の採取を定期クエストしたいのだけれど対応できるか確認したいんだ」


「そういう事でしたら応接の方へご案内します。

 事務長と条件を詰めて頂きます」


「待ってください、軍曹殿。

 ベルさんのパーティはオーク狩りを受注して誰も戻っていません!」


 受付のお姉さんが割って入って来た。

 何だか雲行きが怪しいねえ・・・。



「なんだい奥方、オーク狩りなんて受けていたのかい!」


「無謀に過ぎます。

 15歳の新人冒険者が何故そんなクエストを受託できるのです!

 おかしいじゃありませんか!どうなっているのです軍曹殿」


 ジーナとリタが目の色変えた。

 ジーナはオークに背中を齧られたんだっけか。


「自称男爵家の3男とやらがCランク昇進の為に無理を承知で受注したのです。

 魔法使いがいれば何でも出来ると勘違いしていたオメデタイ人間だったようですね。

 Ⅾランカーが何故オーク討伐を受託出来たのが不明ですが」


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