私は相も変わらず生きている
おひさです。2作目です。よろしくお願いします。
ーークチャックチャッ
彼と出会ったのはいつだったかと思い出しながら私は食事を続ける。今の私の食べ方が少し下品だってことは自覚はしている。昔から言われてきたことだ。けど、手を止めようとは思わない。ああ、思い出してきた。そういえばあの時も食べ方が汚かった……
ーークチャクチャ
「おまえ、たべるときは口をとじてたべないとだめなんだぞ!」
「えっ!け、けど、お口をとじるとたべづらいよ?」
私はこの頃から食べ方をよくいじられていた。まあ、いじられる理由はそれだけじゃなくて私自身の性根が臆病で気弱だったからだろう。その上泣き虫でもあったからほんとによく泣かされた。さぞ、私は周りから見ていじりやすかったことだろう。この頃からの泣き虫とかの直したいところは今も直ってなくて私が泣けばいつも彼が来てくれた。
「だめなもんはだめだ!せーんせいにいってやろっ。」
「えっ、えっ?な、なんでそうなるの?わたしだめなことしてないよ?」
ああ、今にも泣きそうだ。けど、そんな時は彼が何時でもそばにいてくれる。
「おい!男が女の子をなかせるな!」
「わ!なんだよ!きゅうにくちだしてくるなよ!」
「なかせるな!!!」
「ふ、ふん!どうせそいつのことがすきだからでてきたんだろ?みんなにい言いふらしてやる。」
「……だいじょうぶだった?あいつにへんなことされてない?」
ーーポタッ
「う、ゔん。」
「え、えっ。な、なかないで!」
嬉しい。この涙は決して悲しみからくる涙じゃない。あの頃は分からなかったけど、今ならはっきりと分かる。あの涙は歓喜の涙だ。きっとこの人は私の運命の人であるという確信に対する喜び。普通なら一生をかけても手に入らないであろうものを私この年で手に入れた。そのことに対する優越感、運命の人とこれから先はずっと一緒であることの充足感で満ちて私の心はぐちゃぐちゃだった。それをあの頃の未熟な私の心では理解することができなかった。それからというもの、もちろん当然ではあるが私と彼はずっと一緒だった。
ーーギリギリ
……固い
「今日も美味しそうに食べてるな。」
「え!そうかな?」
彼だ。
「うん、見ているこっちにも美味しさが伝わってきたよ。」
「ありがとう。」
「ううん、こちらこそありがとう。」
「?どういうこと?」
「うーん、なんて言ったらいいんだろうね?君が心を許してくれてるのが嬉しいからかな?」
「もっと分からなくなったよ?」
「そうだね……もっと簡単に言うと君のことが好き、だからかな。」
「え?え、……えっ!?ほ、ほんとに?」
「はは、そんなに驚かなくても。」
「だって、だって!」
本当に嬉しかった。彼が私のことを好きなのはわかっていたことではあるけどそれでもやっぱり嬉しかった。言ってくれたことが嬉しかった。……こうして私達は名実共に恋人になった。恋人になってからはなんだか今まで以上に幸せな気がした。より一層心が近づいた気分だった。たとえ、会えない時間があっても寂しくなんかない。だって心が繋がってるんだから。距離なんて関係ない。
「ああ、幸せ。」
そうだ!!距離なんて関係なかった!いつでも私達は一緒!たとえ、彼が死んじゃってもそのことに変わりはない!!
「……はは、あはは、あアハハああっははっはああはっははははっはっははっはっははははハアはははあッハッはああっはハッハははああははっはあ……!今日は本当の本っっ当に良い日だ!彼との絶対的な絆は証明されたし、すっごく美味しいものだって食べられた。どっちもあなたのおかげだよ!?フーッ、フーッ、……ハァー、ありがとう。」
やっと落ち着いてきた。彼との愛が絶対だって分かって柄にもなく興奮してしまった。やっぱり愛の証明は何歳であっても、どんなものであっても嬉しくなってしまうものなんだろう。
「ふふっ。」
……流石にそろそろ掃除をしないとだめだろう。だって、あかすぎる。暴力的なまでにあかい。彩ると染めあげるとかそんな言葉では言い表せないぐらいにあかい。私の食べ方が汚いせいだ。とはいえ、彼の好きと言ってくれたこの食べ方はもう変えることなんてできない。
「あなたが死んだ時は少し私泣いたんだよ?もうあなたと話すことなんてできないから。何だったら今でも少しね。できたらあなたには今、生きて一緒にいてほしかったなあ。」
私は大量の血と肉で汚れたテーブルを片付けながら彼に聴かせるつもりでひとりごちる。……彼は今日足を滑らして死んだ。打ちどころが悪かったのか彼は即死していた。死ぬ直前まで私と普通に話してたのに目の前で足を滑らせて死んだ。死んですぐはもちろん戸惑った。けど戸惑ってる時間はそう長くはならなかった。皮肉にも彼が死んで私は、やっと心が繋がってるっていうことの正しい意味が分かった。死でさえも私達二人は断ちえない。
「ふふ、あなたもそう思うよね?」
彼が死んだ程度で私達は何も変わりはしない、愛し合ってることに変わりがなければ何ら問題はない。そこまで考えて自分に問題がないことを確認して、今度はこれからのことを考え始めた。初めは彼の後を追おうかとも思った。
「でも、そんなこと私がしたらあなたは悲しむよね……」
だから、直ぐにその考えは捨てた。代わりにこれからはやりたいことやって楽しく生きていこう。私があなたのおかげで楽しく過ごせているってことと彼への土産話のためにも私のこれからを見せて聴かせたい。行ったことのないところに行って食べたこともないものを食べて彼に教えよう。
「……」
そう考えたからなのか、私は目の前の死体にひどく目を引かれた……人の味にひどく興味を引かれた。食べたら私は死ぬかもしれない、けど別に彼のあとを追おうとして食べるわけじゃない、ただの興味。ちょうどよくそこに死体があったから。私は私の意思で人を食べる。……そして回想に戻る。食事をしながら私は今までのことを思い出していた。途中少しだけ悲しくなってほんのり涙が出たり恋人になった日を思い出して喜んだり……私はこの間トリップしていた。私には元々そういう素質があったのか人の味は本当に美味しくて一口一口が私に昔を思い出させた。私にあってた……人の味というものを私は心から楽しめた。もちろん彼の家族とかには悪いとは思う。ただ、殻の皮を気にしたってしょうがないと私は思う。中身の入ってない肉体にどんな価値があって慮るんだろうか?そういった行為は無駄で無為じゃないか?だって私の愛は何も変わらない。
どうでしたか?前よりはマシになった気はしますけど多分、短編だから前よりもボロが出にくいだけでしょうね。まあ、そう言った話はまた活動報告でするので気が向けば後日覗きに来てみて下さい。後、評価やら感想をくれると自分が喜ぶのでしていただけると嬉しいです