7. それは十分に理解したんだが
「この町中で、それも私に向かって剣を抜くとは何事だァッ!」
「……いや違う。違うんだ」
完全に敵視されている。
「何が違うと言う! この剣が何よりの証拠であろうが!」
……そっ、そうだ。
まずは諍いの種を仕舞おう。
「【ステータス・クローズ】」
「……剣が消えただと?」
ふいに姿を消した剣に女騎士も驚いている。
「ふん、しかし私は確かに見たぞ。市中での戦力の誇示はご法度、抜刀など言うに及ばぬ」
「それは俺も分かってるけど――――
「ほぅ。それを承知で剣を抜いたという事は……決闘か? 貴様、この私とやり合おうと言うのか?!」
「だから違う。間違いなんだって――――
「良かろう! 少々変わったその剣で私を楽しませろ!」
俺の言う事をまるで聞いてねえな、此奴。
「聞けよ。決闘しねえんだっつの」
「二言は許さぬ! さあ決闘だ!」
「俺は一言も『やる』と言ってねえ!」
「行動を以って口上だ!」
「はぁ!? 何だよその暴論!」
「何だ、私が怖くなったか貴様?」
「だからそういう問題じゃねぇって!」
「まあそれも不思議ではない。自慢ではないが、私のステータスはATKもDEFも100超えだからな」
「はぁっ……」
「なんならMNDも100を超えているぞ。INTは流石に2桁だがな」
なんつーエリートだよ。
DEFもMNDも3桁って……どうやったら此奴を殺せるんだ。
「疑うのなら見せてやってもいいぞ、私のステータスプレートを!」
「別に疑っちゃいねえよ」
「そうか。なら早速決闘だな!」
「なんでそうなる!」
「決闘を申し込んだのは貴様であろうが!」
「あれは単なるミスなんだって!」
「知らぬ!」
「知っとけ!」
「知らぬ!」
「知っとけ――――
「アンタ達うるさいんだよ! こっち来な!」
「「ぐぅッ?!」」
突然背後から襟首を掴まれる。
首が締まる。
「入口でベチャクチャ騒がない! 他のハンター様方の邪魔なんだよ!」
「うっ、ぅぅっ……」
「ヒュゥッ、ヒュゥッ……」
襟首をがっしり掴まれたまま2人揃ってコミュニティの床を引き摺られる。
この声は……おばちゃん!?
「喧嘩するなら中でおやり! 返事はッ!」
「はっ……はひっ…………」
「うぁっ……」
分かった。それは十分に理解したんだが……。
首が締まって、息が……出来な――――
こうして俺は、女騎士もろともおばちゃんに連行される途上で気を失った。