6. 余計なお世話だ
「アンタのステータスプレート…………可愛いポップ体で書かれてるじゃないの」
「あー……」
その通りだ。
俺自身のステータスプレートを表示すると、必ずポップ体で表示されてしまう。
平仮名も片仮名も、漢字も英数字も全部。
他の人々だと普通のフォント……いわゆる『メイリオ』で表示されるが、何故か俺のだけはメイリオ非対応らしい。
「へぇー、そうだったの。不思議ね」
「本当に。どういう不具合かは分からないんすけど、物心ついた頃からずっとこれだから……俺からすればもう今更っすけど」
「折角親から貰った『レトラ』っていうかっこいい名前も、フォント負けしちゃってるわね」
フォント負けもそうだが、ポップ体の能天気さは俺の性格に全く似合ってない。相性最悪だ。
「アンタ……性格だけじゃなく、ステータスプレートまで変わってたのね」
「へいへい」
余計なお世話だ。
「……それじゃあ、おばちゃん。もう行って良いすか?」
「ああ、済まないね。引き止めちゃって」
あとは商店で買い物をして家に帰るだけだ。
さっさと済ませて帰ろう。
「んじゃあ、また明日」
「ありがとね。帰り道も気を付けるんだよ」
そう言い、軽くおばちゃんに軽く手を振ってコミュニティの出口へと向かった。
――――その時。
おばちゃんの僅かな独り言が耳に入る。
「(レトラだから……そうね。せめて明朝体なら見栄えが良いのに)」
……やばッ!
しまった、気を抜いていた!
「なっ!?」
そう感じた時には既に、俺の手元に姿を現すステータスプレート。
【ステータス・オープン】で呼び出してもいないのに勝手に現れたそれは、四角形の輪郭を歪ませ……――――
白透明の、薄っぺらい剣に変形した。
「まっ……不味い」
握れと言わんばかりに俺の目の前に浮かぶ、純白の剣。
……だが町中でこれは駄目だ。すぐ仕舞わなければ。
人の目に触れたら大変な事になる。
「あら? どうかしたのかい!?」
「い、いや……何でもないっすよ」
幸い、おばちゃんには俺自身の身体が壁となって見えていない。
ふぅ、助かっ――――
……いや、助かってない。
「きっ、貴様!」
「なっ!?」
俺の真正面には、丁度入れ違いでコミュニティに入ろうとしていた人影。
「この町中で……それも私に向かって剣を抜くとは何事だァッ!」
腰の剣に手を掛けて、武装した女騎士が俺を睨み上げていた。