5. 俺の何処がそんな風に見えるよ
「おかえり。買取額、確定してるわよ」
「おっ」
食堂で腹を満たし、再びコミュニティに戻ってくる。
おばちゃんの言った通り、ちゃんと鑑定は終わっていた。
「買取額は2頭合わせて……銀貨1枚と銅貨27枚」
「あちゃー」
銅貨3枚分足りなかったか。
残念。
「残念残念。けど、それでも下手なハンターよりは十分稼いでるんだ。良いんじゃないのかい?」
「まあそうっすね」
獲物との巡り合わせは運だし、仕方ない。
銀貨と銅貨を財布にしまう。
「それじゃあ、おばちゃん。また明日」
「うん。帰りも気を付けるんだよ」
軽くおばちゃんに手を振って出口へと向かった。
「……ああそうだ。アンタ、ちょっといいかい?」
「ん?」
コミュニティを出ようとした矢先、おばちゃんに呼び止められる。
「ちょっと3つ、聞きたい事があるんだけど」
「なんすか?」
「まず質問その1、まだアンタは非公式ハンターで居続けるのかい? 正式ハンターになれば買取代金も1割増だし、色々お得なのよ」
……またこの質問だ。
もう何百回と聞かされてる。
「何時も言ってるじゃないですか。人との関わり合いが嫌いだからコミュニティには入らないって」
「やっぱり気は変わらないのかい、残念。……ぶっちゃけ、この町一番の腕を持つアンタを正式ハンターにスカウトできれば、アタシもコミュニティ内でそこそこ高い地位に着けるんだけどね」
おばちゃんには世話になっているが、生憎俺は自身を曲げてまで人の踏み台になる気は無い。
「で、他の質問は? さっさと買い物済ませて早く帰りたいんすけど」
「ああごめんね、じゃあ質問その2。これは前々から気になってたんだけど……ハンターやってる割には異常に軽装備よね、アンタ。得物は何を使ってるんだい?」
「得物かぁ……」
確かに。
装備でガチガチに固める普通のハンターに比べ、俺は黒パーカーに長ズボンの完全私服だ。
剥ぎ取りナイフさえ持たない丸腰なのには、ちょいと訳があるんだが……。
「……それは企業秘密で」
「仕方ないね。町一番のハンターさんは情報統制も上手いようだ」
済まんね。
あまり周囲には言いふらしたくないんで。
「最後に質問その3。これも前からだけど……アンタ意外とそういう可愛いの、好きなのかい?」
えっ、可愛いの?
どういう事だ。寧ろ無縁だろうが。
「俺のどこがそんな風に見えるんすか?」
「何言ってんの。ほら、アンタのステータスプレート…………可愛いポップ体で書かれてるじゃないの」