4. まぁまぁ美味いくらいが丁度良い
「おっちゃん、オムレツ定食1つ」
「あいよ」
町で唯一の食堂に入り、空いているカウンターに腰掛けながら注文する。
頼んだメニューはいつもと同じ、白米と味噌汁とオムレツのみという素朴な定食だ。
「お前さん、今日はちょっと時間が掛かるよ。珍しく客が多いからな」
「うす」
店内を見回していれば、ガラガラな普段と比べて席がまぁまぁ埋まっている。
特にテーブル席、この地域じゃ見ない服装をした男共が談笑している。別のテーブルには武装した人々も居る。
「……どっかの隊商らしいぞ」
「みたいっすね。町の外れにも荷物パンパンの馬車が数台停まってたし」
別にそういうのは此処じゃ珍しくもない。
この町は、どの隣街へ行こうと数日掛かる陸の孤島。それ故、この町の特産品は市場に出せばそこそこの稀少品扱いだ。高値で売れるらしい。
そういう金儲けを夢見た隊商からすりゃ、この町は格好の的なんだとさ。
「……まあ、俺には関係ねえ世界だな」
俺はこうやって毎日、家と町を往復しながら狩りで生計を立てるくらいの生活で丁度いい。人付き合いは浅く広く、平穏な日々こそ宝物。
冒険とかスリルとかはお呼びじゃないし、ましてや絆とか友情とかいう深い人付き合いなんてまっぴら御免だ。
「お待っとさん。オムレツ定食」
「どうも」
さて、お待ちかねの昼食だ。
「頂きゃす」
……うん。まぁまぁ。
此処の飯も、ほどほどに美味いから毎日止められないんだよな。