3. 高く買い取ってくれると良いな
俺が街に着いてからやる事は、大体3つ。
行き掛けに狩った動物をハンターズコミュニティに売りに出す。
食堂で昼食。
あとは必要な食料やら日用品やらを買い込んで、再び家に帰るだけだ。
「とりあえずハンターズコミュニティだな」
鹿を背負いながらじゃ食事も買い物も邪魔になるし、まずは身軽になろう。
門から真っ直ぐにハンターズコミュニティの建物へと向かった。
「どうもー」
「ああ、アンタかい」
コミュニティに入れば、目の前のカウンターにはいつも通りのおばちゃんが俺を待ち構えている。
「ほおぅ、今日は鹿が2頭ね。なかなか良い角してるし……今日は銀貨2枚、出るかしらね」
「だと良いんすけど」
鹿は狩猟難易度が中程度な分、難易度低の兎や鳥より買取額が高い。
1頭で銀貨1枚前後が相場だ。
「それじゃあ、獲物をカウンターに乗せてちょうだい」
「よいしょっと。じゃあ鑑定お願いしゃす」
「はいはい、ちょっと待ってね」
背負っていた鹿をカウンターに乗せ、足を縛っていたロープを緩めて買取に出す。
おばちゃんもバインダーとルーペを取り出して鑑定作業に入る。
「あ、あとステータスプレートもよろしく」
「【ステータス・オープン】。……毎回毎回面倒臭いな」
「ごめんね。でも買取の時のステータスプレート確認は義務だから」
「はいはい」
ステータスプレートをおばちゃんに見えるように呼び出せば、本格的に鑑定作業が始まる。
「ふむふむ。流石はアンタが狩った獲物、全体的に質が良いし、角も美しい。けど……今日は2頭とも少し小ぶりね」
「やっぱりすか?」
「ええ。だからそうねー。……今日は銀貨2枚いかないかも」
「えー」
鹿の買取相場は1頭で銀貨1枚強。
せめて銀貨2枚は欲しいなぁ。
「……まあ、金額確定はちゃんと鑑定を済ませた後ね。その間は食堂に行くのかい?」
「はい。もう腹減っちゃって」
「ハハハ、そりゃ狩りをしながら街を目指せばお腹も空いて当然ね。アンタが食べ終わって戻ってくるまでには鑑定、済ませとくわ」
「お願いしゃす」
買取額に期待と不安を抱きつつも、獲物をおばちゃんに託してコミュニティを出た。