15. しっかり頼みますよ
「初めまして。貴方がレトラさん……でしょうか?」
白いワイシャツに紺のジャケット。
くるくるの茶髪にくりっとした蒼色の瞳。
そんな少年が、臆することなく歩み寄ってくる。
「ああはい、そうっすけど……其方は?」
「失礼、申し遅れました。僕の名前はルリ、隊商を率いてます」
ほう、ルリさんね。
「『隊商を率いてる』って言ったな。……もしかしてルリさん、昨日からこの街に居る隊商のリーダーさんっすか?」
「はい、実は。昨日からこの町にはお世話になってます」
あらま。
随分とお若い隊商さんも居たもんだ。
「以降、どうぞお見知りおきを」
「ああ、こちらこそよろしく――――
「そして私こそがルリの隊商の護衛、ダイヤだ! ハーッハッハッハ!」
「ふーん」
あっそ。
「……なんだか反応が悪いな!?」
「当然だろ」
此奴、昨日あれだけ騒ぎを起こしておきながら良い反応を得られると思ってたのか。
名前を憶えてやっただけでも感謝しとけ。
「……まあそれは良い!」
「良いのかよ」
「それよりもだ貴様、聞け! ルリは凄いのだぞ! なんたってコイツ、【天賦の渉才】を持っているのだからな!」
「出た出た。マジかよ」
来ました、【天賦の○才】スキル持ち。
読んで字の如くの才能を持った、この世界でも滅多にお目に掛かれない御方だ。
……噂に聞いた事は有ったが、生まれて初めて会ったな。天賦持ちの人にだなんて。
「……そりゃあ、そんな歳でも十分に隊商のリーダーやっていける訳だ」
「いえいえ、僕なんてまだまだ未熟者の新入り隊商ですから」
「謙遜するなルリ! お前はもう一人前の隊商の長であろうが!」
ルリさんの背中をバシバシ叩く決闘バカ。
……痛がってそうだけど大丈夫か?
「それより貴様! このルリさんに向かって頭が高いぞ! ひれ伏せ!」
「どうして」
いきなり何だよ突然。
「ついでに私にもひれ伏せ!」
「絶ッ対嫌だね」
……それがお前の本音だな。
昨日の出来事が悔しくて根に持ってんだろ。
「……ルリさん、お宅のダイヤさんがこんな事を言ってんですけど。そちらん所、一体どんな教育されてるんすか?」
「これは大変失礼しました。後で僕の方からきつく叱っておきますので」
「しっかり頼みますよ」
「勿論です」
ざまあ見やがれ決闘バーカ。
「……今週もまた減給ですかね」
「なっ!? ルリ、済まなかった! 謝るから減給だけは止めてくれ!」
……結局、コミュニティの床にひれ伏したのは決闘バカひとりだった。