14. じゃあ何のだよ
んで、翌日。
いつも通りに家を出て、森の小道をひた歩く。
途中で見つけた2頭の鹿を狩りつつ、町を目指す。
「良し。今日は大物だ」
体格の気持ち大きめな獲物に少々浮かれつつ、3時間歩き続ければあっという間に町に到着だ。
「さーて。今日は幾らで売れるかな」
銀貨2枚超えはまず確実。太くて逞しい角も持ってるし、体には傷も無い。
となると……銀貨3枚もあるか?
そんな想像を膨らませつつ、ハンターズコミュニティの扉を開く。
「どうも、おばちゃん――――
「来たな貴様!」
ゲッ。
昨日の決闘バカが待ち伏せてやがった。
「……すみません部屋間違えました」
「逃げるな!」
「うっ」
腕を掴まれて逃げられない。
「……もう何だよ今日は。決闘は絶対受けねえからな」
「ハーッハッハッハ! 決闘したいのは山々だが今日は違う!」
……違うだと?
「……じゃあなんで俺を待ち伏せてたんだよ」
「知りたいか? 知りたいよな! 貴様が知りたいというのならば教えてやらんでもないがな!」
「あ、それなら良いです」
「何故だ! 気にならないのか!?」
別に。
「仕方ない、特別に教えてやろう! 今日はだな……貴様をスカウトしに来たのだ!」
「スカウト……?」
スカウト……勧誘か。
何の勧誘だ。変な宗教か? セールスか?
「……うちはそういうの、事足りてるんで大丈夫です」
「何のスカウトかも聞いてないのに断るな!」
「じゃあ何のだよ」
「ハーッハッハ! 気になるか? 気になるよな! 教えて下さいと懇願すれば教えてやっても良いぞ!」
……じゃあ教えてもらんなくていいかな。
「やっぱり要らないです。スカウトの話も縁が無かったってことで――――
「待て、聞いてくれ! 頼む!」
「ハァ……仕方ない。そこまで懇願するなら聞いてやるよ」
「よっしゃあ! ハーッハッハ!」
……お前にプライドという物は無いのか。
「では教えてやろう! スカウト――――それは、『護衛』だ!」
「護衛……?」
「はい。僕の隊商の、ですよ」
そう言って決闘バカの背後からひょいと顔を出したのは、齢15ほどの少年だった。