12. どうしてもってんなら
「なっ、何なのだその剣は!? ……魔法か? 魔法を使ったのだな!?」
「いや」
そんな事無えよ。
ちゃんと剣で斬ったわ。
「しかし有り得ぬ! 岩をケーキの如く斬り分けるなど――――
「出来んだよ」
「何故だ!」
「ああ。教えてやるよ」
……剣の斬れ味とは、刃の『硬さ』と『薄さ』で決まる。
硬い材料で、かつ薄く鋭く作られた刃ほど斬れ味が良い。
そして、ステータスプレートは厚さが無くて破壊不能。
そこは人類皆共通、この世の原理的に決まっている。
「つまり、俺の剣は硬くて鋭いステータスプレート製。だから斬れ味最強。だから岩塊もすぱっと斬れた。以上。文句は?」
「むっ……」
悔しそうに唇を噛む決闘バカ。
だが、待ってとも嫌だとも言わないので良しとしよう。
「そんじゃあおばちゃん、俺帰るわ」
「ううん、手間取らせちゃってごめんね。また明日」
……あぁー。やっと解放されたよ。
なんだか今日はもう疲れたな。
さっさと食糧やら日用品やらを買い込んで帰ろう。
「……待てッ!」
「何だよ全く」
もうしつこいんだよ。
早く行かせてくれ。
「決闘の話はもう終わったんだぞ」
「ああ、分かっている。だから……今度は私が貴様に決闘を申し込む!」
……ほぅ。
少しは学習したようだな。
「だから貴様! 私の決闘を受けろ――――
「本日の俺との決闘は受付終了しました」
「何だと!?」
まあ、今まで一度も決闘受付をした事は無えけど。
「……ならば明日! 明日の正午に――――
「お客様、残念ながら今日が最終日でして」
「ふざけるな!」
「そもそも、何でお前は俺との決闘に拘んだよ。理由は?」
「…………なっ」
んー、聞こえないぞー?
「……なっ、なんか私が負けたみたいで……悔しいから」
「何だよそれ」
そっちの理由の方がふざけてんだろ。
ハァ……しかし困った。
この決闘バカ、振り払うのに相当苦労しそうだ。
下手したら家までついて来られかねない。
如何すべきか……。
「……ふむ。どうしてもってんなら、条件付きで受けてやらんでもない」
「本当か!?」
「ああ」
「良し! 何でも言え! 忽ち完遂して貴様との決闘を掴んでやる!」
「ほう」
言ったな。
「そんじゃ、この岩をお前の剣で真っ二つに斬ってみな」
「なっ!?」
俺が既に半分にした岩だ。大きさも半分、簡単だろ?
「それとも辞めるか? 剣にとって岩石は天敵だもんな?」
「い……いや分かった。決闘の為だ、受けて立と――――
「10秒で」
「10秒!? …………ええい! もうやってやる!!」
 




