1. いつも通りの朝だ
「くうぅーっ。……今日も良い天気」
玄関の扉を開き、身体を伸ばしながら雲一つない朝空を眺める。
ログハウスの周囲を囲む森からは、そこかしこから今朝も沢山の小鳥のさえずり。
朝露の薫るひんやりとした風が、俺の身体をすり抜けていく。
「清々しい朝だ」
さて。
今日もいつも通り、日銭を稼ぎに町まで行こう。
「ロープにコンパス、水筒、財布も良しっと」
今一度、忘れ物が無いか背負ったリュックの中身を確かめる。
ロープは束ねて腰に備え、リュックを背負って……よし。持ち物は揃った。
「服装もこれで丁度良いな。結構肌寒いし」
まだ季節は冬が明けた直後の春先。
長袖のTシャツに黒の長ズボン、その上に黒のパーカーを羽織ってジッパーを上げる。
途中で暑くなったらパーカーを脱げばいい。
「あと最後に……【ステータス・オープン】」
そう唱えると手元にさりげなく現れる、タブレットの形をした白透明の画面。
うっすらと背景の透けたステータスプレートには、黒文字で俺の名前や年齢、各種能力値が並ぶ。
「体温35.9℃、体調も良好っと。……【ステータス・クローズ】」
最後に体調を確認し、これで出発のルーティンは完了だ。
あとは町に向かうだけ。
「行ってきます」
ガチャリと家の鍵をかけ、リュックを背負って森の中の小道を進んだ。