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ある恋の物語(短編アラカルト)

君と夏祭りと花火

作者: SINK

夏祭りを軸にした恋愛系の短編小説です。


恋を自覚する瞬間・・・。


きっとあなたも恋したくなる・・・。

 夏祭りに僕は君を誘った。

本当は君を誘えるとなんて思っていなかったんだ。

だって君はいつだってクラスの中心で人気者だから。

こんなことを言ったら君には申し訳ないけれど君に対する興味はあまりなかった。

だって絶対に届かないから。

今思えば僕はすごく運がよかったのだろう。

あの日君はホースで水遊びをしていた。周りと一緒になって楽しんでいる君の眼に僕の事は映っていなかったんだろう。

たまたま通りかかった僕に水がかかってしまった。

君はあの時「ごめんね・・・。お詫びになんでもするよ!ほんとにごめん」と繰り返し謝っいたっけ。

「別にいい」と言っていた僕に君は強引に「お詫びしないと気が済まない」と言って土下座をしようとしていたね。あの時はさすがに笑いそうになった。

実際、水にぬれたことは僕はあまり気にしていなかったんだ。暑かったしね・・・。

でも土下座までしようとする君に僕は少し意地悪をしたくなった。

「じゃあ夏祭り一緒に行きたいなぁ」断られることを前提に僕はぽろっと言ってしまった。君はきょとんとして「そんなんでいいの?」と聞いた。

「そんなんって結構ハードル高いだろ?」と返す僕に君はニヤっとして「へー君はこーんな、いたいけな少女にそーんなハードル高い事をさせようとしてるんだね」と言った。言葉に詰まる僕に君は「ふふーん!隠れSと見た。しっかたない。一緒に行ってあげよう」とにやにやしながら返したんだよね。

「って言うかいいのか、友達は・・・。」と僕が返すと君はなぜか真っ赤になって「二人きりで行くの?」と恥ずかしそうに聞き返した。ここぞとばかり僕は「思わず当たり前だろ???だってお詫びなんだろ???だったら二人でっていう条件ぐらいのめるよな???」と言ってしまったんだ。今思うと僕は相当な酷いやつだよね。僕は君が引き下がると思っていた。

でも君は「分かった。でも何にも知らない人と夏祭りに行ってもってもつまらないんだよ。だから、君これから2週間一緒に遊ぼうよ!どう???」と言ったね。さすがに僕も面食らって思わずうなずいてしまったよ。その日の放課後わざわざ僕の席にきて「かえろっか」って言った時の君のしてやったりの顔はすこぶるいい顔だったよ。君は自分の立ち位置を理解しているからね・・・。


それからゲームセンターに行ったり、ウインドウショッピングしたり、あとマンガ喫茶もいったっけ。

最初はなんとなく嫌だったけど君の隣は居心地がよかったんだ。

でも、もうそんな時間も終わりだ。


そう今日は約束の夏祭りの日


待ち合わせは5時45分。いつもの公園。僕は時間の20分前から待っていた。

10分前君が来た。君は水仙柄の浴衣を着ていた。

水仙の柄は知性的な美を意味する。そんなことも相まって君はいつもより少し大人っぽくとても綺麗に見えた。

「お待たせ・・・。ごめんね待たせちゃった?」と聞く君に僕は「そんなに待ってない。」と素気なく答える。

君は控えめに「この浴衣どうかな?」と聞いてくる。

一瞬言葉に詰まる。「んあっいや・・・あの・・・。すごく・・・。」

「すごく~?」君はからかうようにでも少し不安そうにこちらを見る。

「綺麗だ・・・。」思いきって僕は言い切る。そうでなければ、言い切れないから。

君はそっぽを向いて「そう・・・。んじゃ行こうか?」と突然歩き出す。


会場は近くの神社だ。

煌びやかな灯りがそこには充満していた。祭特有の喧騒が僕たちを引き込む。

僕はそっと手を出す。不思議そうな顔をする君に「はぐれたら困るだろ?」ともう一度手を出す。

「そうだねっ」と君は恥ずかしそうに僕の手を取る。やめてほしい。そんな表情をされたら戻れなくなる。

だって僕と君は今日までの関係だから。


「射的やろう!」君は無邪気にこちらを見る。「おう、やろうか・・・。」

コルクの銃を構える君を横目で眺めながら自分の銃の準備をする。

全弾はずしてしまったようだ。

「あれ欲しかったなぁ」と君は狙っていた髪留めを見て残念そうに言う。

ここで外したらカッコ悪い。

それに獲ってあげたい・・・。

狙いを済ませて、引き金を引く。ぽすっと軽い音を立てて、お目当てのものに当たる。バランスを崩したところにさらにもう一発当てるとそれはすっと落ちた。

「やるよ・・・。いらないから・・・。」と手渡す僕に君は満面の笑顔で「ありがとう」と返す。

本当にダメだ。

僕はもう戻れないかもしれない。


「そろそろ花火だね?見に行くでしょ?」と君は僕に問う。

「一応行く」と短く返すと「それじゃあこっち来て!」と僕の手を引く。

意識しないようにしていたが触れ合うところがすごく柔らかい。こんなことを思ってしまう僕は変態なのだろうか?一人悶々としていると、君は立ち止まった。

「とうちゃーく!ここだよ!」そこは周りにほとんど人もおらずとてもいい場所だった。

「よくこんな場所知ってたな?」と問えば君は「探したんだ!だって一緒に楽しみたかったから。」と笑顔で答える。

またしても僕は返答に困る。

本当に困ってしまう。

さっきから僕は、僕の心はもう君を忘れてくれない所まで来てしまっている。

そして後悔する。

君を夏祭りに誘ったことを。

僕の心はもう後戻りできない所まで来てしまった。

認めたくない。

でも認めざるを得ない。


僕は君に恋をしてしまったという事を。


そして花火が始まった。君はさっきの髪留めをして、りんご飴を舐めながら花火を見つめる。

そんな君がとても綺麗に見えてしまう。

「綺麗だね」と君の声が僕の鼓膜を揺らす。それだけで僕の心臓はとくんと跳ねる。

「た、確かにきれいだな」と少し言葉に詰まってしまう。

そして花火もクライマックスだ。盛り上がるはずなのに僕の心はあまりにもマイナスの係数を大きくしすぎた関数みたいに沈んでいく。



願わくばこの一瞬がいつまでも続きますように・・・。



そんな願いは叶う事はない。そして無情にも空砲の花火が3発なった。

終了の合図だ。

「綺麗だったね・・・。帰ろうか・・・。」と立ち上がろうとする君。

僕は思わず手を引いて抵抗してしまう。

「もう少しだけ・・・。」

「んっ?どうしたの?」と何でもないように君は僕に問いかける。

それはそうだろう。

花火は終わって夏祭りは終わりなのだ。

もう君は僕と一緒にいる必要はないのだから。

これは僕のみじめったらしいただのわがままだ。

「それじゃぁもう少しだけ・・・。」君はさっきまでいたところに座る。

辺りはすでにほとんどの人が帰り、喧騒は静寂に変わる。

僕は言葉を振り絞る。

「2週間楽しかったよ。ありがとう・・・。これでお詫びは十分だ」

精一杯の言葉だった。ほんとはもっと君と過ごしたい。秋には一緒に本を読んだり、冬にはクリスマスを一緒に過ごしたり・・・。ほんとはもっともっと君の笑顔を隣で見ていたい。

でも僕に許されていた君の隣にいる権利はもうない。思わず涙が伝う。泣くつもりなんてなかったのに。



君はこっちを見ながら微笑んではなし始める。

「私もね。すごく楽しかった。この時間がずっと続けばいいのにって思うぐらいにね・・・。

気が付いてないと思うから言うけど水かけたのわざとなの・・・。」

思わず顔を向けてしまう。「わざとってどういう?」言葉を遮るように君は語りだす。

「あの時水がかかるのを分かってわざと水をかけたの。」

「どうして・・・?」

「接点が欲しかったんだもん。」

「えっ・・・?」思わず息をのむ。だって君は泣きそう顔をしているから。

「ずっと気になってた。でもしゃべりかけられなかった。だからごめん・・・。酷いことをしちゃった。ほんとにごめん。すごく楽しかった。迷惑かもしれないけど、私はこの2週間すごく楽しかった。聞いてくれる・・・?私・・・好きなの・・・。」

僕は思わず固まってしまう。

「ごめんね・・・。迷惑だよね。ありがとう。楽しかった。」君は早口でまくしたて、立ち去ろうとする。

僕は腕をつかんで立ち去ろうとする君を強引に引っ張った。


「俺だって楽しかったんだよ。このまま時間が止まればいいって思ってたんだよ。俺もお前のこと好きになっちまってんだよ」乱暴に言い放つ僕に君は赤くなった目をこちらに向ける。

「ほんと・・・?」君は心細そうに問う。

「ほんとだ。俺はお前が好きだ・・・。」僕は自分でも驚くぐらい素直に言葉が出た。そして僕は少し強引に君を引き寄せ胸の中に閉じ込める。


当たり前だが、自分のとは違う肩は華奢で守ってあげたいと思うようなぬくもりがあった。



そう僕はやっぱり君のことが好きだ。



少し時間が経ちお互いに冷静さを取り戻した。

「かえろっか・・・。」

「そうだな・・・。」

僕はぎこちなくだが手を出す。君はすっと手を取る。


そして月明かりに照らされた二人の影が重なった。




~完~

お目汚し失礼いたしました。

どうだったでしょうか?

完全に趣味で書いております故あまり面白くないかもしれません。

最後までお付き合いありがとうございました。

もしよろしければ感想・レビュー等書いていただけると励みになりますのでよろしくお願いいたします。

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