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つぎはぎ兎は夜を跳ぶ  作者: こーてい
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白うさぎと虎 2


「へぇ、真白のアニキ、いい家住んでんじゃん。親御さんに挨拶とかしたほうがいい?」

「親はここにはいないから気にすんな。ここは借家で、高校通うのに知り合いにたまたま安く貸してくれただけ・・・ってか仮に親がここにいてもお前らを紹介できるわけねーだろ」

「ふーん。ま、そりゃそうか」


兎はけらけらと笑う。本当によく喋るやつだ。

玄関の扉を開き、二人・・・いや、一人と一匹?をリビングに招く。


「で、えーっと、とりあえず椎名って呼べばいいか?」

「・・・・・衣兎」

「へ?」

「衣兎で・・・いい・・・」

「あっ、おう。じゃあ衣兎。俺のほうも真白でいい。とりあえず麦茶でいいか?」


衣兎はこくりと頷く

女の子の下の名前を呼ぶ機会なんて俺にはないから、不覚にもちょっとドキッとした・・・!

ちょっとした頭の熱を冷ますように冷蔵庫の扉を開き、麦茶を取り出す


「ごめんね?ご主人、自分の苗字好きじゃないからサ。ロリコン童貞のアニキは下の名前で呼んだだけで勘違いしちゃうタイプ?」

「うるせえ。俺はロリコンでも勘違い野郎でもない」

「あ、童貞なんだ?」

「・・・・・・・・・・・。」

「いや、いいと思うよ。うん。アニキまだ若いしな。これからだって。あ、俺のこともキルトでいいぜ。ご主人もそう呼ぶし、愛称だと思ってくれ。」


何が悲しくてこんなのに慰められなきゃいけねーんだろう・・・。

兎のぬいぐるみらしいくりくりとした目が逆にむかつく


「で、本題に入るが―――――」

「あ、話題そらした」

「本題に入るがっ!」


茶々を入れるキルトをじろりと睨み、麦茶をやや音を立ててちゃぶ台に置くと、キルトは「おーこわっ」と言って身をすくませるポーズをとった

この兎は後で絶対しばく


「で、なんでお前らは俺を襲った?さっきああは言ったが、普通そういう時は「相談窓口」に電話・・・いや、確かに一般人は怪異の相談をするヤツのほうが少数派だけど、お前らは俗にいう一般人じゃないだろ?」


むしろこいつらのほうが俺よりも、この手の裏世界の常識に詳しい可能性まである。

仮に自己防衛のためとしても、急に襲い掛かってくるのは流石に不自然だ。


「あー、それはね・・・」


キルとは言い淀む。聞かれないと思っていたわけではないだろうが、後ろめたいといった様子だ。


「キルト・・・いい」

「いや、ご主人・・・大丈夫?」

「いい・・・私が話す」


衣兎はキルトをむぎゅ、と抱くとゆっくり話し始めた。


「正直に言う・・・私たち、「相談窓口」の人たちに追われてて・・・だから電話はしない。それに、個人的に「連続失踪事件」の犯人を追って・・・ます」

「おいおい、追われてるって、お前らなにしたんだ?それに犯人捜しって、言ってることとやってることが無茶苦茶じゃねえか」

「あーっと、言いづらいんだけど、追われてる理由については単純に俺が前科持ちっていうかなんていうか・・・いや、でもご主人は違うぜ?まだ誰も手にかけて――――いや、アニキを襲ったりはしたけど、未遂みたいなもんだし、誓って法に触れるようなマネはしてない!」


俺の言い方がキツかったのか、黙る衣兎にキルトが慌てて弁明を入れる

この怪異が衣兎を操っている、といったことはなさそうだな。このキルトという怪異は、衣兎という少女を本気で心配している。そう感じた

とはいえ、そんな一緒にいて政府に狙われるような怪異と一緒に犯人捜し・・・?疑問は残るが―――――。


「まあ、お前らが一緒にいる理由は聞かない。俺も自分になんで怪異が憑いてるか教えろって言われても教えないしな。でもなんで犯人を追ってるか、これは教えてくれ。じゃないと協力もできない」


俺がそういうと衣兎とキルトは、ぽかんとこちらを見つめる

・・・俺、なんか変なこと言ったか?


「協力・・・してくれるの?」

「そういう流れだろ?」

「いや、今のは「相談窓口」に連絡して俺等をしょっ引く流れだったぜアニキ」

「それなら最初から家に上げねーだろ」

「いやそうかもしれないけど―――――」

「事情を話して俺と一緒に犯人探しをするか、このまま帰るかは好きにしていい。俺だって乗りかかった船だし、途中で投げ出す気もない。どうする?」


そういわれた衣兎は、ぬるくなった麦茶を一口飲むと、ゆっくりと口を開く

衣兎が語ったことは、簡単に言えば復讐だった。

つまるところ、自分の両親を襲った怪異は「連続失踪事件」の犯人、もしくは犯人に繋がっているかもしれない。

だからキルトという怪異と契約を結んだ。

しかし、この怪異は契約以前に前科があり、政府に目をつけられている。

それでも復讐のため、キルトとの契約を破棄する気はない・・・といった話だ。


「とりあえず、話はわかった」


重苦しい話を一通り聞き終わり、座布団から立ち上がる

このご時世、もしかしたらこんな話も特別、珍しいわけじゃないのかもしれない

復讐なんて何も生まないとか、そんな綺麗ごとを言うつもりもない

俺は、協力すると言って話を聞いたからだ


「あの、ほんとに協力してくれる・・・んです?」

「するって言ったろ。お前ら、家は?」

「・・・・・ない、です。」

「なら二階の右角部屋を使っていい。そんで、明日から調査な。」


しかし、こんな女の子が復讐、ね

さて、こうなったらもう後には引けない。まずはあの人に謝るところからだな―――――。


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