6.
ドアを開けて、峻の視線の先にはもう暗くなった外と隣の家の明かりがあった。
あれ、誰もいない? と思ったのも束の間、
「あ、えぅ……」
峻の視線は今、いつも奈亜の顔があるところに向いていた。その声はその少し下から聞こえてくる。
声につられてゆっくり視線を落とす。
その先には薄暗い部屋の明かりだけでも分かるほど、顔を真っ赤にした黒縁メガネが印象的な小柄な女の子がそこにいた。当然、峻には面識があるわけがない。
だ、だれ……? と思ったが、それよりも女の子の表情が気になった。心底驚いたような表情をして、黒い瞳が今にも泣きだしそうなほど揺れている。なにをそこまで動揺しているのか、そこまで考えた時に頭を殴られたような衝撃が走る。
……俺は今、どんな服装だったっけ? 嫌な予感がした。服装もなにも、着前までその着る服を探していたのではなかったか。峻は、口元をひくつかせながら自分の胸元を見た。そこは当然肌色だ。つまりなにも着ていない。
し、しまったぁ! と思ったがもう遅い。
見知らぬ初対面の女の子に上半身裸で応対したという事実は消せない。なぜ、そんな見知らぬ初対面の女の子がここにいるのかというのはこの状況では問題ではない。
「ちょ、ちょっとまっ――!!」
「き、きゃー!!!」
急いで取り繕おうと思い、声を出した矢先、その声を遮るように女の子の悲鳴がとどろいた。
それは峻にとって絶望以外のなにものでもなく、心から素直に……終わった、と思った。